第32話 残された未体験を全部奪いたい
「可愛い
「でも、今出したばかりなのに大丈夫なの? 男の人って一回出すとしばらくは無理なんだよね?」
「うん、完全復活なら10分くらいかな」
「え、10分……そ、そうなんだ。それって、早いん、だよね?」
俺の数少ない特技。一度の射精から復活が早いことだ。
その代わり一回が早くなりがちなので、
「個人差はあると思うよ。高彦は違ったの?」
「うん、一回出して終わりかな。その後すぐに寝ちゃうことがほとんどだった」
「うわ、それ女の子にやっちゃいけないセックス後の行動の代表格だぞ……何やってんだよあいつ」
「あはは……そうだね。ちょっと寂しかったな……。二回目を求められる事ってあんまりなくて、でも正直、痛かったから助かってたけど」
「ははは、それはなんともな……。どう言っていいのやら」
モノがデカいからって精力が強いとは限らないのだろうか?
まあ個人差で片付く話ではあるのだろうが、それにしたって堪え性がなさ過ぎだろ。
でもあの動画で冒頭五回はヌイたって言ってたし、もしかして普通のセックスでは満足できないとか……?
だとしたら相当に末期的かもしれないな。
言い換えるならそのおかげで
「俺なら
「そう、なんだ、ひゃいん♡ 首筋、くすぐったい」
俺は
そして再び唇に吸い寄せられていく。
「キスしよう」
「好き、好き……勇太郎君……やっぱり、勇太郎君とのキスは、心が温かくなって、安心する。これが、本当に好きな人とのキスなんだね」
それは比較対象を得てしまったが故に気が付いたことであった。
「好き……大好き、勇太郎君……思い返すと、高彦君にもこんなに心から好きって言えたこと、なかったかもしれない、私の、心からの気持ちだから……とっても、温かいの。気持ち良いの……」
高彦には悪いが、彼女の言葉に俺は言いようのない昂揚感と充足感を覚えていた。
かつて味わった敗北。
初恋の女の子を他人に取られてしまった悔しさ。
それを奪い取った勝利の昂ぶり。
こんなことを感じてはいけないと、分かっているのに興奮を止めることができそうもない。
「高彦君のこと、
「そりゃ高彦の責任だな。結構すぐに舌とか入れてきたりしなかった?」
「う、うん。初めてキスした時も、それで戸惑っちゃって」
あいつめ……。ファーストキスの女の子相手に何やってるんだよ。
そこでフラれて終了ってこともありうる案件だぞそれは。
俺の中の高彦株が更に急降下していくな。
「よく嫌いにならなかったねそれ」
「あはは、キスって、そういうものなのかなって……」
「
「うん、そうだね」
勿論、俺だって偉そうなことを言える立場では全く無い。
だって俺は彼女に好かれるための努力を十分にしてきたとは言い切れない。
恋というものもよく分かっていない中学生ではあったが、俺は彼女に好きになってもらうための努力を、十分にしてきたと誇ることは出来ないからだ。
だからこそ、俺は高彦のことを凄いと思っている。
聞いたところでは高彦は一度ならず、アプローチしている最中何度も告白し断られているという。
それでも彼女を好きな気持ちをアピールし続け、彼女に好きになって貰えるような努力をし、結果的に彼女の思い込みだったとはいえ、これだけ好きになってくれるのなら付き合ってみよう、寄り添ってみようと思わせるまでになった。
これは俺には全くできなかったことだ。
自分が傷付くことを恐れ、付き合っている二人の側で涙を飲んだ。
俺は横恋慕というものが好きではない。
だからこそ二人を祝福したし、寝取らせを提案された時も、二人が本当に幸せになれる形を模索しようと引き受けた。
結果としてこのような形にはなったが、もしも高彦が自分本位な欲望をぶつけるようなことはせず、ちゃんと
悔しさは感じつつも、きっと祝福していただろう。
今のように奪い取ろうとはしなかったはずだ。
改めて、これが寝取りなのだという自覚を覚える。
かつて敗北を味わわされた対象から、自分の惚れた相手を奪い取る。
言葉での表現が困難な、喜びのような昂揚感を覚えてしまうのは、否定できない事実だ。
だが、これにハマっている場合ではない。
俺が求めたいのは奪い取る快楽ではなく、目の前の大好きな人を幸せにしたいことなのだから。
「俺も好きだよ。好きだと伝えることが、こんなに嬉しいことだなんて、久しく思い出せなかった。好きだ
「嬉しいよ勇太郎君……元カノさんも、こんなに幸せだったのかな」
「さあね。俺には思い当たらない不満があったんだと思う。俺といるのが辛いって言ってた彼女に、寄り添える方法はきっとあったんだろうけど、今もそれは分からないままだ」
かつて、俺には
高校生の時に初めて出来た恋人。
あの子と幸せになるにはどうすればよかったのか、今でも答えは出せないままだ。
「……」
「どうしたの?」
「う、ううん。なんでもない。ちょっと気になることがあったんだけど、……今はいい」
「そう? 何かして欲しいことがあったら言って」
「勇太郎君……抱いて、ください。もう一度、あの気持ちを教えて欲しい」
「ああ。もちろんだとも」
今は余計なことは考えまい。
目の前で俺に幸せを求めている女の子を、今の俺ができる精一杯で幸せにする。
それが今やるべきこと、為すべき事なんだ。
俺は余計な思考を頭の片隅に追いやり、瞳を潤ませて身体を寄せる大好きな人に覆い被さった。
このまま彼女を寝取る。
高彦に先を越され、実らなかった初恋の女の子を、人のものになってしまった他人の彼女を、自分がプレゼントした衣服を着せて自分色に染めて淫らに奪う。
そう考えると言いようのない興奮が募り、俺は自分の欲望と理性的な判断力のせめぎ合いに奥歯を噛み締めた。
さっき誓ったばかりなのに、彼女を奪い取り、長年募らせた感情を成就できる喜びが沸き立つように脳汁をドバドバと溢れ出させ、衝動的な感情を生起させた。
「
「うん……来て……私を、奪い取って。力尽くで、思いのままに、勇太郎君の気持ちを、私の身体に思い切りぶつけて欲しい」
興奮した目つきの
鞄からコンドームを取り出す。
興奮と昂揚に紅潮しきった
コンドームの袋を破ろうとすると……彼女の手が俺を制止する。
そして、燃えるような赤を錯覚するほど熱に浮かされた瞳を潤ませ、こんなことを言い出した。
「もう一つ、私の初めてを、勇太郎君に捧げたいの……」
その熱の籠もった瞳が潤み、その奥に秘められた言葉がなんなのか……期待に早くも全身が漲っていく。
「
「うん……そのまま、ありのままの私を、もらって」
――ドクンッ!!
そういって
そして今にも暴走を始めそうな俺の分身を握り絞め、自らそこへ……導いた。
「まだ、高彦君には許してなかったから……勇太郎君が、初めて、だから……ッ……」
下半身に凄まじい熱量と昂揚感が募るのが分かる。
俺の海綿体にあり得ないほどの充実感が流れ込む。
痛みすら感じるほどの暴力的興奮だった。
これほどエッチな台詞を素の彼女が言うとは思えない。
「もしかして、それも動画か何かで勉強したのかい?」
俺は飛びかかって爆速で挿入したくなる衝動を抑え込むために、必死に関係ない話題を振って理性を働かせる。
目眩がするほどの興奮が視界を支配し、真っ赤に染まったかのように霞がかっている。
荒くなる呼吸を必死に制御して、努めて紳士的に振る舞っても、すぐにでも突っ込みたくなる衝動に駆られて必死だった。
「ん、えっと……お友達にそういうの詳しい子がいて……」
「そのお友達は大丈夫なのか?」
「あはは。ちょっと変わってるけど、凄く良い子だよ……ねぇ、それより、お願い勇太郎君……」
緊張とは違う震える声。
欲情に染まりきり熱の色に浮かれされた瞳が俺を見つめる。
「私の、初めての
「嬉しいよ、でも本当に良いの? 俺達まだ学生だ。いや、勿論責任を取る覚悟は出来てるけど」
「うん……大丈夫。実は、これ……」
すると、彼女はおもむろにベッドの枕元にある小さな引き出しから手のひらサイズのケースをとりだした。
「あ、それってもしかして……」
「うん。経口避妊薬……。ちょっと前から生理不順で飲んでたの。こういう形で役に立つとは思わなかったけど……私の初めて……勇太郎君に捧げたいから、お願い、生で、欲しい……私の子宮に、勇太郎君の子種汁、いっぱい注ぎ込んで……」
「分かった。
「嬉しい……私も、勇太郎君の初めてになれるんだね。じゃあ、私達、初めて同士だね……」
「嬉しいよ。感動で泣きそうだ。
「私も、私も、好き……私も、凄く興奮してる……。高彦君から奪われることに、凄くゾクゾクしちゃってるの」
「
「他の男の人にじゃなくて、勇太郎君に奪われたい。あなたの色に染めて欲しいって、思っちゃってる」
「君はなんて男心をくすぐる奴なんだ。もう我慢なんて、無理じゃないかっ」
「来て、来てぇ、私も勇太郎君のこと、直接、感じたい」
熱と熱とのぶつかり合い。俺達は、そのまま何度も愛し合った。
ありのままの佳純ちゃんの中は、とてつもなく熱く、とろけるような熱量に包まれていたのだった。
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