◆ 【共通導入:ようこそファゲルズァート島へ】◆
◆ 【共通導入:ようこそファゲルズァート島へ】◆
【導入①】
探索者達は各々、いつも通りの平凡な日々を送っていました。
学生ならば勉学に部活に追われ、社会人であれば仕事に追われ、そんな刺激のない時間が続いていくだけです。
大抵の人間は一生平穏に過ごします。非日常に片足を突っ込んでしまうことの方が稀でしょう。
せいぜい、宝くじでも買って一等が当たることを夢見たり、万馬券を勝ち取る夢を見たり、玉の輿に乗る夢を見たり……そうやって妄想を膨らませながら、良くも悪くもない平凡な暮らしに甘んじていくのが大多数です。
まあ、クトゥルフの世界では非日常と隣り合わせですぐ騒動に巻き込まれたりしますが、そのほとんどが狂気に陥ったり命を落としたりと碌な目に遭わないのですから、平々凡々に生きるのがある意味幸せなのかもしれません。
ですが、砂漠の中の砂金のようなほんの一欠片の幸運を掴み取り、非日常に足を踏み入れることが全くないとは言い切れません。
それも、クトゥルフ神話でありがちな悪い意味での非日常ではない――身も心も癒して「明日からまた頑張ろう!」と思えるような、とびっきり極上な非日常への招待状を。
事の発端は旅行代理店の緋夏樹旅行株式会社が五十周年を記念して人気のリゾート地ファゲルズァート島に一ヶ月間滞在できるミニバカンスを提供する企画を打ち立てたことにありました。
テレビのコマーシャルやSNS、ホームページでの告知などなど、様々な方法で情報発信されたものを探索者達はどこかで目にすることになります。
「どうせ当たらないだろうなぁ」と思いつつも、探索者は一縷の望みをかけて応募フォームに必要事項を書きました。
それから数ヶ月が経過しました。一切音沙汰がなく、少しずつ非日常への期待も薄れ……或いはもう既にその存在を忘れているかもしれない探索者達の元に一件のメールが届きます。
内容を要約すると――。
「おめでとうございます。厳正なる抽選の結果、〇〇様(探索者の名前)はファゲルズァート島に一ヶ月間滞在できるミニバカンスに当選されました。つきましてはX月Y日に指定の空港まで足をお運びくださいますよう、お願い申し上げます。もし、ご参加されない場合はこちらのメールにその旨を書いて返信してくださいませ」
というものでした。折角のバカンスの機会、不意にするのは勿体無いと、探索者達は都合をつけて指定の空港に向かうことになりました。
【導入②】
探索者達が空港に到着すると、探索者達は緋夏樹旅行株式会社が保有するジャンボジェットに搭乗することとなりました。
飛行機が離陸して安定した頃、一人の女性のアナウンスが響き渡ります。
「本日は弊社のファゲルズァート島一ヶ月滞在ミニバカンスにご参加くださりありがとうございます。今回のツアーの企画をさせて頂きました
失敗した探索者は「彼女が緋夏樹旅行株式会社の創業一族の縁者である」と気づいていいでしょう。成功した探索者は「彼女が緋夏樹旅行株式会社の社長令嬢である」ということに気づくことができます。
「私の方からファゲルズァート島について簡単に紹介の方をさせて頂きたいと思います。ファゲルズァート島は豊かな海と山と森、島と調和する都市からなるリゾート地です。代表的な都市には【港町リュレーエ】、【コンターチ市】、【温泉街アクアリーティア】、【アルミーナ工業特区】、【大都市リンプレント】、【ゼルン市】、【グローヴ=ヴァイカウント市】の七つの都市があります。これらの都市はバスによって結ばれており、基本的に交通手段はバスになっています。今回はこの飛行機代に加え、バスと提携しているホテルの宿泊費を全て無料に致します。後ほど『シトラスカード』という企画参加者の証をお渡ししますので島にいる間は必ず紛失しないようにお願いします。『シトラスカード』を紛失した場合はこれらを無料で使える権利はなくなります。また、再発行はいかなる理由でも致しません。この飛行機は最寄りの空港で着陸し、その後船で島へと向かいます。少し気が早いかもしれませんが、【港町リュレーエ】の港に到着後に私から一人ずつ順次お渡ししますのでよろしくお願いします」
その後、飛行機は島の最寄りであるという聞き慣れない空港に着陸しました。
空港と併設されている港に向かった探索者達は船へと乗り換えてファゲルズァート島行きの船に乗ります。
そして、船に揺られること十五分――目的地と思われる大きな島が見えてきました。
探索者達は【港町リュレーエ】の港に到着後、夏蜜から『シトラスカード』を手渡しで受け取り、その後簡単な注意事項を伝えられました。
「企画の期間は三十一日間ですが、もし途中で飽きて帰りたいということであれば空港におります私に一言お伝えください。また、どれだけ島が楽しくても滞在できる期間は一ヶ月間となります。島に三十二日を過ぎて滞在することはできませんのでご注意ください」
と、夏蜜からこのような注意事項を聞いたところで探索開始です。
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