第4話 つかれた

「待てって!さっきは本当に壁があったんだよ!」

言い訳をしながら急いで少女についていく。


「ついてこないで!変態おばけ!」


また何を言っても聞き入れない態度になってしまったため、少し離れて何かあるまでは見守ることにした。


だんだん小さくなっていく少女をじっと見つめていると

「あれ!?また!どうして!」

体が勝手に引きずられていく。


「ついてこないでっていったのが聞こえなかったんですの!?ストーカーおばけ!」


「だから!ついてくとかじゃなくて!

お願いだからちょっとそのまま立ち止まっててくれ!」

そう言って後ろを振り返り少女から離れようとすると、またそこに壁が現れたようだった。


(やっぱり、そういうことなのか...)


少女に蔑んだ目で見つめられながら少女の周りを飛び回った。


(場所の問題とかじゃない。

あいつの周りが壁で囲われている。

距離は...車3台分くらいか...??)


「おーい!お願いだからそのまま落ち着いて聞いてくれよ。」

少女はこちらを睨んだまま立ち止まったままだ。

一応話は聞いてもらえるようだ。


「おまえが離れていくと体が勝手に引っ張られるんだよ。

それに離れようとしても壁があって離れられないし...

俺はお前の半径15mくらいからは離れられないっぽいんだ...」


「やっぱりストーカーでしたのね!」

「いや、話聞いてたのかよ!」


「もうなんでもいいですわ。

疲れましたわ。はやく道を案内しなさい。」

少女は何かを諦めたように再び歩き出した。


それからしばらく2人は無言で森の中を歩いていった。


「もうすぐ森を抜けられそうだぞ。」

木々の間から差し込む紅い光を指してそう言った。


光の方へ進んでいくと広大な平原にポツンと立つ大きな木。

そのさらに奥には建物が、街が広がっているように見えた。


木の近くにあったらしい人影がどんどんこちらへ近づいてくる。


「〜ょぅさまぁーーー!!!お嬢様ぁーーー!!!」

夕暮れ時まで帰らないお嬢様を心配した迎えが来たようだ。


「お嬢様!!こんな遅くまでどこに!!

まさか森まで行っていたんじゃないでしょうね!!」

駆けつけてきたスーツ姿の老人の言葉には耳を傾けず、お嬢様は夕日を見つめた。


「1人で遠くまで行ってはいけないといつも言ってるではありませんか!

特に森へなんて!何に襲われるかわからないのですよ!」


「そうですわね。おかしな悪霊に襲われたりとか。」

そう言ってお嬢様は俺を睨みつけた。


「そうです!危険なのです!

旦那様が心配しております。

早く帰りますよ。」


「ええ。もう憑かれましたわ。」

お嬢様がその場にぺたんと座り込むと、

老人はお嬢様を抱きかかえて街の方へ歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

(異世界転生したら)転生せず知らないお嬢様の背後霊なんですが いーこよ @echoyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ