第53話 二つの決意と、新たなる夜明け【第3章 完】
【一人の男が恋人二人を愛する】
恋人になった人と、かつて恋人だった人に言われたまさかの提案。
それはいわゆるハーレムというヤツで……。俺はその提案を、時間を掛けて自分の中で消化して受け入れることにした。
その葛藤の過程を、人は言い訳というのだろう。
即決できなかった己の心の弱さは認めるしかない。
だが、気持ちが決まればヘタれるわけにはいかない。
二人の女の子を同時に彼女にするなんていう、あり得ない状況に色々と不安は残るが、今の気持ちを大事にしたい。
俺は高彦の性癖を否定した。
その俺が今カノと別れることなく元カノとよりを戻して、「お前は否定するけど俺はいいんだよ」というのは不誠実極まりない。
己の決意までの葛藤を言い訳と表現したのはそのためだ。
しかし、それでも二人ともを不幸にしないための努力をすることはできる。
どっちに転んだとしても、俺が不誠実で卑怯な男であることに変わりはない。
卑怯者は卑怯者でも、それを受け入れていく。
俺を愛してくれる二人のためにも、俺は自分が卑怯者であることを受け入れていかないといけない。
まあ全部言い訳だ。
普通じゃない状況に興奮してしまっている部分も否定できないのだから。
まったくもって台無しだな。
何故なら……。
「嗚呼、すごい……。感無量だ」
「ゆう君、さっきまであんなに出したのに、もうこんなに」
「絶倫さんなんだね勇太郎君、こういうの、興奮する?」
二人の美少女が、それも両側から順番にくっ付いてくれる。
あれから三日。
俺はアヤちゃんを正式に許し、アヤちゃんも過去のわだかまりを清算して俺たちの関係は元に戻った。
いや、前以上に明るく笑うアヤちゃんとますます愛し合えるようになった。
俺は誰もがうらやむバラ色のハーレム生活を送ることになったのだ。
「勇太郎君……もっとしたいこと、何でも言ってね」
「せっかく三人で付き合うんだからさ、男の夢、全部叶えて欲しいから」
俺に負担をかけた見返りに、と彼女達は言った。
俺としてはそれを負担とは思わない。むしろ俺が不甲斐ないばかりに二人に苦労を掛けてしまった。
「この状況が既に男の夢なんだよな」
「ゆう君ハーレムもの好きだもんね」
何故知られているのか。そういえばアヤちゃん、俺のPC漁るのが趣味みたいなところあったよな。
「ねえ二人とも、さっそくちょっと叶えたいヤツが」
それからお風呂に入って、二人のおっぱいで前後に挟んでもらって美少女サンドイッチ。
アヤちゃんは以前よりも思い切りの良いセックスをするようになり、大胆な事も嬉しそうにしてくれる。
二人をバスタブに並べて順番にとか、湯船に浸かりながら二人の肩を抱いたり。
ベッドに戻って二人からの奉仕。おっぱいに顔を埋めてとか。
とにかく3人で出来ることをやりまくった。
◇◇◇◇◇◇
「そうか……。三人で付き合う事にしたんだな」
「ああ、お前が背中を押してくれたおかげだ」
その日の夕方、俺は高彦を呼び出して全ての経緯を話すことにした。
この決断が出来たのは、ある意味で高彦のおかげでもあった。
『別に一人の男が二人の女を愛したって良いじゃねぇか』
愛人を囲って仲睦まじく暮らしているという親父さんの影響もあってか、高彦はハーレムに寛容だった。
元から決意はしていたものの、あの言葉があったおかげでますます腹が決まった。
俺は
「高彦君、私は、勇太郎君に寝取られることにしました。正式にお別れをしてください」
「ああ、今までありがとう
「いいえ、そのおかげで勇太郎君と結ばれました。あなたと寄り添えなかったことには、少しの未練がありましたけど……」
「いや、それこそ俺の責任だよ。俺は自分の事ばかりで
そして、高彦と
ところが……。
「でも、ネトラセ動画はしばらく続けようと思うんだ」
「え、どうしてッ!?」
「なんていうか、高彦君、まだ満足してないでしょ?」
「まあ前回は焦らしプレイみたいな構成だったしね。高圓寺くらい拗らせたヤツがアレで満足できるとは思えないし」
「ぐぬぬ……」
確かに前回の動画はフェラだけで終わっていたために中途半端な形になった。
三人で付き合えるようになったのは、高彦のおかげでもある。
その恩返しとして、最後までネトラセ動画を撮影しようということを、
「ありがとう
「いいのか高彦。
「結果として、俺はその
「高彦……」
「高彦君」
「それに、これから三人で二人三脚しなきゃいけない時に、俺に構ってる暇はないだろう」
高彦は自分のネトラセの性癖を克服すると宣言した。
まあ、別れている以上、それはもうネトラセとは言わないわけだしな。
性癖とは、本来克服するようなものではない。
レイプや痴漢、盗撮など忌避すべきものがあるのは事実だが、事実として容認してはいけないものがある。
そう、彼の性癖は一つだけ大きな欠点がある。
それは『他人の不幸を前提とした快楽』だからだ。
高彦の性癖のために、
もしも俺という存在がいなかったら、取り返しのつかない事態になっていた可能性だってある。
言い換えれば、お互いが納得した上での事なら問題ないといえる。
つまり、寝取らせたい高彦と、寝取られた上で必ず彼の元に戻ってくるほど達観している恋愛観を持った女性ならば問題ないということだ。
「あれだな。寝取られても必ず戻ってくるパートナーができれば、お前は本当の意味で満たされることになるって、前に話したことあるけどさ」
「はは。そんな都合の良い女がそう簡単に見つかってたまるか。それに、例えそうだとしても、俺は自分をしっかりコントロールできるようにならないとって思うよ」
「分かった。頑張ってね高彦君。応援してるから」
「ありがとう
「うん、よろしくね」
こうして、親友が恋人を寝取って欲しいという珍提案から始まった一連の出来事は終わりを告げるのだった。
◇◇◇◇◇◇
それから、一年ほどの時間が経過した。
俺は
パティシエの専門校に通っているアヤちゃんとは時間を合わせてデートしており、週末には
交際は定期的なローテーション。
時にはどちらかと二人きりで過ごすこともある。
そして二人から受けるハーレム奉仕。
本当に素晴らしい日々だ。
一方で、高彦とは相変わらず親友として交友が続いている。
高彦は変わった。性癖なんてそう簡単に変わるものではないだろうが、少なくとも自分のデリカシーの無さを律するようにはなっていった。
俺に偉そうなことを言う資格はないが、高彦の変わり様は本当に凄いと思える。
普段の友人達に対する接し方や相手に対する言動一つ取っても以前と比べて明らかな違いが出るようになった。
それは周りの学友達にも分かるほどで、高彦の性格は大きく変化していった。
俺が鈍かったために気がつかなかったが、振り返ってみれば高彦の性格は
男友達としては本当に良い奴なのだ。
俺がアヤちゃんに理不尽に振られてしまった時も、高彦がいなかったら立ち直るのが大きく遅れていただろう。
それがこの1年で、同性である俺との付き合いの中でも明らかに変わったと思えるほど、高彦の性格の欠点は改善されていった。
そんな彼から、俺も学ぶことが大いにあった。
それは物事に対する行動力と決断力だ。
俺たちはお互いを学びの対象とし、日々切磋琢磨する関係性を築いていた。
そんな日々を送っていたある日のこと、高彦から嬉しい報告を聞くことになった。
「俺、彼女ができたんだ」
俺たちは高彦を祝福した。
「おめでとう高彦ッ。良かったな」
「おめでとう高彦君」
「今度は大事にしてやれよ高圓寺」
「三人とも、ありがとう。俺、今度は間違えないからさ、相談に乗ってくれるか」
「もちろんだ。悩みがあったらいつでも相談してくれ」
高彦に新たな恋人ができた。
それは本当に大変喜ばしいことで、俺たちは友人として紹介を受ける事になったのだった。
そして……。
「頼む勇太郎ッ! 俺の彼女を寝取ってくれぇええっ」
「なぁにぃいいいいっ!?」
俺は再びこの台詞を聞くことになってしまったのだった。
高彦の名誉のために言っておくと、彼はちゃんと性癖を克服していた。
少なくとも、大事な彼女に自分の性癖を押しつけるようなデリカシーの無さは改善されていた。
では何が彼をこの言葉に駆り立てたのか……。それは。
「私、必ず高彦さんの元に戻ってみせますっ! 私でネトラセプレイをしてくださいっ!」
なんと相手の方が「寝取られ願望」の持ち主だった……。
以前話した内容を覚えているだろうか。
相手がネトラセを受け入れ、必ず帰ってこられる胆力の持ち主なら、高彦の性癖は初めて容認されるものに変わる。
つまり、そういう相手と巡り会ったということだ。
"巡り会って「しまった」"とするか、"巡り会うことが「できた」"というべきか、当事者ではない俺には悩ましいところである。
「頼むよ勇太郎ッ! このままじゃ彼女がチャラ男とかおっさんに奪われにいくって言って聞かないんだ! 助けてくれぇ!」
「なんてこったい……」
まさか高彦の理想の相手が本当に現れてしまうとは……。
どうやら俺の悩みはまだまだ終わらないらしい。
~第3章 完~
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