第3話 嘘

「ただ死んで幽霊になっただけかよ!!

別に未練なんてたいして残ってねぇよ!

てかここどこだよ!

普通事故現場とか事故相手とか生前の縁があるなにかの近くとかに居憑くんじゃねぇのかよ!」


また考えなしにべらべらと、それも大声を出してしまった。

少女がまた怯えて逃げ出してしまうのではないかと目を向けた。

どうやら今度は大丈夫らしい。


ようやく息が整ったのか少女が立ち上がった。


「おばけさんは悪いおばけさんではありませんの?」


「あ、ああ。俺は悪いおばけさんじゃないぜ!

気がついたら知らない場所でおばけさんになっちゃっていて、困っているだけのただのおばけさんだぜ!」

怖がりで小学生くらい幼い少女を怯えさせまいと、できるだけ明るく可愛らしく答えた。


「迷子のただのお馬鹿さんでしたの。

びっくりして損しましたわ。」

さっきまで怖がっていた少女は強がってそう言った。


(....舐めてやがる)

「いや、お馬鹿じゃなくておばけ。

...まあいいや。それでここは一体どこなんだ?

日本ではなさそうな気がするけど。」


「ニホン??ではないですわ。ここは...」

そう言うと少女はゆっくり大きく首を横に振った。


「ここどこですのーーー!!!?」

少女の声が森中に響き渡った。


「迷子のお馬鹿さんめっ!」

「っ...あなたが叫びながら追いかけ回すから!!

可愛い私を森へ誘い込む、悪い変態おばけさんのせいですわ!」

「だから追いかけてたわけじゃないし!

叫び回ってたのはおまえだろ!」


なんと自分勝手で感情がコロコロ変わる少女だろうか。

という思いは胸にしまい、まずは落ち着かせて少女を家まで送り届けることにした。


「ここがどこかはわからんが、最初に出会った場所までの道なら覚えているぞ。」

そう言って少女が走り回ってきた方角へ指を指した。


「フンッ。自分で連れ込んで置いて帰り道を教えたくらいで紳士ぶらないで欲しいですわ。」


「まぁ、無事に帰れたら悪いおばけさんではないと認めてあげますわ。

さっさと案内しなさい。」


いろいろと引っ掛かるところはあるがひとまず目を瞑り、帰り道へと歩み始めた。


「おわ!?」


突然、目の前の見えない"何か"にぶつかった。

"何か"を触りながら横に移動してみるがそれは壁のようにどこまでも続いているようだった。


(閉じ込められた...??)


「...?

なにしてるんですの?

やっぱり道がわからないとか言うんじゃないですわよね!?」

「い、いや。

なんか壁みたいなのがあって先に進めないんだよ!」


少女はふぅと呆れてため息をついた。


「正体を表したようですわね!

この変態おばけ!騙されませんわよ!

こんなところさっさとおさらばですわ!」

少女がこちらへ向かって歩き出した。


「ほんとだって!

来たらわかるけどここに壁がっ!あれ?」

壁を叩くつもりだった手が大きく空振った。


困惑するおばけの横を通り過ぎると、少女は立ち止まり振り返った。


「今度はなにを言って私をここに止めようとするんですの!?

嘘つきおばけにはもう耳も貸さないですわ。」

そう言うと少女はまた背を向けて歩き出した。

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