第3話
俺━━━
趣味は小説とスマホゲー。それ以外はほとんど何もしていない無キャだ。
中学まではそれなりに話せる奴らがいたが、高校に入ってから、新しい人間関係を作ることをサボったため、新しい友人はいない。元々、自分から話しかけにいくのが苦手なので、仕方がない。
そのせいで一年の時は、ほぼ誰とも話さないで終えた。マジで虚無過ぎて何も良い思い出がない。
けれど、今年はそんなボッチからは抜け出せそうだ。
「おーす、
「ああ、春樹か。おはよう」
俺が話せる例外中の例外。
神様、本当にありがとう!
「調子はどうなん?」
「いやぁ、全然だわ。いけても県大会二回戦くらいじゃねぇかな」
「微妙過ぎてリアクションに困るな……」
「くじ運によっては、地区予選すら突破できない可能性すらあるからなぁ。今のでもだいぶ盛った」
「全然ダメじゃん」
うちの高校は勉強には力を入れているが、部活動に関してはあまりだ。一回戦負けする部活が多い中で、サッカー部はまだマシな方だ。
「どっかの
俺を見ながらニヤリと笑った。
「……そんなやる気のある天才がいたら、もう入部してるだろ」
「それがそうでもないんだよなぁ。天邪鬼みたいな奴で毎日、フラれ続けてるんだよ」
「別にやることがあるんだろ。この話はおしまいだ」
「この分からず屋!」
「はいはい」
中学まではサッカーをやっていたが、高校では熱が続かなくて帰宅部に入った。それを認められないのか春樹は毎日のように俺を誘ってくる。俺を天才だと思っている節があるが、過大評価だ。現に春樹からエースの座を奪うことは一度もできなかった。
「こら、お前たち!」
「げっ」
「おっす、深井ちゃん!」
振り返ると、たちの担任が胸の下で手を組んで見ていた。春樹はいつも通り気安く挨拶をした。
ただ、俺は少しだけ苦手だ。
「イチャつくならわたしの前で堂々とイチャつけと言っているだろうが!」
これだよ……
「先生、HRを始めてください。後、俺たちはイチャついてもいません」
「皆まで言うな。私がいたら、イチャつきづらいのはよくわかる」
何もわかってねぇよ。話を聞いて。
「だが、婚活百連敗の私にとって枯×進は私の癒しなんだ……」
婚活百連敗。ついに三桁の大台に乗ったらしい。生徒で推しカプを作ってるような人間を貰ってあげようなんて酔狂な人はいないだろう。普通にしていればいい先生なのに、本当にもったいない。
せめて、『腐』のオーラを抑えられれば、好きになってくれる人がいるだろうに……
「なぜそんな残念そうな瞳で私を見ている?」
「いえ、なんでもないですよ」
これ以上話を広げたくない俺は余計なことは言わない。すぐにHRを始めてほしい。
「もしかして、お前は右側の人間なのか!?」
「違います」
風呂敷を広げちゃったよ。
「駄目駄目駄目!枯水は左側の人間だ!右は解釈違い!考え直せ!」
「先生、早くHRを始めてください」
先生の中では、俺は
「くっ、このまま生徒指導といきたいところだが、仕方がない。放課後までに『左』に行ってなかったら、成績は1だからな!?」
「独裁者もびっくりだよ」
先生の妄想に付き合わなかっただけで、成績を1にされるのか……
悪い先生ではないのだが、こんな風に巻き込んでくるのだけはやめてほしい。
━━━
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