第20話

警察に、この事を話すべきかと迷った。

その時間隣人の部屋に来て争い、その人物に彼は殺されたと思って間違いないのだ。


だが帰りの電車の中でボクは悩み、そして、迷っていた。ある突拍子もない考えを思いついてしまったからだ。


隣人をころしたのは、妻ではないかと。


そんなバカげた事を考えつく自分はどうかしてると思った。でもどうしても払拭できない事がある。

 

あの日、おじさんの怒鳴り声ともう一つ、甲高い女性のような声もしたのだ。うつらうつらとしていたが

珍しく人が来たんだと思ったのを記憶している。


でも、自分の愛する妻が、彼女がそんな事をする理由も思いつかない。他人の仕業に違いないはずだ。

ただ、ボクが自宅へ帰る日、妻は出かけていた。

何の用かは分からない。友だちに会っていたのかも知れないし、買い物かも知れない。でもそれは、久しぶりに単身赴任から帰る夫を待てないほど大事な、急を要する事だったのだ。


 全てボクの想像に過ぎない。

彼女が現場に戻り、自分の痕跡を残してないか確認し、郵便受けに入れられた手紙をみた瞬間、ボクに嫌疑がかかり捜査が及ぶ可能性を考え、チラシと一緒に持ち出して処分する。

こんな事、考えるのも嫌になったがどうしても頭から離れなかった。


早く真犯人が見つかりますように。


ボクは隣人のためではなく、妻と、自分の不安を拭い去るためにそう祈った。


 

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