第3話 ステータスウィンドウ

「おお……コレが有名な……って奴か!!」


 俺の視界に現れたのは白い枠の付いた小さなウィンドウ……そこには、


主要Please言語setを設your定してprimary下さい!language !


 の文字と世界各国の国名が列挙されていた。俺は迷わずカーソルをJPNに合わせる。


「いやーありがとう!! 私のジョブは戦闘系じゃないんで助かった。一緒にプレイしている娘は剣士なんだが、まだチュートリアルを終えたばかりでステータスは低いし……正直ホブを含めたゴブリン六匹だとデスペナも覚悟しないといけない所だったよ!」


 突然オッサンの言葉が日本語として聞こえる様になる。なるほど……多分このオッサン達はどこか他の国のプレイヤーなんだな。まったく便利なもんだ。


「いや……助けになったなら何よりです」


「………あなた、何でこんな所に居るの??」


 俺がオッサンのテンションに若干困っていると……今度はオッサンの娘が俺に話し掛けて来た。オッサンの娘というからには当然親子なんだろうが……正直あまり似ていない。このゲームのアバターは、最初に読み取られた骨格データを使い、本来の顔からほんの少し改変された姿になる(一定の条件を満たすとアバターの改造も出来るらしいが……)ので、オッサンの話からすると彼女は母親似か……あるいはオッサンがアバターをいじっている可能性もある。


「そんな事を言ってもな……5から仕方ないだろう?」


「……ウソ?」


「そんな嘘を付いてどうすんだよ?」


「………こりゃー驚いた。じゃあ君はチュートリアルに当たったのかい?」


「……ああ……多分だけどね。で……一つ教えて欲しいんですが……ココはG.O.Dのワールドマップで言うとなんです?」


 このG.O.Dは、基本的に全てのプレイヤーが同じマップを共有しているが……運営はワールドマップを公開していない。だが、そこは既にリリースから12年の歳月を経た老舗ゲーム……ネットには古参プレイヤー達が必死で収集したマップが不完全ながら公開されている。そしてこの世界のマップ考証プレイヤー達の推測によると、どうやらこの世界は俺達が現実リアルで暮らしている地球の地形が反映されている……らしい事が分かっていた。


「ここはアンジェロスの王都近郊にある街道だよ。の世界だと、アメリカの西海岸沿岸……と言えば分かりやすいかな」


「なるほど……」


 このゲーム……スタート地点はランダムだが、考証スレッドの住人達の調査によると、およそ地球の環境を模して作られている事が分かっている。そして大体のプレイヤーがにプレイを始めるので……スタート地点は時差を考えての地点から始まる事が多いらしい。


「ありがとう……助かりました。で、良かったらなんすけど……そのアンジェロス王国の王都への道順を教えて貰えないすか? 何しろ俺は正規のチュートリアルをこなして無いんですら受けて無いんで」


「そうよね……滅多に居ないけど、ハードモードにしたプレイヤーは、自力で各地の神殿までたどり着いてチュートリアルを受けないとジョブどころか最初のスキルすら無いって聞くし……でも……あなたおかしくない? スペックとしての筈の貴方が……どうしてホブゴブリンを瞬殺出来るのよ? もしかして……その歳で特殊部隊の精鋭とか言うんじゃ無いでしょうね??」


「プッ……ハハハハッッ!!」


 俺はオッサンの娘の言い草につい笑ってしまう。流石ゲームの世界……プレイヤーもなかなかのだ。


「ちょっと……」


「いや悪い……俺はちょっとばかり古武術とか剣術をかじっただけの一般人だよ。これがゲームだって分かってなけりゃ、流石に人型の生き物をあそこまで容赦無く攻撃出来るもんかよ。それを歴戦の兵隊とか……とんでもねぇ誤解さ」


 俺の言い分に……若干のジト目を向ける娘……そういや、俺はこの二人の名前すら知らないぞ?


「挨拶が遅くなってすまない……俺のプレイヤーネームはレン……良かったらお二人の名前を教えてくれないか?」


 おっ……二人も今になって初めて“名乗って無い事に気付いた”って顔をしてる。


「それは失礼しました。私はトルバゴ……ジョブは遍歴商人です」


「私は……フローよ。ジョブは剣士、私もチュートリアルをやっと終わらせたばかりの初心者よ。よろしくね……」


 ふむ……とりあえずこの世界で初めて接触した他人……第一ゲーム人達との邂逅はまずまずってとこだな。


「おお……こちらこそよろしく。ところで……」


「分かってるわよ……王都に行きたいんでしょ? あたし達も王都に戻る所だから一緒に来ればいいわ」


「良いのか?! そいつは助かる」


 おっ? 何だか二人か顔を見合わせてる?


「ああ……レン君は? まあ王都までの道中に私の知ってる事なら教えてあげられるから……一緒に来るといいわ」


――――――――――


「へぇ……つまり俺が二人に出会ったのは……この世界を司る女神“パナケイア”の采配って事なのか?」


「そういう事、このゲームは一度プレイを初めてしまえばプレイヤーの自由意志か完全に反映されるシステムだけど……唯一、ゲームスタート時だけはシステムがその人物に対しての影響力が示せる機会なのよ。と、言っても殆どの人は普通に神殿にアバターが発生してそのままチュートリアルを受けるんだけど……稀に貴方の様なハードモード当選プレイヤーが現れるわけ。で、そんなプレイヤーと最初に遭遇するを与えられたプレイヤーにとっては、それは一種のなのよ。まあ、どういう関わりを持つかは遭遇したプレイヤーの意志によるけどね」


 へぇ……そんなプレイヤー同士の関わり方もあるんだな……俺は、てっきり自分が普通にスタートすると思い込んでいたからハードモードの事をあまり調べて無かったけど……


「まあ……中にはプレイヤーキルを辞さない様な過激な連中も居るからね。ハードモードスタートがに始まる人もいるらしいし……」


 よくよく考えて見れば……俺もいきなりゴブリンの群れに遭遇してるし、相当やばかったんじゃないか??


「まあ、レン君のプレイが私達にどんな影響があるかは正直わからないけど……私達も君に助けられたからね。とりあえず王都へ案内するくらいの事はさせて貰うよ!」


「ありがとうございます。本当に助かります」


 正直……あのまま人が居ないマップで迷子になるよりは危険でもイベントが発生したのはラッキーだったよな。


「あっ……ほら見えて来たわよ。アレがアンジェロス王国の王都……ハリドライブよ」


 俺は反射的に彼女の指さした方向を見て……


 そのまま固まってしまった……

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