第46話 これがウチが受ける罰なんだ【side愛也奈】前編
【side
いよいよゆう君とカスミンのセックス撮影が始まった。
彼のセックスを外側から見るのは当然初めてで、この一年半で親友になったカスミンが元彼に抱きすくめられている光景がどこか現実味のないものに映っていた。
「さて、それじゃあ始めようか。
「う、うん、大丈夫。勇太郎君の思うままに、抱いて……」
わざわざカメラの前でセックスを宣言する二人。
その言葉がこの撮影がエンターテインメントであることを暗に示していた。
「さあ始めるよ。こっちを向いて」
そうして始まった目の前の光景。
分かっていた筈なのに、心臓が磨り潰されるくらい辛い出来事が、目の前で繰り広げられた。
◇◇◇
カメラの録画ボタンをオフにし、私は全身から力が抜けてその場にへたり込む。
撮影は終わった。以前よりも遙かに凄くなってたゆう君のセックスは、私の全身を二つの意味で痺れさせた。
ズキンッ……ズキンッ……ズキンッ……
分かっていたはず。分かっていたはずなのに。
もちろん、そんな資格はないって分かってる。
この感覚になれてしまわなきゃ、このあと親友と一緒に彼を愛していくなんて無理になってしまう。
嗚呼、でも……辛い。辛かった。
大好きな彼が他の女の子とキスしてる。
おっぱいを触って、もっと凄い所も触って、最後まで愛し合う。
それを目の前で見るのが、あんなに辛いなんて、頭の中で想像していたのより何倍も辛い。
でも、それが親友のカスミンだから、まだ耐えられた。
改めて、彼と別れてから今まで、他の男に一度もなびかなくて良かったと感じた。
もちろんそんな気は微塵もなかったけど、私が他の男に心を移していたら、もう二度とゆう君には顔向け出来ないことは間違いない。
正直あの日を境に今日まで、告白されたり誘われたりすることは何度もあった。
だけど、どうしてもその気にはなれなかった。
誰も彼も見てくるのはおっぱいとか顔が良いとかそういうことばっかり。
私の中身を見ようとしてくる人は皆無だった。
町を歩けばナンパに遭うし、二言目にはおっぱいが大きいとかそんなの。
ゆう君は違った。そりゃあ男の子だし、ゆう君だってこのおっぱいが大好きだって言ってくれた。
でも、彼が見てくれたのは私の心だった。だからこそ、私はゆう君が大好きになった。
私はそれが心地よくて、ゆう君にだったらいくらでも触ってほしかった。
客観的に見て初めて分かる。その愛撫の仕方がどれだけ巧みなのか。
相手の呼吸に合わせて強弱を付ける。痛くなりすぎないように加減しつつ、女の子が求めている刺激の程度を的確に与えてくれる動きだ。
あれだけでもう私はとろけるようなもどかしい快楽に染まっていったのだ。
『高彦君は、もっと、乱暴で、痛かった』
動画の中でカスミンはそういった。
私はゆう君しか男性経験はない。だけどそれがどれだけ巧みで、相手のことを思いやった愛撫なのかがよく分かる。
そうなのだ。彼の愛撫は違うのだ。相手への愛の気持ちが動きの全部に籠もってる。
思えばゆう君は初めての時から上手だった。
初めての感覚で私も戸惑いはあったけど、オナニーである程度性的快感がどう言うものかは知っていたし、ゆう君も沢山勉強してくれて、二回目のセックスの時には痛みの伴う愛撫はしてこなかった。
勉強熱心で真面目なゆう君は、セックスのノウハウをこれでもかと学んで実行してきた。
私を気遣いながら、どんな風にすれば気持ち良くなれるのか、二人で確かめ合った思い出が蘇ってくる。
そうだ、私もアレが好きだった。ゆう君に押さえつけられて、激しさの中にある優しさを感じながら愛撫されるとアッという間に
口の中からとろけるような甘い感覚を味わわされ、体中の力が抜けてクラクラさせられる。
そうなったらもうゆう君の術中だった。虜になった女はきっと誰もが逃れられない。
「上手く撮れてるかどうかチェックしよっか」
私はあのあの光景をもう一度見てみたくなり、たった今撮り終わったばかりの映像を再生するためのパソコンを準備する。
「なんだか恥ずかしいね」
「うーむ。コピーとって今度使ってみるのもありかもな」
「ふえぇ、そ、それは堪忍してぇ」
ゆう君とカスミンがそんな会話をしているのを後ろに聞きながら、カメラとモニターを繋ぎ終わった。
『前の時より感度が良くなったね。俺とのセックスはそんなに良かったのかな?』
「うわぁ、ゆう君の手つきエロいなぁ」
映像が始まり、巧みな動きでカスミンを翻弄していくゆう君の姿にジワリとした熱を感じる。
そこでふと気がついた。カスミンの目がこちらに向いていることに。
カメラ目線とは明らかに違う……私に向けた視線に。
「勇太郎君、どうしてすぐに脱がさないの?」
「そっちの方がエッチっぽいかなと思って」
カスミンのスカートのホックを外し、スルスルと脱がせていく。
ストンと落とせばすぐに脱がせられるところ、敢えてじっくりと時間を掛けて愛撫しながらするところにゆう君のフェティシズムを感じた。
思えばゆう君って服を完全に脱がせないままエッチするのが大好きだった。
多分支配欲が満たされるからだと思うけど、私もそれでゆう君に支配されるのが好きだった。
『ほら、カメラに向かって見せてあげよう』
『嗚呼……恥ずかしいぃ』
「はわぁっ。じ、自分が大股開いてるところなんて直視できないよぉ」
「カスミン可愛いなぁ」
ゆう君の腕が太ももを抱え上げてカスミンの一番恥ずかしいところをカメラの前に晒す。
そういえば、ゆう君は以前に比べて凄く逞しくなってる。
「ゆう君、なんだか前より逞しくなったね」
「ん、ああ。今回のことで、少しでも見栄えをよくしたくてね」
相変わらず好きな人のためには一生懸命努力できる素敵な人なんだな。
その情熱をカスミンに向けている事が、また私の心にチクチクと痛みを与えた。
「ゆう君マッチョになってて素敵♡」
「ありがとう」
努めて明るく伝え、改めて映像の中の彼を見てしまう。
――ジワ……
また、下半身が疼いてしまう。
あの腕に、あの胸板に、男の人を感じながら抱きしめられたらどんなに気持ち良いだろう。
過去の情愛の光景が頭に浮かんでくる。
この時の私も、カメラを放り出してゆう君に抱きしめてほしくてたまらなかった。
「カスミン、陰毛剃ってるんだ」
「う、うん。は、恥ずかしいなぁ。勇太郎君もそうしてたから」
陰毛も綺麗に剃られている。
好きな人のために完璧に整えられたコンディションがカスミンの本気を感じさせた。
『綺麗にしてるね
『だってぇ、勇太郎君が、好きだって、いう、からぁ♡』
そう、ゆう君はパイパンが好きだ。
きっかけはゆう君のエッチな本を見ちゃった時だったけど、私もあれから身体の処理は定期的にするようになった。
おかげで別れた今でも処理だけは完璧にするようになったくらいだ。リーズナブルな脱毛サロンを探していた時期が懐かしい。
自分の生活がいまだにゆう君との時間を前提に配分されていることに自嘲してしまう。
『――――――――♡!!!!!♡』
「うわ、凄い声出してるね私」
「めちゃくちゃ感じてたよねカスミン」
「うう、恥ずかしい」
そうだ、アレだ。ああなってしまってはもう逆らえない。
あのテクニックに幾度気絶するまで気持ち良くしてもらったか分からない。
身体全部が甘い蜜の中で漬けられて、トロトロに
敏感になった箇所を優しく集中的に愛撫されたら、私はもう喘ぎ散らして絶頂に身を任せることしかできなくなる。
『いいよ、イケ。俺の前でエッチな姿さらけ出しちゃいなよ』
ゆう君の口調が少しだけSっぽくなる。まだ見たことのない姿だった。
「あ、ここから見ちゃダメッ、は、恥ずかしいからっ!」
カスミンが慌てて止めに入ろうとする。
この後、ゆう君のテクニックに絶頂を繰り返したカスミンが潮を噴き出すシーンが収められている。
ゆう君のテクニック、前よりもっとエグくなってるのかな……。
カスミンが感じやすいのかもしれないけど、私はまだ経験がない。
気絶するくらい感じさせられた思い出ばかりだけど、まだ経験のない現象を目の当たりにしてズキズキとした嫉妬が湧き上がってくる。
これは罰を受けているんだと言うことを思い出し、不可思議な興奮と胸の痛みが同時に襲ってきた。
「それにしてもカスミン、本当にプロポーションいいよね。ゆう君の好みドンピシャ」
「そ、それは
カスミンのプロポーションは凄かった。
おっぱいは互角くらいだけど、腰のくびれとかお尻のムチムチ具合とか、めっちゃバランスいい。
巨乳好きでくびれフェチのゆう君の好み100%の完璧な体型。
あんなに柔らかそうなのに贅肉って感じが全然しなくて羨ましい。
(これは、なに? 見たくないのに、見ずにはいられない)
激しい嫉妬の奥にせり上がってくる未経験の興奮。
見たくない光景の筈なのに、目を離せない。
これから始まる、ある意味で地獄のような光景を見たくてたまらなかった。
ゆう君が他の女の子とセックスしちゃう。
想像した数十倍の苦しみが私の中を駆け巡っていく。
(でも、耐えなきゃ……ゆう君に与えてしまった苦しみを、数分の一でも受け止めなきゃ)
そうだ。ゆう君はもっと苦しかったはず。
この光景を目に焼き付けて、二度とバカな考えを起こさないように。
ゆう君は安心して苦しんで良いといった。
でもそれに甘えちゃいけない。
私は罰を受けなきゃいけない。彼らが受け止めてくれた恩に報いなきゃいけない。
そして、続く言葉が、私の全身から血の気を引かせたのを思い出す。
【ごめんね、私、勇太郎君に生セックス、とっくに許しちゃってたの……】
――ズクンッ……ッ!!
やっぱり、もう何度も生エッチを経験済みだった。
その事実が私の頬に熱い雫を垂らす。
カメラを持つ手が震えて落としそうになりながら、その衝動的な苦しみに耐え続けたのを思い出していた。
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