第2話 勇者一行




「諦めるのです。奏斗かなとさん。わたくしたちは所詮、世界の歯車の一つ。定められた場所から外れる事は許されないのです。あなたは勇者なのです。勇者は魔王を討伐する事が役目なのです。全うするのです。わたくしだって、とてもとてもとても嫌なのにこうして五年も付き合ったのですよ。ああ早く癒院に帰りたい」




 僧侶であり性別不明の十歳の子どもである聖月せいげつは、生気を失った瞳をひたすらに奏斗へと向けた。

 途中から奏斗たち勇者一行に入った聖月は、五歳にして世に絶望して、世間と一線を画しひたすら己を癒す事に特化した癒院に入るも、類まれなる治癒能力を持っていた事により勇者一行に無理矢理組み込まされたので、いつもいつもいつも愚痴を溢しまくっていた。




「何言ってんだ。奏斗も聖月も。闘って、闘って、闘いまくるのが俺たちのやりたい事だろうが。ああ。早く、強いやつと闘いてえ。他国の魔王はどんだけ強いんだろうな」




 魔法使いであり二十五歳の女性である芽衣めいは、奏斗と幼馴染であった。

 魔法使いなのだが拳を振るう事が好きで、何故武闘家ではなく魔法使いになったのかと周囲が疑問をぶつける度に、精霊に好かれた為に魔法使いになったのだと得意満面の笑顔で以て答えている、熱血根性の持ち主だ。




「いや。考えを改めよう。奏斗が抜けたいってんなら、そうさせた方がいいんじゃないか。ただでさえ、繊細な心の持ち主なんだ。今迄頑張って耐え忍んできたが、これからもそうできるとは限らない。心が壊れてしまうかもしれないんだ。ならばいっそ、勇者一行から外れた方がいいのではないか?」




 武闘家であり百歳の雪男である箕柳みやぎは、奏斗と芽衣の村に訪ねて来て二人と一緒に八年の修行に励み、三人で勇者一行を結成した。

 村を訪ねて来た当初は、拳を振るう度に氷漬けの全身が粉々になっていたのだが、修行の賜物により、今は時折しかそうならない。

 暑さと熱さは村を訪ねる道中で克服したとの事。なので、温泉にも入れる。











(2024.11.27)



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