第33話 ホットケーキ

 今日のおやつは出来立てのジャムを使ってホットケーキを食べるのが目的。

 まずは生クリームを泡立てる。

 ホイップクリームとジャムでホットケーキをデコレーションして豪華にする。


「生クリームを泡立てるよ」


 ハンドミキサーを取り出し、ボールにホーマーの牧場でもらってきた生クリームを入れる。当然ナッツエレファントの生クリームを使う。ナッツエレファント以外の生クリームも泡立てて味を比べてみる予定。


「パム、一緒に泡立てようね」

「うん!」


 別のボールに氷をいれ、生クリームの入ったボールを冷やしながら泡立てていく。

 圭人はパムがハンドミキサーで怪我しないように注意しながら、ナッツエレファントの生クリームを泡立て、砂糖を追加して味を調整していく。熱いホットケーキの上に載せる予定であるため、硬めにホイップクリームを仕上げる。


「パムの耳と同じようにピンと立った状態にまでするよ」

「パムの耳」

「そう。柔らかく仕上げても美味しいけど、今日は熱いホットケーキに乗せてデコレーションするから硬めにするよ」


 今はパムに耳がない状態であるが、意味は通じているだろう。

 ホイップクリームが硬くなってくるとハンドミキサーを止めて、ハンドミキサーを持ち上げることで硬さを確認する。パムの耳と同じようにピンと立ったホイップクリームが完成する。

 今回はバニラエッセンスなどの香料を使わないでホイップクリームを作った。


「味見しないとね」

「味見!」


 パムがナッツエレファントのホイップクリームを食べると、とろけるような笑顔を浮かべる。よほど美味しいのだろう。

 圭人もナッツエレファントのホイップクリームを食べてみる。

 香料を入れていないのに、豊かなナッツの香りが口の中に広がる。ミルキーな味の中に胡桃やアーモンドのような味があり、ホイップクリームだけなのに作ったお菓子を食べているような気分になる。


「これは美味しい」


 巴とセレナも味見すると同じように美味しいと言って、ナッツエレファントのホイップクリームが入ったボールを見ている。

 巴がボールから目を離して圭人を真剣な表情で見る。


「この量だと取り合いになりそう」


 パムが初めて作ることもあり、今回は生クリームの量をそこまで入れなかった。それでも生クリームを泡立てるとホイップクリームは結構な量になる。

 普通に消費するなら十分な量ではあるが、ホイップクリームの美味しさから取り合いになるのが目に見えている。


「量を作っておこうか」

「その方がいいと思う」


 巴が真剣な表情で頷く。

 圭人とパムは追加でナッツエレファントの生クリームを泡立てる。

 パムは覚えがいいのか、二回目のホイップクリーム作りで随分と余裕がある。


「パム、上手だね」

「本当?」

「うん、とても上手だよ」


 パムが満面の笑みを浮かべる。


 パムと大量のホイップクリームを作り終えると、ホイップクリームが入っているボールにラップをかけて冷蔵庫に入れておく。ホイップクリームは常温に置いておくと油分と水分が分離しやすい、冷やすことで分離を防ぐ。


「パム、次はホットケーキを焼くよ」

「うん!」


 パムが笑顔で頷く。


「まずはボールに卵を割入れる」


 圭人はパムに卵を手渡す。


「パムは卵割ったことある?」

「割ったことない」

「卵は平面な場所か丸みを帯びた場所で割ると割りやすいよ」


 卵を割るのが初めての場合難しいだろうと、圭人が先に手本を見せる。圭人は片手で卵を割れるが、パムの手本となるように両手で卵を割って見せる。

 パムが圭人の動作を見てから頷き、卵を机にぶつけて割ってみるが、最初は力が弱過ぎてヒビが入らない。何度か卵を机にぶつけると、ヒビが卵の殻に入る。

 ヒビの入った卵をパムが割る。


「おお、上手に割れたね」


 初めてだと言うのにパムは黄身を潰すこともなく、殻が入ってしまうこともなかった。

 巴とセレナが拍手するとパムは体を振って照れた様子でありながらも、満面の笑みを浮かべる。


「次はミルクを入れるよ」


 圭人がパムに計量カップを渡し、必要な量が書かれているラインを教える。

 パムが真剣な表情でミルクの分量を測る。


「これでいい?」

「いいよ。測ったミルクをボールに入れてね」


 パムがミルクをボールの中に移す。


「次は混ぜるよ」

「うん」


 圭人は泡立て器をパムに手渡す。

 パムが卵とミルクが混ざり合わさるまで混ぜ続ける。


「この袋をハサミで開けて」


 圭人はパムにホットケーキミックスを手渡す。

 パムは目を輝かせながら袋を受け取る。


「はい」


 パムは真剣な表情でホットケーキミックスの袋を開けていき、袋の中にあるホットケーキミックスを一袋取り出す。


「さっき混ぜた卵とミルクが入ったボールの中にホットケーキミックスを入れよう」

「うん」


 パムがホットケーキミックスを入れる。


「軽く混ぜるだけでいいよ。粉の塊が消えるまで混ぜるとやり過ぎだよ」


 ホットケーキを作る場合、粉ぽさが消え滑らかになるまで混ぜたくなる。しかし、ホットケーキミックスを混ぜすぎると小麦粉の中にあるグルテンが多く発生してしまい、生地が膨らむのを邪魔してしまう。

 ホットケーキの焼き上がりが薄っぺらくなっている場合は、粉を混ぜ過ぎている可能性がある。


 圭人がボールを持つことでパムが泡立て器でホットケーキミックスを混ぜ合わせる。


「圭人お兄ちゃん」

「うん、ちょうどいい混ぜ具合だね」


 パムが笑顔で頷く。


「次は焼くんだけど、フライパンが熱いから気をつけてね」

「はい!」

「コンロまで移動しよう」


 パムがホットケーキの生地が入ったボールを大事そうに抱える。

 圭人はパムが踏み台にしていた台をコンロの前にまで持っていくと、パムがコンロの上にあるフライパンを見下ろせるようになる。

 パムが台の上に乗ったところで、圭人はパムが持っているボールをコンロの近くに置かせて、お玉を渡す。


「生地を少し高めから落とすときれいな円になるからね」


 パムがなん度も頷く。

 圭人はフライパンをコンロに置くと火をつける。

 油を少し入れてフライパンの温度が上がったところで、圭人はパムに生地を入れていいと指示を出す。

 パムが真剣な表情でお玉を動かし、フライパンに生地を流し込む。


「パム、とても上手。焼けるまで少し待とう」


 パムは頷いてホットケーキが焼けるのをじっと見ている。

 圭人は巴とセレナがいる方を振り返って、三人で笑顔になる。

 ホットケーキの生地に気泡ができてきたところで、フライ返しをパムの手に持たせる。

 圭人は初めてということもあり手伝うことにする。

 生地のひっくり返し方を教えて本番。


「ほっと」


 生地がきれいにひっくり返る。


「あとは焼けるのを待つだけだよ」

「うん!」


 ホットケーキが焼けたところで皿に取り出す。


「焼けた!」

「最後にデコレーションしよう」


 冷蔵庫に入れていたホイップクリームを取り出し、絞り器にクリームを詰め込む。


「好きなだけクリームを使っていいよ」

「本当!?」

「うん」


 作ったジャムに、少し残しておいたラズベリーとブルーベリー。

 パムの好きなようにデコレーションさせる。


「できた!」


 完成したホットケーキはクリームたっぷり。

 白いクリームにラズベリーとブルーベリーの赤と紫が生える。


「上手にできたね」


 圭人はパムを褒めつつナイフとフォークを渡す。


「出来立てを食べてみて」

「いいの?」

「もちろん」


 パムは笑顔で頷くと、ナイフとフォークを使いホットケーキを切る。

 パムが大きな一口でクリームたっぷりのホットケーキを頬張る。


「美味しい!」


 パムは口にクリームをつけながらとてもいい笑顔。

 圭人はパムの口についたクリームを拭ってあげながら、パムと同じように笑顔を浮かべる。



——————


新作(SF)の投稿を始めました。

良ければ読んでいただけると嬉しいです。

ユニバース ロイヤー 〜スペースコロニーに住む学生は宇宙をかけるギルド員〜

https://kakuyomu.jp/works/16818093090976238317


カクヨムでは、12月26日から「積読消化キャンペーン」が実施されています。

フォローしている作品を、10エピソード以上読んだ方にアマギフが当たるそうです!

良かったらこの機会に「鏡でまじわる異世界キッチン」のフォローをお願いします!

詳細はこちら:https://kakuyomu.jp/info/entry/tsundokucampaign

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る