会議室

天川裕司

会議室

タイトル:会議室


「…へへ♪私との浮気現場、社内掲示板にもSNSにも流してやる♪ざまぁみろ」


私はここの課長・成田さんと浮気していた。

それも彼の方から強引に私に迫ってきて

嫌がる私を無理矢理…

それから仕方なく関係が始まり、

だんだん私もその気になって、

確かに悪いこととは知りながら

そのまま今日まで来てしまった。


でも彼の方ではやっぱり良心が芽生えたらしく

今の奥さんに悪いからと、私を冷たく突き放し、

挙句、捨てたんだ。


激しく…あんだけ激しく迫ってきたくせに、

私がつい彼のほうに心を開こうとした瞬間、

彼は態度を豹変させて私を突き落とした。


もう私は何がどうなっても良いと思い、

この会社を辞める勢いで今日その事をした。


これまで彼と2人で撮ってきたスナップ写真。

これを社内連絡用の電子メールと

この会社のホームページ、その関連ページのSNSに

全部ばらまいてやった。


すると、ばらまいた直後、

その成田さんから私は会議室に呼ばれた。


(会議室)


「…はい、なんですか?」

成田「イイから座って」

席に座って彼と向かい合わせ。


成田「…自分のしたことがわかるね?」

「……なんのこと?」

成田「SNSを使って、この社内掲示板でもいろいろ写真ばらまいたろ?なんであんな事した?」

「……」


彼はひどく冷静な口調。

確かに怒ってるふうだが、

そんなに怒ってるわけでもなく、

それより何か出会った頃の、

あの清々しい印象がそのまま飛び込んできて、

私は一瞬その時を思い出し、

彼のその印象を好いてしまった。


何か知らないけど、とても静かで、清々しくて、

好青年みたいで…また好きになりかけた。

でも…


「課長が悪いんじゃないんですか?あの時あれだけ私に迫ってきたくせして、急に捨てるなんて!そんなだったら、初めからあんな事しなきゃよかったんですよ」


成田「…ああ、その通り。君の言う通り。俺が悪かった。…でもやり方ってあるだろ?何もこんな事しなくても、俺に直接怒りをぶつけるとか、相手が俺だけなんだから、俺だけにその話をするとか」


確かにやり過ぎだとは思った。

でも、もうやってしまった事。仕方がない。

それに彼はこんなこと言ってるけど、

私の気持ちはどうなるの?


彼だって、自分勝手じゃない。

私だって自分勝手にして良いわよね?


でもそこまで考えた時、ちょっと不思議に思った。


私は今日、誰よりも早く来て、会社でその事をした。

写真はまぁまぁな量だったけど、反映されて

知られるまでにそれなりの時間もかかる?


それにいつもなら成田課長はこんな朝早く来ないし、

どうして今ここに居るのか?

私の目の前でこんなこと言ってるの?

…よくわからなかった。


それから課長は自分の反省も確かにしながら、

それでもこんなやり方はやめて欲しかった、

自分に直接言ってきて欲しかった、

怒りをぶつける先は自分だけにして欲しかった、

そんなことを何度も言ってきて、

それなりに時間が過ぎてゆく。


(時計を見ながら)

気づくと30分…1時間が経過している。

そして…


成田「ふう…。こんな所に急に呼び出してすまなかった。俺は自分のした事でもあるし、君がした事を恨んでない」


成田「それに自分が悪いんだし、君に迷惑をかけたし妻にも迷惑をかけたし、これから生涯かけて、自分にできる限りの償いを…」


そんなことを聞いているうち堪らなくなった。


「もうイイですよね?」

そう言って私はサッと席を立ち、

会議室を出ようとした。


するとドアノブを回そうとする前に

向こうからドアノブが回され、

「おっ??なんだ居たのか、びっくりしたw」

「…!?」

驚いたことに成田さんが入ってきたんだ。


「…え?!」

瞬間、訳がわからなかったけどすぐ私は振り向いた。

でもそこに居る筈の彼はもう居なかった。


その午後。成田さんは屋上から飛び降りた。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=P5R-gnOIM9U

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会議室 天川裕司 @tenkawayuji

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