§3


「ベリィちゃん、これも持っていくといいわ」


「いいの!? ありがと!」



 線路の資材を運ぶ道中、いつものお店に寄って昼食を買う。ここの店長は私のことをベリィと呼ぶ数少ない人物だ。そして、なんと追加で肉料理をくれた。今日はとてもラッキーだ。それから私は思わず鼻歌がこぼれるほど上機嫌でテリームまで歩いた。


 お肉~、お肉~、追加のお肉~♪ そんな感じで一時間ほど歩いていると段々おなかが空いてきた。ダメだ。今ご飯を食べて、その勢いで昼寝でもしてしまったら時間通りに間に合わない。幸い作業現場まではもう少しだ。このまま荷物を届けてみんなでご飯を食べよう。その方が何倍もおいしい。そうして空腹に耐えながら荷物を運び、何とかみんなのもとにたどり着いた。


「ジンジャー、荷物…… 持ってきた」


「ありがとう、ベリィ。書類は預かってるか?」


「うん、これ」


「どれどれ。鉄柱二十本、敷石一トン、あとは工具の入れ替え分だな。個数も間違いなし、と。よし、お前ら! 休憩だ! しっかり食うもん食って体力回復させろ!!」


「「「「「ウォーー!!」」」」」


「それで、今日は随分とご機嫌斜めだな。何かあったのか?」


「運ぶ途中からすごくおなかすいた。早く、食べよう!」


「ハッハッハ!! 分かった、さっさとメシをっとって来るよ」



 ジンジャーの号令を受けてみんなが食事を開始する。家族の話だったり、このプロジェクトの話だったり、自己紹介をしている人がいたり……。あの人は新人さんかな? なんにせよ私はこの騒がしい空間でご飯を食べるのが、とても好きだ。


「で、家の方はどうだ?」


「お父さんとお母さんは相変わらずだよ。マリーにばっかり構ってるし、おじいちゃんも『お前は戦士なるべきだ!』なんて言ってくるし……」


「両親は妹ちゃんにぞっこんか。もしかしたら、ベリィは生まれてくる時代を間違えてしまったのかもしれないな。あと百年生まれるのが早かったら、間違いなく英雄になれただろう」


「えぇ…… 暴力はダメだよ」


「だが、当時の英雄になれれば何でも思いのままだぜ? 好きなものを好きなだけ食べれるし、好みの男を何人でも侍らせることができる。俺もガキの頃は憧れたもんだ」


「え!? ジンジャーは男を何人も侍らせたかったの?」


「そんなわけねぇだろ! それはおめぇの立場に置き換えただけだ。侍らせるなら美女に限る。……にしてもベリィ、お前さんは本当によく食べるな。軽く十人前は越えてるぞ」


「んむ、シょふジは、ぱハーのみまもと」


「ちゃんと飲み込んでから喋れ」


「……食事はパワーの源だよ。ちゃんと食べないと鉄柱一つも運べないよ?」


「それは一人で運べるお前がおかしいんだ。俺をナマケモノみたいに言うな」


「じゃあ、次から運んであげない。やっぱり自分たちの仕事は自分たちでやるべきだよね」


「俺が悪かった。次回も鉄柱の運搬、どうかお願いします」


「いいよ、これまで通り食事代さえくれればね」


「助かります~」







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