第一章 伯爵令嬢は婚約します①
日が
はじめは、
毎日が幸せだ。大好きな家族がいて、皆が笑い合っている。これ以上の幸せはない。
とはいえ、家族と共にのんびり過ごすだけではいられなかった。エリネはこの後に起こる出来事を知っている。幸せに
「
両親がエリネとライカに告げたのは、縁談である。
「お相手はゼボル
この話を聞くなり、姉妹の表情は
(……やっぱり、この縁談は
ゼボル侯爵家は、この縁談をエリネ
『お姉様ではなく、私が引き受けます』
まもなくしてライカはそう名乗り出る。そしてエリネにはこう告げるのだ。
『お姉様は
その時を思い出し、エリネはぐっと
(前回はライカの応援が
ゼボル侯爵家との縁談は、マクレディア家を
父と母の様子を確かめる。父も母も対応に
それに比べると、ライカは令嬢然とした
「お父様。その話はお断りできないのでしょうか?」
重い
「……断れるのなら、そうしているのだがな」
父は額に手を当て、長い息を
(縁談にはミリタニア王が
この話を提案したのは、ミリタニア王である。
現在、ミリタニアにいる貴族らは
マクレディア
意図を知るが
(前の私は、こういった背景までは考えていなかった。これも騎士団長として王宮にいたからわかってきたこと)
つまり、
父の
「エリネを支えたいライカの気持ちはよくわかる。だが、女性が騎士になるのは
追い打ちをかけるように、父が言う。
「
「待ってください!」
バン、と
「お姉様ではなく、私が引き受けます!」
「ライカ……だが、それは」
「マクレディアの娘を求めるのであれば私でもいいはず。お姉様は騎士になりたいと話していた。私はその夢を応援したいのです」
いつも姉の後ろに
ライカの視線はエリネに向く。
「だからお姉様は、騎士団の入団試験を受けてください」
この流れに、エリネは立ち
(あの時と同じだ。ライカの気持ちがとても嬉しかった。こんなにも応援してくれていたのだと、感謝の気持ちでいっぱいだった)
だが、
(入団試験を受ければ合格して私は騎士団に所属する。ライカとゼボル侯爵の縁談も進む。でもこの縁談を進めてはいけない)
覚悟は決まっている。エリネは険しい顔つきで、ライカを見つめ返して答えた。
「騎士団には入らない」
「お姉様!?」
「私はこの縁談を受ける」
この宣言に、ライカだけでなく父母も目を丸くしていた。エリネのことだから縁談を断って騎士団を目指すと考えていたのだろう。
「考え直してください。この縁談を受けてしまったらお姉様は──」
「お父様、この話を進めてください。私はよく考えて縁談を受けると言っています」
父はすっかり
「話し合いましょう。そ、そうだわ、先に入団試験を受けてみるとか!」
「受けない」
「試験を受けてから考えましょ? ほら、明日は騎士団員の
「騎士にならない」
「お姉様ったら! そんな返事ばかり!」
ライカはすっかりと意固地になり、エリネもまた引く気はない。険しい顔をして「受けない」「騎士にならない」と
結局のところ、決断は後日に持ち
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