第7話 印象操作と報道が作り出す偏見
報道機関が行う「印象操作」は、私たちの考え方や行動に大きな影響を与える。その手法は一見目立たないが、実は巧妙で効果的だ。特定の集団を悪者に仕立てることで視聴者の感情を操り、社会に偏見を広める危険性がある。
犯罪者予備軍というレッテル
たとえば、事件が発生した際に「精神障害者」「若者」「母子家庭の子供」といった属性が強調されることがある。これにより、視聴者は無意識のうちにこれらの人々を「犯罪者予備軍」として見るようになる。
実際には、犯罪の背景には多くの要因が絡み合っており、個人の属性だけで説明できるものではない。しかし、センセーショナルな見出しや映像によって、特定の属性が不当に悪目立ちする結果となる。
また、障害者に対する報道では「可哀想」「特別扱いされるべき存在」といった固定観念が植え付けられることが多い。このような描き方は、障害者を「普通ではない存在」として社会から切り離す結果を招き、偏見を助長する。
編集の力で作られる「真実」
報道機関が印象操作を行う際、編集の力が大きく関与している。たとえば、インタビュー映像では、特定のコメントだけを切り取り、全体の文脈を歪めることで視聴者に特定の印象を与える。被害者の涙や怒りの場面を強調することで、視聴者の感情を煽り、冷静な判断を妨げるケースも少なくない。
さらに、ニュースの見出しやサムネイル画像は、視聴者の関心を引くために意図的に誇張されることがある。「〇〇容疑者の異常な行動」「若者の暴走が止まらない」といった見出しは、事実を伝えるよりも感情を操作することを目的としている。
報道が生む社会的分断
こうした印象操作は、結果として社会的分断を生む。特定の属性を持つ人々が不当に攻撃され、偏見や差別が広がる。その偏見はやがて社会の中で固定化され、「あの属性の人は危険だ」という認識が常識のように扱われるようになる。
また、弱者をスケープゴートにすることで、問題の本質が隠されることも多い。たとえば、貧困や犯罪の背景にある社会構造や政策の問題が報じられず、個人の特性だけが責められることが多い。
私たちにできること
印象操作の影響を受けないためには、情報を批判的に受け取る力が必要だ。特定のニュースや報道が感情を煽っていないか、その内容が一面的ではないかを冷静に見極めるべきだ。また、異なるメディアや視点から情報を得ることで、よりバランスの取れた判断が可能になる。
さらに、偏見を助長する報道に対して声を上げることも重要だ。SNSやブログなど、自分自身の言葉で反論する場を活用することで、メディアに対する監視の目を強化できる。
次回は、報道が「敵」と「味方」を作り出し、対立を煽る構造について掘り下げる。私たちはなぜ、報道が描く「正義と悪」の物語に引き込まれてしまうのか、その背景を考察する。
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