第26話


「違うの、違う、」

「なに、やっぱ気持ち悪いか、抜こ」

「違うのッ‼︎」

ガニと開いた脚で勇太の逞しい腰を抱く。

 離されたくない抜かれたくないと力を込めれば、私の中の彼もその勢いを取り戻す。


「どした、言うて…」

「あ…の、妊娠、したら…もう、シない?」

「…うん、千里に負担掛けたないから…できれば仰山ぎょうさん欲しいけど…千里がしんどいから」

「違う、赤ちゃんできたら、も、もう…抱いて…くれない?」

「へ、」

勇太はぐるぐる巻きの腕を下ろさせて、涙に濡れる私の顔を覗き込んでは耳を澄ませた。


「せ、せっかく…エッチな…感じ、意見とか…言えるように…なったのに、子供できたら、もう、死ぬまで、ずっと、え、エッチ…シてくれない…?」

「…んなわけ…さっきも言うたやん、いや、千里がええ言うなら…なんぼでも抱いたるよ、俺の好みにも合わしてもらうし、時間がある時はじっくりシてもええ…」


 最初からこれだけ条件を付けたりルールを決めれば良かったんだ。

 開放された勇太は雄っぽくて猛々しくてカッコいい、私はその彼を封印してしまうのが惜しくなったのだ。

 そして子育てに気持ちが行っていると彼はまた風俗を利用するかもしれない。

 本人の意思とは関係無く私が信用できていないから、まだ私に繋ぎ止めておきたい。


「えっち、もっと…勇太と、シたい、」

「うん、うん……千里、子作りは…もうちょい先にするか?」

「うんっ………ごめんなさい、子供も産みたい、勇太の子供、産んであげたいの、でもっ…まだ、勇太と、ラブラブしてたいッ…ごめんなさ」

「ええて、用済みになんかせぇへんて。よう言うてくれた……ほんなら…せや、ちょい離すで」


 勇太はやはりと一旦引き抜いて、私から離れてクローゼットの自分のスペースから宅配便の箱を取り出す。

「すんなりできるとは思うてへんかったから…こんなんも買うててん」

「…なに?」

「オモチャ、…知ってる?」


 彼が手にした透明な箱の中には不思議な形をした張り型が収められていて、カシャカシャと開封すれば色もスカイブルーで可愛らしい色味だった。

「ば……あの、」

「ちょっとずつ開発したろう思うてた…単3電池別売り……ちょっと待ってな」

「う、ん…」

 ぽこぽこと丸が連なった長い棒と接木か枝分かれのように根本から生えた長丸の突起、なんとなく用途は分かるが正確な使用方法は分からない。


「おまたせ………ん、」

 カチとスイッチを入れれば長い棒がぐるんぐるんと円を描く。

 突起の方はぶるぶると震えるだけで…興味深く眺めていると勇太は吹き出して笑って、

「当てるよ」

と私の中心へとそれを伸ばした。


「え、痛い?」

「痛ぁないやろ、俺のより小ぃこいやん」

「そ、そっか…勇太の方が大きいもんね…」

「…嬉しい言い方やね…千里、キスしよ」


 手はまだ拘束されたままうんと目を閉じれば振動に驚いてすぐ開く。

 けれど勇太は私の頭を抱えて手探りでねじ込み…

「ゔわァ⁉︎」

と素の声が漏れる。


「千里、キス、」

「あふ、」

「気持ちええな?な、」

「ッ…分かんない、は…あ、」

「俺のとどっちがええ?」

「勇太の、」


 さっきまで勇太が入っていた所にシリコンだろうか滑らかででも冷たい棒が侵入する。

 入ってしまえば円運動はあまり感じられなくて、壁をコンコン叩くのがもどかしかった。

 外側からの刺激が思った以上に直接的すぎて「当てられたくない」と腰を捩り避ける。


「千里、当てようとしてんの?」

「ッ違…」

腰を止めれば勇太はよく当たるように押し付けてきて、果たしてナカなのか外なのか分からないが興奮が一線を超えようとしていた。

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