耳の痛い話

ペット霊園に勤めていた時のお話です。


その日のお客様は50代女性の鈴木さんという方で、飼っていたトイプードルが亡くなってしまったということで、来園されました。

先輩が施行の担当として付いたので、私は事務所にて事務作業をしていましたが、受付の隣の部屋だったので、2人の会話はこちらにも聞こえていました。


そして、鈴木さんと会話をしていく中で、トイプードルをもう一匹飼っていることが分かったのです。


「トイプードルがお好きなのですね。」

「そうね。でもトイプードルも好きなんだけどね、私は犬が好きなのよ。」

「鈴木様は犬派なんですね。」

「犬はいいわよ~!だって、勝手に一人で何処かに行ったりなんかしないもの。」

「あはは、そうですね!人間とは違ってずっと子どもみたいなものですもんね。」

「そうそう!うちの息子なんかね、結婚したと思ったら遠くに行ってしまってね、まぁ滅多に帰って来ることなんてないわよ!全く、大事に育てたってこれだものねぇ。」

「そうでしたか。うちの子はまだ3才ですが…いずれそうなるんでしょうね。」

「かわいいのは今だけよ~(笑)その点、犬はいつまでも一緒にいてくれる。だからね、今は息子がいなくなるより犬がいなくなる方が余程悲しいし、辛いの。」


そんな鈴木さんと先輩の会話を聞いていた私には、思い当たる節が多くて…

「勝手に一人で何処かに行ったりなんかしない」耳が痛いお言葉でした。

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