第44話 別にハーレムでもよくね?と親友は言う
「ところで、さ」
「あん?」
アヤちゃんは高彦の目を見て話題を次に振った。
「最低なことをした私がこんな話題を出すのはどうかとも思ったけど、カスミンの親友としての立場から言わせてもらいたい事があるわ」
「な、なんだ? え、まさか」
「あんたの性癖でカスミンがどれだけ苦しんでいたか、って話」
「ぐっ……、勇太郎?」
「俺が伝えた訳じゃない。俺と再会する前に
「そ、そうなのか」
「私からアンタを責めるのは筋違いかもしれないけど、アンタのカスミンに対する彼氏としての付き合い方は問題しか感じなかったよ。この一年、カスミンからずっと彼氏とどう付き合っていったら良いかって悩みを聞かされ続けてきたんだから」
「そう……なのか……」
「デートでは突っ走る。気遣いはしない。自分の好みは押しつける。ミニスカート嫌がってることにも気がつかない。相手のことを知ろうともしない。あとエッチが超絶下手ッ!」
「ぐぬぬ、言い返せねぇ……」
「なんとか寄り添おうって努力しても分かってもらえないことに苦しんでた。ううん、もっと努力しなきゃって、いつもいつも一生懸命だった! あんたはいつも自分のことばっかり。そんな女の子の気持ち考えたことあるっ? そこに来てあんたの性癖ッ」
「ッ」
「私の事は完全に棚上げして言わせてもらうわっ。何よネトラセってっ。自分の彼女を他の男に抱かせるッ!? 頭湧いてるのかお前は」
「ぐっ」
「もし女を道具にしか思ってないクソ野郎にヤラレてたらどうするつもりだったんだ! カスミンが自殺する可能性だってあったんだぞっ! 自分の性癖で大切な彼女が死んだらテメェは責任取れるのかよっ!」
「アヤちゃん落ち着いて。もしもの話をしても仕方ないよ」
「分かってるよ。でも、私なりにカスミンの悩みをずっと聞き続けてきて、ずっと思ってた。あの子は自分を押し殺してでも人の想いに応えようとする良い子だよ。だけど、だからこそストレスの吐き出し方も知らない不器用な子なんだって、なんで分かってあげないんだって、ずっと思ってたんだよ」
「……」
「でも、私はアンタに強く言う資格はない。私もゆう君にヒドいことをしたんだから、最低具合で言うなら同レベルだ。だからその後ろめたさで、私もカスミンにあまり強くは言えなかった」
俺はアヤちゃんの肩に手を置き、それ以上自分を責める言い方をやめるようにたしなめる。
「なあ高彦。そこで一つ提案があるんだよ」
「提案?」
「例の話、アヤちゃんにも協力してもらおうと思ってるんだ。これから
「そ、それは一体どういう……」
「確かに、お前の事とは直接関係ないかもしれんが、俺はアヤちゃんに罰を与えることにした」
「どういうことだ?」
「アヤちゃんはまだ俺に気があるらしい。だから、俺とカスミちゃんがセックスしている姿を間近で見続けることで、その苦しみに耐え続けてもらう」
「な、なるほど……」
「その後の身の振り方はその時に考える。だからこれから届く撮影にはそういう要素が絡んでくることを知っておいてくれ」
「分かった……。確かに俺の事とは直接の因果関係はないな。いやでも……
「分かってる。俺は
「……お前、まさか」
「ああ。俺は
「お前お人好しだな……」
俺は自分の思っていることを伝え、これからやろうとしている事を伝えた。
これで撮影におけるわだかまりはなくなった。
俺の中で高彦のアヤちゃんに対する感情を考えると、黙ったままでは良くないと思っていたところだったのだ。
渡りに船。まさにこういうことを言うのだろう。
「さて、取りあえず俺はこれから早速撮影に入る。楽しみにしておけ高彦。アヤちゃんと協力して最高の映像を届けてやるよ」
俺は立ち上がり、ファミレスを出ることにした。
「お、おう……楽しみにしてるぜ」
俺は今晩も
「じゃあ高圓寺。改めて、あの時のこと、本当にごめんなさい」
「もういいよ。勇太郎が許したなら俺から言うことはねぇ」
「ありがとう。お前も自分の性癖と向き合おうってことなんだろ? 許容はできないけど理解はできるから、私もアンタの向き合い方に協力することにしたよ」
「勇太郎と同じ事いうんだなお前。やっぱ相性抜群じゃないか」
「そう……かな」
「相変わらず勇太郎にベタ惚れなんだな。だったら2号でもいいから勇太郎に囲ってもらえよ」
「え、それって……」
「別に一人の男が二人の女を愛したって良いじゃねぇか。勇太郎ならお前くらい抱えたってなんてことないだろ」
「おいおい、話がぶっ飛びすぎてねぇか?」
「私が軽い女みたいに言うなよな」
「そうじゃねぇよ。今時結婚だけが全てじゃねぇ。うちの親父だって公認の愛人くらいいるしよ。勇太郎は多分将来めちゃ成功するぞ。経済的に心配なくなれば愛人の一人くらいどうってことねぇ。お袋と愛人の人はめちゃ仲良いしな。そういう家族のあり方も存在するってこった」
高彦の言うことは金持ちらしいぶっ飛んだものだったが、俺はその奥に潜んだ本当に言いたいことに気がついた。
何気に
それだけ言うと高彦は俺たちに手を振ってその場を去って行った。
「あいつ。まあ高彦なりにアヤちゃんに激励を送ってくれたってことだな」
「あはは……不器用だなアイツ。本気で嫌いになれないんだよな、ああいう所があるからさ」
「そうだね。さあ、
「うん」
俺はアヤちゃんと二人、マンションに向かって歩き始めるのだった。
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