17話 その男の名はイノシロウ

個室のドアが音を立てて開くと、その中から肩から先がないGジャン、そして、ボロボロのGパン、髪型だけはアミバを彷彿とさせる男がすっきりとした顔で出てきた。


この男の名はイノシロウ。


北斗の拳をこよなく愛し、ケンシロウが先制すると怒りに震える。


幼女からの復活をこよなく愛し、ユリアが出現すると台に北斗百裂拳を食らわせる。


まさに世紀末を彷彿とさせる危険な男なのだ。


おそらくトイレでケンシロウボイスでの咆哮をしていたのもこの男であろう。


本日も肩パットを入れたGジャンにGパン。


髪型はアミバというケンシロウなりきりスタイルでの参戦する恐ろしき漢である。


打ち手としてはまさると同じニュータイプであり、台の波というものを最大限利用している。


ジャグラーと違い、北斗においてはこの方法は非常に有効であり、マシンの調子が良ければ、冷遇、優遇といったモードを利用して勝利を掴むことができるだろう。


まっつとも北斗の島でいくつもの激戦を繰り広げ、時にはお昼もごちそうしてくれる強敵(とも)である。


「まっつ!やっぱり来てたのか?」


「今日は北斗じゃないの?北斗で見かけなかったからさ」


イノシロウは、奇跡の村でのシルエットほどに眩しい笑顔でまっつの肩に手をかけながら、そういい放った。


まっつは洗ってすらいない手で、自分を触ってくることに怒りを感じたが、それを堪えつつ


「今日は抽選が良かったので、普段なかなか打つことができないバーサスを打とうかと思いまして」


「イノさんは相変わらず北斗ですか?…」


イノシロウはまっつにかけていた手で髪を掻き分けながら


「いや~、今日は抽選負けちゃったからよ、久しぶりのジャグラーよ」


まっつはホッと安堵しながら


「北斗出る前は毎日打ってた機種ですもんね。上手いこと勝てましたら、打ち上げいきますか?」


イノシロウは幼女好きな点さえ除けば常識人なのだ。


ただ、他の人に比べて幼女が好きなだけのパチンカスなのだ。


「おっ!?久しぶりにいいな!じゃあ、飲み代稼げるように頑張るか!」


イノシロウはアミバよろしくといった素晴らしい笑顔を浮かべ、ジャグラー島へと旅立っていった。


手を洗わなかったのは、おそらくウンが落ちるからであろう。


まっつはそう思いながら、バックからウェットティッシュを取り出し、肩をふきあげた。


イノシロウは幼女が好きなことを除けば常識人なのだ。


この時、まっつは知らなかった。


ジャグラー島にて、イノシロウ、まさる、ヒゲさん。


ジャグラー三銃士とも言える三人が集結してしまっている事実に…


ジャグラー島で、勝利を目指す三人の戦いが幕をあける


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