第11話 度し難い性癖【side高彦】

 俺は高圓寺高彦。大学2年生だ。


 俺には世界一素敵な彼女がいる。


 清楚で、お淑やかで、奥ゆかしくて、まさしく大和撫子と呼んで差し支え無い、正真正銘の美女【柳沼やぎぬま 佳純かすみ】だ。


 俺と彼女の出会いは中学にまで遡るが、まあそこは割愛しよう。


 彼女とは付き合って1年ほどになる。

 大学のセンター試験会場で偶然再会し、かつて惚れていた気持ちが凄まじい勢いで燃え上がった。


 俺は試験が終わった時、早速声をかけた。


 向こうも俺を覚えており、懐かしさに花を咲かせて勇太郎に連絡することすら忘れて夢中で口説きに掛かった。


 最初は戸惑っていたものの、一週間にわたっておこなった俺の情熱的なアプローチが功を奏して、交際のOKをもらうことが出来た日は、人生最高の日を更新したものだ。


 それから、一週間後に初キス。二週間後に初エッチを迎えた。


 幸運なことに佳純かすみは処女であり、男性経験はおろか、交際経験もなかったそうだ。


 俺は彼女の人生初めての男になれたことを誇らしく思った。


 今まで付き合ってきた女は総じて金目当てであり、俺のことなど一向に理解しようともしなかった。


 その点、佳純かすみはいつも俺に歩み寄ってくれる。

 おまけに身体の相性も良いらしく、俺はいつも自分が早漏になってしまうことに悩んでしまうほどに気持ち良くなれる。


 セックスってこんなに気持ち良いんだと理解できた瞬間だった。


 交際は順調。

 このまま学生生活が終わり、就職が安定して親父の会社を継ぐタイミングが来たら、結婚を申し込みたいと思っている。


 それくらい人生で初めて夢中になった女だ。



 俺は佳純かすみを愛してる。愛して愛してやまないのだ。


 でも……

 

 だから。


 だからこそ。


 だからこそっ!!


 俺は佳純かすみが、他の男に寝取られ堕ちていくところが、どうしても、見たいッ!!!!



 俺には昔から人には言えない性癖があった。


 いわゆる、【寝取らせ願望】【寝取られ願望】という奴だ。

 自分のパートナーが他の男に寝取られる。


 背徳感と圧倒的敗北感。その上で成り立つ後ろ暗い性的衝動と快感の爆発力は凄まじい。




 人生で初めて付き合った女は、中学の先輩だった。


 まあ、結局はあの女も金目当てだったわけだが、女性と交際した経験の無かった俺は、初めて覚えた女の身体を夢中になってむさぼった。


 ところがだ。


 その女には、俺と付き合っていながら内緒で作った彼氏がいた。


 三つ年上のチャラ男ヤンキーだったソイツは、俺の女を密かに寝取り、あろうことか人生初彼女であったその女との濃密なセックスの様子を動画で撮影して、裏サイトにアップしてやがった。


 そのURLを俺に送りつけて来やがったのだ。


 悔しかった。憎らしかった。



 それと同じくらいッ、興奮したねっ!! 


 今でも抜きネタにしてる位、興奮したねっ!!!


 知らぬところで醜い欲望の餌食になっていく様を見せつけられ、衝撃を受けた。


 悔しさと憎しみと、そしてどうしようもないほどの強烈な興奮を覚えたのだ。


 だが、この性癖が世間では忌避きひされるべきものだってことくらい、俺にだって分かってる。


 エロ動画やゲームならともかく、現実に持ち込んで良い性癖でないことくらいな。


 ましてや、人生で一番と言っていいくらい惚れ込んだ佳純かすみに対して向けて良い欲望じゃないんだ。



 だけど、だけどっ!


 俺は、俺は見たいんだ。


 世界で一番愛している佳純かすみが、他の男に堕とされ、汚されていくところを……ッ!!


 俺は、どうしたら良いんだっ!!










「え……寝取らせ……? それって、どういう……えッ、もしかして、それって、私に他の男の人とエッチして欲しいって、こと……?」


 ある日のこと、俺はとうとう我慢仕切れず、佳純かすみに寝取らせを提案していた。


 案の定、佳純かすみは心底困惑した顔で、非難めいた視線を向けてきた。


「どうしてそんなことさせたいの? 私、何か気に障ることした? だったら謝るからッ」

「違う、そうじゃないんだッ!」


 俺は、佳純かすみに自分の性癖のことを告白した。

 思春期に入った頃から、どうしようもなく好きな性癖であること。


 熱の籠もった説明を聞いて、佳純かすみはもの凄く困惑していた。


 当然だ。しかし……。


 長い長い沈黙……。佳純かすみは相当に悩み、葛藤し、涙目で肩を震わせながら……やがて口を開いた。


「ん、っと……それで、高彦君が喜んでくれるなら……一回だけなら、良いよ」



「ほ、本当にッ!? 本当にやってくれるのか?」

「う、うん……凄く怖いし、嫌だけど。高彦君には喜んで欲しいから……」


「ありがとう佳純かすみッ! 恩に着るよっ!」


 俺は感動したッ! なんて良い女なんだっ。俺は、佳純かすみと付き合うことができてッ、本当にッ、良かったッ!!


「でもっ、その代わり、相手の男の人は、私に選ばせて欲しいの」


 身体を張るんだ。勿論佳純かすみにだって選ぶ権利はある。


「もちろんだ。誰が良い?」


「うん。私の中で、一番信頼できて、安心なのは、勇太郎君……」


 勇太郎。俺の親友。確かにアイツなら佳純かすみに変なことは絶対にしないって確信が持てる。


 俺だって佳純かすみを本当の意味で失いたいわけじゃない。


 自分では制御できない、どうしようもない性癖だけど、佳純かすみはそれでも受け入れてくれた。


 ありがたいっ! やっぱり佳純かすみは俺に惚れてくれているっ!


「ああ分かった。確かに勇太郎以上の適任はいないな。明日いつものカラオケボックスに誘ってみるよ。そこで話す」

「うん。私もいくね」




 そうして、俺の無茶から始まった寝取らせプレイは、1ヶ月後というインターバルを設けて開始された。








 親友の勇太郎に恋人の佳純かすみ(かすみ)を寝取って欲しいと提案をして、早一週間が経った。


 平日の佳純かすみはいつもと同じように俺に接してくれる。

 大学内で俺達は公認のカップルだ。


 俺も結構目立つ存在だし、佳純かすみも控えめだけどめちゃくちゃ美人だからキャンパス内にファンは多く、狙っている男は多数いるはずだ。


 そう言えば、勇太郎は佳純かすみのことをどう思っているんだろうか。


 アイツの色恋沙汰なんて、高校の時に出来た初彼女以外はついぞ聞こえてこない。


 もしも勇太郎が佳純かすみに本気になったら、多分俺では勝てない。


 勇太郎は、本人がどれだけ自覚しているか分からないが、女子からかなり人気がある。


 クールで社交的で、精神が円熟していて相手を気遣う余裕がある。


 俺も長年親友をやっているが、なんでアイツにあれ以降彼女が出来ないのか不思議でしょうがなかった。


 そんな勇太郎が、もしも本気で佳純かすみを落としに掛かったら……多分、いや絶対に勝てない。


 やべぇ、本気で心配になってきた。


 俺は心臓の高鳴りを覚え、佳純かすみに急いで電話する。


『もしもし……? どうしたの高彦君?』

「お、おう……今日は勇太郎とデートの日だったな。どんな様子か気になってさ」


 やっぱりやめておこう。その言葉が、喉まで出かかったが……。


『うんっ、勇太郎君、今日のためにいっぱいデートプラン考えてくれたんだってっ! せっかくだから楽しんでくるねッ』


 明るくそう言う佳純かすみの声に、出かかっていた言葉を引っ込める。


 佳純かすみ……あんなに嬉しそうに。


 ああ、いかん……この気持ちは……。


 この一週間、二人のメールでのやり取りを見続けてきた。


 勇太郎の巧みな言葉運びに、引っ込み思案で人付き合いが得意じゃない佳純かすみが少しずつ解きほぐされていった様子をずっと見せつけられ、少しずつ少しずつ……佳純かすみの心に勇太郎の影が入り込んでいった。


 俺は……ゾクゾクした。自分の大切なものが徐々に侵食されていく焦燥感。


 その感覚をオカズに、何度オナニーをしそうになって我慢したか分からない。


 1ヶ月後、果たして俺は佳純かすみの彼氏のままでいられるのだろうか。


 佳純かすみを信じる気持ちと、奪われていく焦りと、ごちゃ混ぜになった感情が脳髄を痺れさせる。




 平日のメールのやり取り以外では、俺に対する佳純かすみの態度はまったく変わらないように見える。


 何度もエッチに誘おうと思ったが、約束があるので我慢していた。


 佳純かすみの方から誘ってくれることも期待していたが、どうせなら厳格にルールを守ってやりたいと、かわされ続けている。


 キスもする。ハグもする。

 しかしセックスだけは決して許してくれない。




 二回目のデートでは水族館に行ったらしい。大きなアザラシのぬいぐるみを抱えた二人の写真がグループにアップされ、俺の焦燥感はまた一段階上がり、興奮が強くなる。


 三回目のデート。


 遠出をしてサファリパークに行ったみたいだ。ライオンの赤ちゃんを抱っこしている佳純かすみは、ものすごく可愛かった。


 この頃になってくると、佳純かすみは大学内で過ごしている時も、勇太郎に積極的に話しかけにいくようになった。


 確かに平日の俺達はカップルとして過ごしている。


 しかし、常に同じ時を過ごしているわけじゃない。カリキュラムも若干違うし、全て同じ講義を選択しているわけでもないので、離れている時間も確かにある。


 その離れている時間、勇太郎と会っているのではないか……。


 二人協同して、既に約束を反故ほごにしてむつみ合っているのではないか。


 そんな心配をするようになったのは、いつものように俺、佳純かすみ、勇太郎の三人で食堂のランチを食べるときだった。


 佳純かすみが、俺ではなく勇太郎の隣に座ったのだ。


『あ、そっか。つい……』


 つい……。うっかり勇太郎の隣に座ってしまったという佳純かすみは、慌てて俺の隣に戻ってきた。


 その時、少し残念そうな顔をしていたのは、気のせいとは思えない。


 何度もやめようと思った。しかし、それ以外では佳純かすみは極めて普通に接してきた。


 実は勇太郎と逢い引きを始めているのではないだろうか。


 そんな心配がまた強くなる。幸いにしてそれは杞憂だった。


 だが、不安はドンドン強くなる。


 止めようと思った。しかし、それと同時に興奮も強くなっていくのだ。


 止められなかった。三週間も経つ頃には、危うく夢精しそうになり慌てて目が覚めたこともあった。


 四回目のデートが終わり、俺はいつものように佳純かすみに会いに行こうと電話をした。


 しかし、いつもは滅多なことでは断らない佳純かすみが、この日はとうとう俺との時間を断ってきた。


 お祭りで歩きづめになって疲れたから早く寝たいとのことだったが、電話で聞いた声は明らかにウキウキしており、勇太郎と何かあったに違いなかった。


 心配は強くなっていく。しかしそれよりも興奮の方が強くて、止めることが出来なかった。


 そう、この頃は三回に一回はキスですら拒否されるようになった。


 彼女はあくまでさりげなく躱しているのだろうが、その態度には明らかな拒絶と戸惑いがある。


 今までなかった現象に、佳純かすみが確実に変化している事が如実に分かる。


 そんな心配とは裏腹に、俺の股間は痛いほど勃起し続ける日々が続き、あっという間に1ヶ月後の撮影日当日がやってきた。


――――――


後書き

 次回よりいよいよネトラセ本番

 悩める彼女を救う事ができるのか?

 ちなみに高彦君はおバカなだけで悪い人間ではありません(笑)

 応援メッセージよろしくお願いします!(だからこんなバカはさっさと寝取られて脳破壊で後悔させろ!って言わないであげてw)

★★★レビューしてくれたらめっちゃ嬉しい!


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