第51話 パーティー結成

 パーティー名を決めた二人は、カミラにパーティー新規結成の意向を伝える。

「カミラさん、じゃあついでにパーティー登録もよろしく。パーティー名は“放浪者フローターズ”で」

「フローターズですね。かしこまりました。出来れば放浪せず、レンベックに根を張ってくださいね!」

「善処するよ」


「あ、そうだ。今あるポイントなんですが、パーティー登録前に均等割りせずに200ポイントを1人に集中、Eランクに昇格させて、その後にパーティー登録すると、Eランクパーティーとしてスタートできますが、どうしますか?」

「え? なんか裏技っぽいやり方だけど大丈夫?」

「はい。倒した時点ではお2人ともソロですし、何も問題ありませんよ。と言うか、普通一度にここまでポイントは溜まらないので、裏技だったとしても真似できる人はいないと思います」


「じゃあお願いしようかな。文乃さん、どっちを昇格させる?」

「兄さんで良いんじゃない? パーティーリーダーになるでしょうし」

「えーー、俺がリーダーなの? まぁいいけど……じゃあ俺を昇格させてから、パーティー登録よろしく」

「かしこまりました。と言ってもここでは出来ないので、カウンターへ戻っていただいて良いでしょうか?」

「了解」

「んじゃあ、俺も職場に戻るぜ。フローターズっつったっけか? これからも頼むぜ!」

 そう告げて太一の背中をバシバシ叩くと、マルセロは先に部屋を後にする。

「ふふ。マルセロさん、かなりタイチさん達のこと気に入ったみたいですね。じゃあ私達も戻りましょう」

 

 カミラに促され太一達も奥の部屋を後にし、カウンターへと戻ってきた。

「じゃあ、まずは依頼達成手続きとポイント付与しますね。タイチさんギルドカードをお願いします」

「はいはい」

「お預かりします」

 太一からカードを受け取ったカミラが、魔法具にカードを差し込み、表示された内容を確認していく。


「はい。確かにタイチさんアヤノさん共にしっかり戦闘に貢献されてますね。問題なく200ポイントをタイチさんに付与します。おめでとうございます! これでEランクになりました。カードのご確認をお願いします」

 渡されたカードの冒険者ランクは確かにE級になっていたが、それ以上に分かりやすい変化があった。


「おぉ? カードがグリーンメタリックになってる!?」

「はい。一目で分かるように、ランク毎にカードの色が変わります。ちなみにD級に上がると紫になりますよ」

「そんな仕掛けがあったのか……。ホント何で出来てるんだ、このカード??」

 

「では、この状態でパーティー登録しましょうか。アヤノさんにポイントを入れてしまうと、少しだけですがパーティーポイントが無駄になってしまうので」

「あぁ、なるほどね。塵も積もればだな」

「パーティー登録は隣のカウンターなので、そちらへ向かってください。私も裏から回りますので」

「りょーかい」

 

 太一達が隣のカウンターにいるクロエの所へ向かうと、カミラがクロエと話していた。

「あ、タイチさんアヤノさんお帰りなさい! カミラから聞きましたよ。1日でE級になった上パーティー登録するとか?」

「まぁね。ランクアップはポイント集中させたからズルみたいなもんだけどね」


「そんなことはありませんよ。そもそも討伐への貢献度が低い人はポイントを集中させることも出来ないので。さて、じゃあサクッとパーティー登録しますね。リーダーはタイチさん、メンバーはアヤノさんのみで良いですか?」

「うん。大丈夫」

「ありがとうございます。では、パーティー名をお願いします」

「パーティー名は“放浪者フローターズ”で」

「“放浪者フローターズ”ですね。かしこまりました。はい、重複も無いので大丈夫ですね。では最後に、お二人のギルドカードをお預かりします」

 クロエが魔法具を操作し2人のカードを魔法具に差し込むと、一瞬カードが淡い光を放つ。


「はい、登録できました。これでEランクパーティ“放浪者フローターズ”が結成されました。おめでとうございます!カードをお返しするので、確認をお願いします」

 クロエから渡されたカードには、これまで無かった

 

 パーティー名:放浪者フローターズ

 パーティーランク:E

 

 の文字が刻まれていた。

 

「問題無いな」

「こっちも問題無いわ」

「ご確認ありがとうございます。今後依頼を受ける際は、個人で受けるかパーティーで受けるか選択してくださいね。あとご存じかと思いますが、個人ポイントと違ってパーティポイントは自然消滅はしません。ただし、ペナルティ行為、例えば依頼を失敗した場合や長期間依頼を受けなかった場合など、ペナルティとしてポイントが減りますのでご注意ください。他にご質問は良かったですか?」


「特にないな」

「私も大丈夫よ」

「かしこまりました。ではパーティー放浪者の今後のご活躍を期待しています! ガンガン依頼を受けてくださいね!!」

「まぁ、善処するわ」

「では、残りのポイントを文乃さんとパーティーに付与して、皆様へ報酬をお支払いしますので、お手数ですが依頼カウンターのほうへまた移動をお願いします」

 

 クロエに軽く挨拶をして、また全員で隣の依頼カウンターへと戻ってくる。

「では何度もすいませんが、まずは放浪者のお2人のカードをお預かりします」

 カミラが2人のカードを預かり魔法具を操作していく。

「はい、こちらで手続き完了です。アヤノさんとパーティ放浪者に23ポイント付与しました。これでお2人の手続き回りは完了となります。お疲れ様でした。続いて、常設討伐依頼の報酬をお支払いしますので少々お待ちください」

 そう言うとカミラは、先ほど査定をした紙を持ってカウンター奥へと消え、程なくして袋をトレーに載せて戻ってきた。

 

「お待たせしました。報酬についてはパーティ単位でのお支払いとなるのでご了承ください。先ほどの取り決め通り、放浪者に3,000ディル、運河の星に3,250ディルのお支払いでよろしかったでしょうか?」

「うん、問題無いよ」

「こっちも大丈夫」

「かしこまりました。お支払いは一部両替しますか?」

「ウチは最小枚数でいいかな」

「俺の方は金貨2と大銀貨10でお願い」

「かしこまりました。少々お待ちください…………」

 カミラが袋からコインを取り出し、2枚あるトレーへと置いていく。

「お待たせしました。こちらが運河の星の報酬、こちらが放浪者への報酬となりますのでご確認ください。問題無ければ受け取りの確認をしますので、ギルドカードをお願いします」

 

「問題無いね」

「うん、問題無い」

 ジャンと太一は枚数を確認してギルドカードをカミラに渡す。

 カードを受け取ったカミラは、手早く魔法具を操作し受け取り完了の処理を行うと、カードを2人へと返す。


「カードをお返ししますね。これで手続きはすべて完了です。長時間お疲れ様でした!!」

「こっちこそお疲れ様。どっかの誰かが無茶するから、えらいことになったわ」

「あははは、まぁランクも上がったしそこそこ稼げたし、良かったじゃない? ね?」


「まぁ怪我した訳じゃないからいいけどさぁ……。さぁて、さすがに疲れた。アンナは先に戻ってるし、打ち上げは無しでいいよな? 今夜はゆっくり休みたいわ」

「そうだね。僕らもお土産買って戻ろう。明日からはどうする?」

「そうだなぁ。だいぶ勝手が分かって来たから、ちょっと自分たちでやって見つつ、聞きたいこととか相談事があったらファビオ経由で話を持ってくわ。ジャン達も自分たちの依頼があるでしょ?」

「あと数日休んだら、肩慣らしを兼ねてしばらく日帰りクエストって感じになると思うから、連絡はつくはずだよ。何かあったら遠慮なく言ってね」

「ああ、助かる」

 ジャンと太一が握手を交わすと、他のメンバーもそれぞれ別れの挨拶をし、互いの定宿へと足を向ける。

 今日はファビオも、ジャン達の宿でアンナを労うそうで、ジャンと共に歩いていく。

 

「ふぅ、長い一日だったなぁ……」

「そうね……。ホント色々ありすぎて、どこから整理したらいいのやら……」

「うん。でも色々何とかなりそうな気がしてきたから、それは良かったかな」

「何となく冒険者の稼ぎ方も分かったし、明日から本格的に色々試しましょ。市場調査も兼ねて、ね」

「だなぁ。さて、じゃあ今日はとっとと帰って美味いもん食べてゆっくり休もうか」


 こうして、太一と文乃の濃い冒険者一日目が終わりを迎えようとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る