第5話 もしかしたらカンストから始まる物語り
「それじゃ、行こうか?」
「行こうかって何処に行くの?メルさん」
なにやら、ブツブツとメルさんが考えこんでいる。
「そのケインくん、メルさんと言うのやめない? 確かに私は400歳越えのお婆ちゃんだけど? 見た目も心も若いつもりなのよ?」
若返りの魔法で驚いて、スルーしちゃったが400歳を越えているなんてどう言う事なんだろう。
「本当に400歳を越えているんですか? 見た目は14、5歳にしか見えないけど」
「うふふ、そうね……まぁ私の秘密はおいおい教えてあげるよ。だけど、本当の年齢は兎も角、そんな若い子に『さん』は無いでしょう? だから、メルもしくはメルちゃんって呼んで欲しいな?」
流石にいきなり呼びつけは出来ない。
「それじゃ、メルちゃん……これで良いかな?」
「いいわよ! それじゃ行くわよ! そーれっ!」
メル……ちゃんが呪文を唱えると目の前にドアが現れた。
「あの、何処に行くんですか?」
「良い所……ってほら行くわよ! ケインくん」
メルちゃんに手を引っ張られ、一緒にドアをくぐった。
◆◆◆
あたり一面真っ白な空間。
霧が立ち込めていて、奥には光り輝く神殿が見える。
「メルちゃん、此処は一体?」
「うん、女神イシュタスの神殿……」
えっ、女神様の神殿?
「あの……メルさん、なんでこんな所に来れるの?」
メルさんの顔がちょっとだけ意地悪そうな笑顔に変わった。
「メルちゃん! そりゃ メル.ミュートス.コハネだからかな?」
人差し指を頬っぺたにあててウィンクしているけど……
「大昔の賢者様の名前……」
「そうそう、それが私なの。勇者パーティに居たんだから女神にコネがあっても可笑しくないでしょう?」
「そういう物なのですか?」
いや、幾ら勇者パーティに居たとしても女神にコネ?
可笑しい。
だけど、此処はどう見ても神界にしか見えない。
幾ら考えても無駄だ。
うん……止めよう。
◆◆◆
「入るわよ、女神イシュタス」
勝手に神殿の扉を開けて入っちゃったよ。
良いのかな……
「此処は神聖な女神の神殿、人間が立ち入って良い場所では……」
「いちいち能書きが煩いのよ! そう言うの要らないからとっとと出てきなさいよ! 身内みたいなもんでしょうが」
「あっ、メル……何事です。幾ら貴方でも……」
え~とこの金髪の綺麗な人が女神イシュタス様だよな。
跪かないと……
「散々ぱら、迷惑掛けられたのは私よ? 正直言わせて貰うと貸しが沢山あり過ぎる気がするんだけどなぁ……どうかなぁ」
「私は女神です! 女神の願いを聞く事は人間にとっての誉。 そこの彼をご覧なさい! 普通は私に会えただけでも感動しひれ伏すものなのです」
「あっそう? 私も昔はそうだったわ。だけどさぁイシュタス様ぁ~この400年間、かなり私迷惑掛け続けられてきた気がするのよ? かなり色々と骨をおってあげた気がするんだけど? 感謝の気持ち一つないのかなぁ~。偶には私の願いを聞いてくれても良いんじゃないかな?」
なんでだろう?
女神様よりメル……ちゃんの方が立場が上の様な気がする。
「解ったわよ! そう言われたら仕方ないわ、大抵の事は叶えてあげるから、いちいち過去を持ち出さないで」
「そう、それじゃこの子のジョブを『勇者』に交換して」
「メル……幾ら貴方の願いでもそれは出来ません! 世界が平和になった今、勇者、聖女、剣聖、そして貴方の賢者のジョブは必要が無い物です……もう誰にも授けないと決めたのです」
なんだかメルちゃんの目が怖くなった気がする。
「へぇ~世の中平和なのね……そんなに平和なら、もう私が貴方の願いを聞く必要は無いよね? こんな恩知らずもういいわ。 次になにか言って来ても無視するよっ! もし、私が生きている間に魔族と人間の間で戦争が起きたら魔族につきますよ! 魔王の方が正直いって貴方より話になるから……それじゃイシュタスこれからは敵だね……友達だと思っていたし、母親の様に思っていたのに、さようなら……」
「剣聖なら……」
「はい、今なんて?」
「流石に勇者は無理! 幾ら言われても駄目! だから、剣聖で手をうちませんか? 幾らメルのお願いでも勇者は駄目なの! 他の存在と揉めるから」
「解ったよ。ありがとうイシュタス様……それじゃお願い」
「解ったわ……それじゃ、そこの……ケイン、貴方のジョブを剣聖に変えてあげます。手を出しなさい」
流石は女神様、名前を名乗らなくても解かるんだな。
え~と。
こんなんで最強のジョブが手に入って良かったのかな。
「はい」
女神様の手を取った瞬間、体が熱くなり自分でも力が漲ってきたような気がした。
「ふぅ~これで終わりました。これで貴方のジョブは四職の一つ剣聖です! 良いですか四職のなかで一番下とは言え至高のジョブの……」
「ああっ、そういう事は私が説明するからよいわ……また、今度お茶でも飲みにくるから、それじゃぁね、イシュタス様」
「ちょっと……待ちなさいっ!」
俺は、メルちゃんに手を引っ張られ神界を後にした。
◆◆◆
「あの女神様の扱い、あれで大丈夫なんですか?」
「本当は良くないよ! だけど、私は女神イシュタスには沢山の貸しがあるから問題無いわ……此処だけの話、私沢山イシュタスの尻ぬぐいをしてきたから、この位許されるわ……もしかしたら後で意地悪されるかも知れないけど、そんな物よ」
相手は女神様。
本当に良いのかな?
それはそうと、此処は何処だ?
「所でメルちゃん……ここ何処?」
「ここはね……とある場所で、魔王に従わない魔族や魔物が居る場所なの?」
「とある場所ね……」
一体何処だろう?
「それじゃ行こうかな? ケインくん私から離れないでね……行くよ~大量破爆裂呪文、皆殺しバージョーーーン」
メルちゃんがそう言うと頭上に小さな太陽みたいなものが現れた。
それが近くの森に落ちていき、轟音がおきた。
ドガッがガガガガーーンという大きな音がし、目の前が光で見えなくなり……気がつくと大きなキノコ雲みたいなものが上がっていた。
「メルちゃん……これは」
「折角、良いジョブを貰ったんだし、今度は経験値でしょう? 魔国でやると、魔王ルシファード様が煩いから、魔王が絡んでない此処で……大丈夫?」
「体が物凄く痛い……です」
全身に痛みが走り、俺はその痛みに耐えきれず意識が遠のいていった。
しかし、魔王様って何?
メルちゃん、魔王とも知り合いなのかな。
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