第2話 マルラーン家の出来損ないの子(2)
「失礼します。」とドアをノックしてお父様の部屋に入った。
「来たか。レノン」と言って僕を部屋へと迎え入れた。
アレン・ツー・マルラーン。マルラーン家の当主で『悪黒家』を束ねる権力を持っている人。僕に対して話す機会は、この様にリチャードからの伝言で僕から出向く以外に他はない。
「まぁ座れ。お前も勘付いているだろうが、ニルラン・アカデミーの事でお前に話しておかないと思ってな。」
「はい。」と返事するとアレンはコーヒーを一口飲んで僕の目を見て話し始めた。
「それでは単刀直入に話そう。お前が3年間アカデミー生活で『マルラーン家』の恥を晒さないように良い成績を残せばこの家にお前の居場所はあるだろう。だが、お前が私の期待に応えられなかったらお前はこの家に帰ることは許されない。どういう意味か分かっているだろうな?」と目を細めている。まるで僕を観察している…。
「わかってます。つまり貴族から奴隷に成り下がる手続きをするということですよね。」
「そういうことだ。お前を奴隷として売り捌く。これが代々マルラーン家の伝わる掟だ。」
奴隷。人間としての自由を奪われどこかの貴族に売られて一生タダ働きされるか。もしくはタダ働きの人間として生涯暮らさないといけない。そして主人に反抗することなど出来ない。よく犯罪者の刑として奴隷に成り下がる事があるけどマルラーン家ではニルラン・アカデミーの成績か何か重要な事をやらかした場合に下る刑だ。
「以上だ。お前が奴隷に成り下がらないことを祈る。」
「はい。心づかい感謝します。」と言い部屋を出た。
♢♢♢♢♢
お父様の部屋を出てから歩いて自室の部屋に戻ろうとすると、前からお母様と姉さんが一つの大きなバスケットの中に様々な植物を入れた物を持ってこっちに近づいている。
「あら?『失敗作』。まだアカデミーに行っていなかったのね。」
「ちょっとお母様その呼び名は酷いですわ。」
「だって~、『悪黒家』での集会や家来たちに言われるのよ。『マルラーン家』の『失敗作』は『悪黒家』にとっても恥だって。」
「それは昔の話でしょう。でもお母様には悪いけど私はそこの『能無し』を飼おうと思ってるの。」
「あら本当に優しいのね。ノリアは」
「やだ~お母様。褒めるの上手~。『能無し』も嬉しいでしょ。」と姉さんはまるで可愛いペットを見つけたかのような眼差しで僕の事を見つめていた。
ノリア・ツー・マルラーン。『マルラーン家』の長女で、アレックスの妹。彼女は風貌、声、喋り方などから優しい人と思っている人が殆どだけど、彼女の本性はサイコパスだ。昔姉さんに誘われて庭について行った時、木の上に巣を作っていた鳥に対して鳴き声がうるさいからと言った理由で巣の中にいたひな鳥を笑顔でナイフで殺していた。その現場を目撃した庭師によってお父様とお母様に知られて怒られた話がある。それ以降も動物を殺していたがある日を境に止めた。そして年月が流れ現在、僕の事を奴隷として飼いたいと言っている。
ラリア・ツー・マルラーン。アレン・ツー・マルラーンと配偶者であり結婚する前は優秀な薬草医として働いていたらしい。その時の名残りで今も作っている。ちなみにお母様は僕の事が凄く嫌いだろう。なぜなら僕が産まれたせいで『悪黒家』や家来たちの一部の人から陰口でいろいろと言われていたらしい。だけどそのせいで僕の事を嫌いになるのは納得ができない日もあったが今はどうでもいい。
「じゃあね。『能無し』アカデミーで落ちぶれても姉さんが飼ってあげるから安心してね。」
「じゃあ私は薬草の研究するわ。」といい二人は研究室に向かった。
僕も自室へ向かいアカデミーに行く前日の夜までとある計画を考えていた。
その計画はマルラーン家の領地で庭から近い場所にある『デンジャールの森』へ行き悪魔に取り憑かれるために…。
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