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 健康に問題は無いということでその日の内に退院し、翌日も普通に登校した。

 放課後、エルドレットは再び教室を巡った。

 だがどこも空きか、違う生徒がいるだけ。今日見つからなかったら直接シンシア・ガルデライトの家に行くしかないかと思った。自分の好奇心はともかく、助けてくれたお礼をしなければいけない。

 建物の端にある最後の教室に来た。ドアを開けて中に入る。

 窓から夕陽が差し込む教室は、しんと静まり返っていた。だから誰もいないのかと思っていたのだが、一番前の真ん中の席に「彼女」がいた。


 彼女は熱心に本を読んでいた。髪色は金髪だと聞いていたが、想像していたより暗めの色だ。それを頭の後ろの低い位置で一つに結んでいる。貴族の家に養子として迎え入れられたというが、貴族というよりは生真面目な一般家庭の生徒という印象を受けた。

「君が、シンシア・ガルデライト?」

 声を掛けると、彼女はビクッと肩を震わせて顔を上げた。

 薄い灰色の目は丸くぱっちりとしていて、可愛らしい顔だったのだが、すぐに眉間にしわが寄り、警戒するような表情になった。

「はい」

 声音も淡白だ。

「初めまして。エルドレット・ダミアだ。昨日は助けてくれてありがとう。お礼を言いたくて君を捜していたんだ」

 すると彼女は慌てて立ち上がった。

「シンシア・ガルデライトと申します。無事なら、良かったです」

「君のおかげだ。君こそ、大丈夫かい? 昨日あの場にいた生徒から、僕の傷を治す時のことを聞いた」

 皆まで言わずとも、エルドレットが何を言いたいか分かったのだろう。

「私は、平気です。すぐに治るので」

「でも一歩間違えたら亡くなってしまうほどの大怪我だったはずだ。いくら固有魔法でも君の負担は大きいだろう」

 するとシンシアは急ぐように本を閉じた。

「本当に、大丈夫ですので気になさらないでください。では、失礼します」

「あ、ちょっと!」

 くるりと背を向けて早足で教室を出ていくシンシアの後を追った。彼女は廊下の角を曲がるが、エルドレットが着いた時には彼女の姿はどこにもなかった。

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