15話 専業パチンカス ヒゲさん
私がパチンカスを専業としてから30年は経つであろう。
当時はパチンカスという職業を誰も認知してくれなかったものの、最近では若者から働き盛りの中年まで、多くの人がパチンカスとして生きて行きたいと言ってくれている。
私の名前も当時から比べると大分知れ渡ったものだ。
たまにホールに行くと
「ヒゲさんのおかげで勝てるようになりました」
「ヒゲさん好みの高身長の子が入店しましたよ!」
「どうやって戦果を上げるのか要約わかりました」
「ヒゲさんオススメの動画最高でした!出張先でお世話になりました!」
「俺も専業になります」
「昨日の店の女の子最高でしたね!」
などとみんなが声をかけてくれるのだ。
ヒゲとサングラスを掛けながら、戦場を徘徊しているため、みんなからはヒゲさんなどと呼ばれている。
ニュータイプとしてジャグラーばかり打ち続けてきたせいか、一部のパチンカスからはジャグ神様として崇めらているという話も聞いたことがある。
崇めらているのは決して頭部から光を放っているからではない。
専業パチンカスとして活動してきたおかげで、メディアにも進出して、なかなかプライベートで戦場に出向く回数は減っているものの、古参のパチンカスとして熱い日に戦場で戦わないという選択肢は考えられない。
そういうわけで本日も年に一度熱いイベントということでホールにやってきたわけだが、与えられた抽選番号は198番(イクワー)
「やれやれ、この番号だと今日もあいつの世話になるしかないな」
確かな根拠を元に今日もジャグラーと戦場を駆けること考え、今までの経験が記されたヒゲガラケーを取り出し、本日の狙い台をチェックする。
このホールの傾向として確かなのは、末尾5がつく台については調子が悪い日が圧倒的に多いということだ。
ジャグラーというマシンは多くの店で、末尾5がつく台については調子が良いことが多いのだが、この店では調子が悪いようだ。
おそらく、多くのニュータイプ達はこの店では大したこと戦果を上げられず、無惨に討ち死にしたのであろう。
むしろ、ニュータイプの中でも歴の浅いもの達が、適当にその末尾5の横に座ることで戦果を上げることに成功しているようだった。
「よし、今日の狙い台の第一候補は536番だな。」
「去年もこの台は同じ日に調子が良かったし、熱いイベントの日に限定して見た場合、ほとんどの日に戦果を上げることに成功している。」
狙い台を定めると、ヒゲガラケー をポケットにしまい、自身の入場番を静かに待つのであった。
ヒゲさんは信じている。
ジャグラーにおいて必要なのは、波を読む力ではなく。
今までの経験から導き出される確かな根拠こそが1番必要なのだと。
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専業:スロットやパチンコの戦果だけで生活を行う者たちである。
パチンカスと呼ばれる者との違いは、戦果を上げなけれいけないということ。
世間的に誇れる職業ではなく、一般人がなろうとしても、その99%は就業することができない、プロ野球選手よりも狭き門の職業である。
根拠:多くのニュータイプはその根拠だけで福沢1等兵を三人も四人も戦場に送れないのである。
ヒゲさんクラスになると根拠だけで、無限の渋沢を戦場に送り出すことに成功している。
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