第2話 叫び

「キャーーー!!!」


少女の悲鳴によってハッと我に帰った。


(そりゃいきなり知らんお兄、おっさんがわけわからんこと捲し立ててきたらそうなるよな。事案だろ。)


「ご、ごめんね。急に話しかけて。

おじさん道に迷っていて、人を見つけたからつい。」


「イヤァァーーー!!!」

少女は逃げ出した。


「ちょ...驚かせてごめんね!

って、えっ!!?」

「ギャーーー!!!」

「えっ!?あれっ!?えっ!?」

「ごないでーーー!!!」

「いやっ!!ちがっ!えっ!?」

少女が逃げ出した途端、体が強く引っ張られた。


追いかけているわけではない。

引きずられているのだ。


「イヤァァァァーーー!!!」

「ほんとっ!違う!!

体が!勝手に引っ張られて!!」

「ギャァァァーーー!!!」

「だからっ!!少しは話を!」


_______

「「はぁ...はぁ...はあ...はあ...」」

少女は逃げに逃げ回り、近くの森の中の泉のところで力尽きた。


「はぁ...一旦...落ち着いて...話を...聞いてくれ...」

大の字で天を仰ぐ少女は、胸を、平らな胸を上下に揺らしたまま顔だけこちらに向けた。


「追いかけたかったわけじゃないんだ。

なぜか体が引っ張られて...」


「俺、気づいたらさっきの場所にいてさ、

ここがどこなのかもわからなくて困っていだだけなんだ。」


少女の顔は先ほどまでの恐怖にひきつった表情ではなくなっていた。

だがまだ息が整っていないのか、

言葉を交わそうとはしてくれないようだ。


「知らない人とおしゃべりしちゃいけませんってか?

...あ、そもそも俺の言葉が通じてない??」

少女は少しだけ首を横に振った。


「それにしても逃げすぎじゃないか。

そりゃ、いきなり知らんおっさんに声掛けられて追いかけられたら怖いだろうけどさ。」

そう言うと少女はじっとこちらを見つめたまま泉を指差した。


「泉??泉に何かあるのか?」

そう言って男は泉を覗き込んだ。


「何もないじゃないか。」

そう、何もない。

何もない泉にただ太陽が反射して映り込んでいるだけだ。


「あれ??」

男は何か違和感を覚え、目を凝らして覗き続けた。


すると、薄ぼんやりと小さな何かが水面を覗き込んでいるように見えた。

男は思わず辺りを見回したが2人以外には他に誰も居ない。

きょろきょろと動く水面に映るソレの近くに男が映っているわけでもない。

...いや、男は映っていた。


「これが...おれ??」

そこで少女に出会う直前のことを思い出した。

木に触ることができず、すり抜けていたのだ。


「やっぱり俺...死んで...幽霊...??」


「...」


「転生したんちゃうかーーい!!」

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