視える住職

私が働いていたペット霊園では年に一度、合同法要が行われていました。

霊園専属のお寺の住職さんに来ていただいて、お経をあげてもらいます。

合同法要なので、霊園を利用してくださったお客様に案内の葉書を出して、お客様にも来ていただけるようにしていました。


住職さんは女性の方で、非常に明るくハキハキとしたお人柄でした。

そんな住職さんは所謂“視える人”で法要が終わると「白い猫が見に来ていたよ!」などと教えてくれることがありました。

住職さんの目の前には祭壇があるのですが、その祭壇にペットたちがやって来るのだそうです。


そして、私が住職さんに初めてお会いした法要では、終わりに先輩と挨拶に行ったところ、法要中の様子を教えていただけたのでした。


「今日はね、茶色いダックスフンドが来ていたよ!」


その言葉に、私と先輩は心当たりがありました。

1カ月前、私と先輩で施行の担当をした三村様というご家族のペットが、茶色のダックスフンドだったのです。

とはいえ、ダックスフンドはわりと飼われているメジャーな犬種です。

それなのになぜ、真っ先に三村様のダックスフンドが頭に思い浮かんだのかというと…

一言でいえば、とても印象に残る特徴があったのです。


ダックスフンドのモカちゃんはぽっちゃり体型でなかなかの迫力があり、飼い主さんの三村様は

「可愛くてついついご飯とかおやつとかあげちゃってね!病院で測定して重くなったなとは思うんだけど、やっぱり可愛いから甘やかしてしまって!今まであげていたのに我慢させるのは可哀想だって家族も言うしね。でも、長生きしてくれたから良かったわ!」

と豪快に笑いながら、間髪入れずにお喋りする快活なお人柄だったのです。

このようなモカちゃんの様子と三村様の人柄の特徴から、私と先輩の記憶に強く残っていたのでした。


更に三村様に、1ヶ月後に合同法要があることを伝えると

「そうなの!?良かったわぁ~、ナイスタイミングだね!ちゃんと天国に行ってもらわないといけないからね。参加させてもらうわ!」

と喜んでいただき、そして実際に法要にはご家族皆さんで参加されていたのでした。



住職さんの言葉を聞いて、思わず私と先輩は顔を見合わせました。

言葉には出さなかったものの、先輩もモカちゃんのことが頭に浮かんだのでしょう。

驚いた様子で顔を見合わせた私たちを見て、住職さんは笑って訊ねます。


「知っているダックスフンドだった?」

「一ヶ月前に担当した子が茶色いダックスフンドだったもので…」

「あ、そうなの!じゃあその子かもしれないね。私の目の前に座って、しばらくお経を聴いていたよ(笑)」

「そうでしたか。…因みにその子、太っていましたか?」

「いや、太ってはいなかったな。」

「うーん…じゃあ違う子なのかな。」

「でも、姿が変わることはあるから。死んでからは一番健康な状態の姿に戻るんじゃない。」

「そうなんですか!」


やはりそのダックスフンドはモカちゃんだったと思うのです。

しかし、三村様にこのことをお伝えすることはしませんでした。

伝えてしまうことで成仏できていないのかと不安になる方もいらっしゃいますし、このようなスピリチュアルなお話は信じてもらえず、不快に思う方もいるからです。


亡くなったペットもこちらの様子を見ていてくれているとは聞きますが、本当にそうなのかもしれないと思った面白い経験でした。




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