第3章 ネトラセ動画でよりを戻す 13話構成
第41話 新たな挑戦
俺は井之上勇太郎。人生とは奇異なモノである。
突然、思ってもみなかった事態に巻き込まれることもある。
それまで絶対に関係ないと思っていた事を実行することになったのだ。
【親友の彼女を寝取る】
しかしそれは世間で
いわゆる【ネトラセ】という奴だ。
自分の大切なパートナーを他人に抱かせる行為。
正直性癖の一つとして認知していても、それに関わることなんてないと思っていた。
それを好きな人たちを忌避するのは、間違っているのは分かっている。
性癖なんて人それぞれだ。俺だって人の事は言えない。
だが、一つだけ絶対に許容してはいけない性癖がある。
それは【他人の不幸の上に成り立つ快楽】だ。
寝取り、浮気、痴漢、レイプ。様々あるが、今回の親友が提案してきたネトラセを、彼女は心の底から許容している訳ではなかった。
つまり野郎の性欲を満たすために、彼女は不幸を感じなければならなかったのだ。
俺にはそれが許容できなかった。
何故ならその相手である【柳沼
そして今でも情愛を感じている女の子だからに他ならない。
これがまったく情を感じていない相手なら、せいぜい強く止めるにとどまっていただろう。
彼女に対してだって、普通にそうしていれば良かったはずなのだ。
だが俺は彼女の
倫理観に基づいて強く止めるのが人の道だ。
本来ならそれが本筋。俺が選んだのは外道の所業だ。
俺の判断はその他大勢の性欲モンスターの男と同じ。
まるで漫画に出てくるゲスな男と同レベルだ。
しかし、そこでいい女だからって親友から寝取ってしまおうなんて
俺は彼女に惚れていた。横恋慕したい気持ちがあったのだ。
不幸になって欲しくないのは本当だ。親友である高彦にも、初恋である
だが俺は自分の思惑の為に欲望を優先させた。
だってあんなに辛そうな顔をしている彼女が目の前にいるのだ。
高彦を見限る可能性だって十分にある。
恋い焦がれていた
高彦の事を
それでも、二人に不幸になって欲しくない。
二人が上手くいくならそれでいい。
そう思ってこの役目を引き受けたのだ。
◇◇◇◇◇◇
そしてその想いは実った。
一ヶ月という時間を掛けて彼女との心の距離を縮め、初恋の女の子と情熱的な一夜を過ごすことができた。
身体の奥に潜んでいた快楽を引き出しながら、彼女が気がついていなかった不満を一つ一つ浮き彫りにしていった。
俺は今でも
その気持ちが一度目のセックスでも変わらず、むしろ強くなっていた。
そんな想いを抱えて数日。
性癖を拗らせた親友は案の定二回目のネトラセを提案してきたのである。
しかも今回は
高彦はそれを見越して彼女の後を託した。
自分が見限られていた場合、
自分は欲望に負け、
そんな自分は
そうまで達観しているなら自らを律すればよかったのに、と思っても
何もかもが遅すぎた。
もう
◇◇◇◇◇◇
かくして、俺と
俺が伝えた恋慕の想いを、彼女は受け入れてくれたのだ。
ネトラセは成った。俺は彼女を高彦から奪い取ることに成功したのだ。
高彦が本来望んでいた形ではないが、それはもう自業自得としか言い様がない。
二人で相談して、高彦への手向けとしてネトラセ動画を撮ることに決めた。
そんな矢先のことだった……。
かつての恋人と、まさかの再会を果たしてしまうことになる。
そう、かつて俺には恋人がいた。
高校時代の終わり、俺は当時付き合っていた恋人から一方的に振られてしまうことになった。
彼女の苦悩を分かってあげられず、ひたすらに悲しい日々を過ごすことになった。
その彼女と、俺は突然の再会を果たすことになった。
◇◇◇◇◇◇
三戸部
俺がかつて愛した女性。いや、高校生の時分だったから、愛しているなんて大層なことは言えないかもしれない。
だけど、俺は彼女と結婚して幸せな家庭を作るつもり満々だった。
青臭いかもしれないが、それくらい真剣に好きになった女の子だったのだ。
だが俺は振られた。それもある日突然に。
そんな彼女と再会したのが、初恋の人と結ばれた直後だなんて皮肉としか言いようがない。
彼女に対して思うところがないわけではない。
だが俺にはもう優先すべきことができてしまった。
恋人になってくれた
そんなアヤちゃんだが、別れた時とまったく変わっていなかった。
姿は大人っぽくなってはいたが、相変わらず優しくて人の気持ちを汲んでくれる女の子。
俺が惚れた三戸部
◇◇◇◇◇◇
さて、俺たちの状況は新たなステージに進むことになった。
これはいまだかつて無い挑戦。
元カノに、今カノのネトラセ動画を撮影させる。
言葉だけ聞くと鬼畜の所業だ。
だけど
その上で、自分がアヤちゃんから俺を寝取り、苦しんでもらう。
そして目一杯苦しんで
前代未聞の事だ。
およそ普通の考えでできることじゃない。
さて、今日は高彦に今後の動画撮影の趣旨を説明するために食事に行くことになっている。
本来なら秘密裏に行なうことで説明など必要ないのだが、ちょっと事情が変わったためだ。
高彦は先日からの一連のお礼もかねて食事をごちそうしたいと言ってきた。
そのため俺は高彦からちょっとおしゃれをしてくるように言われて一張羅を出して待ち合わせ場所に足を運ぶことになった。
いつも使ってる駅前のファーストフード店前で待機していた俺に高彦が声をかけてきた。
一見ラフに見えておしゃれな衣服に身を包んだ高彦。
腕には高級時計が付けられており、そこはかとないブルジョワ感が漂っている。
こういう所は一般の人間と違うことが分かるくらいにおしゃれでセンスのある格好をしていた。
ホントにネトラセ以外はスペック高いんだよな。
「よう、待ったか」
「うんにゃ。問題無い。そんじゃいくとするか」
「今日はどこに行くんだ? わざわざおしゃれ着までさせて」
「今日は礼も兼ねて特別な場所で話そう。秘匿性もあって目にも嬉しいぞ」
なんだかヘンテコな予感がするが、まあ気にしないでおこう。
駅から徒歩15分の繁華街。
その一角にある小綺麗なビルのエレベーターを昇っていくと、大理石のような光沢のあるフロアに出る。
一目で高級店と分かるシックな造りの店で、上品な香りが漂ってきて気が引けてしまう。
「そんなに緊張するな。ここの料理は美味いぞ」
「お前いつもこういう店使ってるのか? だいぶ慣れてるみたいだが」
「まあ家の事情である程度はな。普段使いで来たりはしないが、店員に顔を覚えられるくらいには常連だ」
高級スーツを着た店員に案内され、席へと通される。
早い時間ということもあってか店内は空いており、奥まった場所にあるちょっと離れた位置の席に案内された。
薄いカーテンの掛けられたブース席は半ば個室のようになっており、中々テンションが上がるな。
「ここなら大声を出さなきゃ内容が聞こえることもない。会員制だから知り合いと出くわすこともそうそうないからな」
「そうかい。それなら何よりだ」
まあこいつなりに礼のつもりなのだろうから享受しておこう。
「なにより、給仕の女の子がな」
こいつめ。やっぱりそういう奴か。しかし、こんな高級レストランのような場所でどういう給仕が出てくるというのだろうか。
「シャンパンでございます」
「ッ……」
「な?」
お通しらしき皿とグラスに入ったシュワシュワの飲み物を持ってきた給仕のお姉さん。
それはバニーガールというものだった。
マジか。リアルに給仕でバニーガールの女の子がいるなんて。
「どうだ。目の保養になるだろう?」
「まあ悪い気はしないけどさ。
「紳士のたしなみという奴だ。ちゃんと切り分けて考えてるし、アイツをここに連れてきたりはしないよ」
何とも複雑な思いがするな。
こういう場所を否定したりはしないけど、彼女ができたばかりの俺としては罪悪感の方が勝ってしまう。
っていうか、その彼女がいながらこういう店によく来ているというのは、どうにも俺のような凡人には不誠実に感じてしまう。
器が小さいのかな。よく考えればちょっと綺麗なねーちゃんがバニーガールの格好をした単なるレストランなのに。
「まあ今日は俺のおごりだ。心行くまでコース料理と女の子を堪能してくれ。あ、ちなみにここはお触り禁止だ。風俗とは違う、純粋なレストランだからな」
「分かってるよ」
会員制の高級レストランだけあって極上食材を惜しげも無く使った料理の数々は確かに美味いが、俺としては
愛の力は偉大だ。
ちなみに今回
それも今回の作戦のコンセプトに入っている。
「さて、高彦。ちょっと事情が変わってな。黙って実行するつもりだったが、コンセプトの説明を行なう」
「お、おう」
「今回の趣向は、ズバリ行方不明だ」
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