第18話
太陽が存在感を増し、少しずつ夏へ舵が切られているのを感じる、夏至の陽光は輝いていた。あと数十日で夏休み、その言葉で私は頑張れる。
夏休みに何をするか、と聞かれたら答えは一つだろう。ほかでもない芽衣とどこか行きたい。
そして、この喉の奥に詰まったかのような感情をすっきりさせたい。そのためにも、絶対に思い出させないと。
そんな感情に支配されていた中、あの人と再会した。
「にしても珍しいですね、久遠さんが花を買いにいきたいなんて」
隣にいる芽衣はそう言っていた。
失礼な。私だって花は好きなんだぞ、と言おうとしたけど、やっぱりやめた。
「最近暇だからね~、花でも育てよっかなって」
私はバツが悪そうに頬をかきながら、ゆっくりとそう呟く。
この言葉は本当だ。今日の目的は彼女と花を見て、何を育てようかといった日だ。
「だから、私を誘ったんです?」
「そう、その通りだよ。花に詳しい芽衣なら、きっと良いものを言ってくれるだろうと思って」
私の言葉を聞くと、彼女は少し微笑んだ。
「それなら任せてください、私が久遠さんにぴったの...」
言い切ろうとした時だった。
プルルルル
彼女のポケットから着信音のような音がした。
芽衣は発言を途中で止まらせ、急いで手を動し、スマホを出していた。
「あ、ちょっとまっといてください。姉さんからです」
画面を確認した数秒後、こちらへ向きそう彼女は言った。
「わかった」私がそう返事をすると、スマホに耳を当て、彼女は少し私から離れてった。
私はふと周りを見渡してみる、とは言ったものの、これといった特徴のない通りだ。空気が澄んでいて、街の活気は程よい...ぐらいしか感想が出ない。
数分後、彼女が戻ってきた。表情は曇りと晴れを掛け合わせたような、なんとも言えない感じだった。どうしたの?その問いより先に、彼女が口を開いた。
「姉さんが帰国したらしくて...迎えにいかないといけなくなりました」
思わず叫びそうになった。つまりそれはもう、今日は駄目ってこと?。
私は彼女の言葉に唖然としていた。
___それくらい自分でなんとかできないんだろうか。そのようなあまり性格が良くない事を考えてしまったが、そっと心の奥にしまった。
「..わかった」
自分でもわかるほど、私の声は引きつってきた。
「ほんっとごめんなさい...また、買いにいきましょ」
彼女は深々と頭を下げた後、申し訳なさそうにそう言っていた。
「いいよ、大丈夫。またいこーね」
私はできる限りの笑顔を作る。彼女は私の笑顔を見た後、ゆっくりと駅のある方向へ歩いていった。
私は手を精一杯振り、彼女がいなくなるまでずっと背中を見つめる。
今日は残念だ。けれどまたもう一度ある、その事実が私を和ませた。
一瞬見えた、見慣れた後なんて気にせず。
♢♢♢
花を買う気にはなれなかった。いや、花自体と距離を取りたいというわけではない。ただ、今日はあまり気分が乗らないだけだ。
家に帰るか、と言われれば私は首を横に振るだろう。だって、せっかく外に出たのに何もしないで帰るなんて、ちょっと気が引けるから。
とりあえず私は喫茶店か何かに行こうと画策した。何か行きたいとこがないか考える為、そして落ち着きたかったから。
「どうしてこんなことでモヤモヤしてるんだ...」
自分の感情がやけに面倒で、億劫であるものに感じる。
私はある喫茶店の椅子に座り、目の前にある珈琲を見ていた。
そんな時だった。
「...く、久遠?」
隣から声が聞こえた。えっと声を上げながらそっちを向くと。
私の初恋であり、私が初めて失恋した相手である。
「琥珀...先輩?」
紛れもない、
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