第4話 王都って……

 あれが王都??


「あっ……やっぱり驚いた??」


「基本情報の予習はしてたけど……実際に見るとやっぱりすごいな」


 そこには、王都って言葉から連想されるヨーロッパ風の石垣で囲まれた都市……なんてものは


―――――――――


「おいおい……マジでハリウッドじゃん……いやハリウッドなんて行った事ねーけどさ」


 草原を抜けた先にあったのは……ギラギラと輝くショービズ界の聖地“聖林ハリウッド”……町だった。一応まだ俺達は街の外に居るんだけど……外から見える町並みだけでも、整備された街路が都市を縦横に走り、車道と歩道を分ける植え込みには青々とした椰子の木が茂っているのが見て取れる。


「アンジェロス王国……ここはG.O.D開発の最初期から参加していた100人のβテスターのうちの一人が作った国よ。一応王国の中は一部の場所を除いてオープンワールド設定になってるわ。まあ、所有者のいる場所や施錠された場所に押し入る“ドラクエムーブ”はマナー違反とされてるし、あんまり悪質だと都市警備隊ロイヤルガードが出張ってくるけど」


 フローが親切に説明してくれたが、俺は都市の入口に建設された門と……その下に行列を作っているに啞然としていたので……内容は俺の意識を上滑りしてちっとも入ってなかったりする。


「これ……ユニバ○サル・ス○ジオの入口にあるアレ……だよな?」


 そこには、修学旅行で訪れたテーマパークの……クリーム色をしたアーチがそびえ立っていた。


「……なあ、確認なんだけどさ……G.O.Dって一応“剣と魔法のファンタジー”って話なんじゃなかったっけ??」


 俺は巨大な門の前で入国検査に並んでいる馬車(?)と自動車(??)と装甲車(????)の列を見ながら呟いた。

 

「そうよね〜!! せっかくのファンタジー世界だっていうのに……まったく、どこの世界にも無粋な奴って居るのよ」


「ハハハハ…… まあ、あそこに並んでいる車はガソリンや電気で走ってる訳じゃないんだけどね。レン君は純粋にファンタジー要素を楽しむつもりだったのかい??」


「いや、そういう訳じゃないんすけど……」


 そりゃあ、俺だってある程度はこのゲームの情報を予習してから参加したので、ゲーム世界を機械文明で無双しようとするユーザー達……いわゆる“産業革命派”の存在は知ってたが……


「それでも、こんなに“普通”の感じで存在してるとは思わなかったよ……確か機械文明を重視してるのは南米とかアフリカ辺りのエリアに多いって聞いてた様な??」


「ハハハハ……面白いよね!! まあ地域毎にが出来上がったのにもちゃんと理由があるんだけど……それはおいおい説明してあげるよ……さあ、それよりそろそろ入国審査の順番がくるよ」


 俺は馬車の御者席から周囲の様子をキョロキョロと見回しつつ審査ゲートへと進み……


 ― Gyooooowwwooo!!! ―


 突然……俺達の耳に不快な音声が響く?!


 同時に、俺達……だけではなくそこに並んでいた人々が一斉に音のした方向へ振り向く。そこには……


「おいおい……マジかよ……」


 なんというか……この世界ってマジでなんでもありなのか?? 俺の目がおかしく無ければ……あれは?!


「あれ……プテラノドンだよな??」


―――――――――


『クソ!! 何でこんな所にが居るんだよ???』


『王国にはエネミーモンスターは近寄れないんじゃ……』


『馬鹿野郎! ここはまだ王国の中じゃねぇよ!! それより……来るぞ!! さっさとM2機関銃に給弾しろ!!』


 俺達の周りで列を為していたプレイヤー達が騒然とする中……巨大な飛翔恐竜に向かって一部の武闘派らしきプレイヤー達が重火器や……魔法? で応戦し始めるが……


「クソ……早すぎる!!」

 

 車列の上を悠々と飛翔するプテラノドン……いや、ここじゃワイバーンらしいけど……は俺達プレイヤーの攻撃を簡単にかわして上空での旋回を続けている。こちらからは盛んに重機関銃の弾丸や炎の塊(魔法? だよな??)が飛び交っているが、上空で羽ばたくワイバーンは巧みな機動で攻撃を躱し、一向にダメージを負う様子がない。それどころか……


「ウソだろ??」


 奴の口角がガバっと開いた瞬間……炎の塊が車列に向かって吐き出された?! 幸い俺達の馬車とは違う所に向かって飛んでいったが……


 ― Baaaannn!!! ―


 轟音と共に幾つか炎の塊が炸裂する。


(マジか? あんなもんマトモに食らったら……)


 俺は炸裂するワイバーンのブレスから目をそむける……が、


「大丈夫!! 見て!!」


 フローはそんな事は全然気にもせず、炎に包まれる人の方を指さした。


「はあ?? なんだよそれ??」


 俺達が見た視線の先で……ワイバーンの吐き出した炎のブレスは、に迎撃されて……かき消された??


 ……突如巻起こったファンタジーかつハリウッド的な光景……その時、俺の視界の隅に白い枠に囲まれたスピーカーのマークが出現する。マークの下には[広域音声]の文字が……


『入国希望者の諸君……安心してほしい。これよりゲートの結界を一時開放する。慌てず、順番にゲート内に避難してくれたまえ』


 どうやら……突然の音声はここにいる全ての人に聞こえていたらしい。皆が音声のを探してキョロキョロして居ると……俺の後ろのオープンカーに乗っていたカウボーイがゲートの方向を指さして何かを叫んでいるのが見えた。俺やフローやトルバゴさんはつられてそっちを向く。そこには……ゲートの上に立つ一人の男………って……


「ちょっと待て……あれは流石に……でヤバくないか?? 」


 そう……ゲートの上に立っていたのは……紅いマントを風になびかせる青い服のヒゲの男……


「ドクター・ス○レンジじゃん!! おかしいだろ!! ここはニューヨークじゃねぇぞ??」


―――――――――


 そこには……ハリウッド映画屈指のドル箱シリーズのうちの一人、数奇な運命によって天才的な腕を持つ外科医から魔術師にジョブチェンジを果たした男が……両手の前に魔法陣を浮かべて立っていた!


『さあ……奴の攻撃は私が防ぐ。皆は急いで避難するんだ』


『おっとドクター……私、じゃなくてが……だろ?』


 なんだ……突然、別の声がドクターの声に割り込む。


『ならさっさと行きたまえ。それとも……あれしきのヴィランに私の手助けが必要なのか?』


『ふん!! その嫌味っぽい言い方なんなー〜〜』


 変な音声の間延びを残して……今度はドクターの足元……ユニバの門の中から何かが弾き出され??


『それは……君の決断が遅すぎるせいだよ


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スリーピングビューティー “剣術に全てを捧げたこの俺のスキルが魔法使いだと??” 鰺屋華袋 @ajiya

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