第4話 リターン
宿に戻ってきた。
俺の懐を知っている宿屋の主は…….
「そのままの部屋なら1週間だけ今のままの金額で良いぞ、ただ、そこから先はもう一人追加分を払ってベッドを追加するか、大き目の部屋に移動してくれ」
「ありがとう」
「お互い様だ」
凄く優しい対応だ。
普通なら今日から追加料金を取られる。
俺はメルさんと頭を下げ、自分の部屋へと向かった。
「ケインくんは本当に器用なのね! 異世界料理、これはオムライスね……本当に懐かしいわ」
異世界料理。
メルさんは知っているんだ。
知らない人も多いのに。
「メルさん、異世界料理を知っているんだ」
「ええっ、昔一緒にパーティを組んでいた仲間が転生者でだったの。よくハンバーグやオムライスを作ってくれたんだ。懐かしいなぁ……うんうん、本当に懐かしい」
そう言いながらメルさんは凄い勢いで涙ぐみながらオムライスをパクついていた。
◆◆◆
夜になった。
「それじゃ、メルさんは、こっちのベッドを使ってください!」
「それでケインくんはどうするの?」
「俺は、床で寝るから良いよ! まぁこれでも冒険者の端くれだから気にしないで」
「いえ、幾らなんでも、それは悪いわよ! 一緒に寝ましょう! 」
幾ら年上とはいえ、いい大人の男女が一緒に寝るのはちょっとまずいよな。
「いや、それは……その……」
「別に良いじゃない? こんなおばさんだかお婆ちゃんみたいな女に手なんか出さないでしょう?」
「それはそうだけど……」
結局、メルさんに押し切られ一緒に寝る事になった。
寝ながらメルさんが俺に聞いてきた。
「そう言えば、ケインくんは何かやりたい事があるの?」
「俺はちゃんとした冒険者に成りたいんです」
「ケインくんにとってちゃんとした冒険者ってどんな感じの冒険者なのかな?」
「俺のなりたい冒険者は、ちゃんと討伐が出来、人を助けられるような冒険者です……ですが、もう手遅れ……それは解っているんですが、どうしても諦められなくて……」
「そう、ケインくんは、そういう冒険者になりたいんだ」
「はぃ」
誰かが横に居るってこんな良い事なのか……
気がつくと俺は眠くなり、そのまま眠ってしまった。
◆◆◆
「おはよう……ケインくん、ふわぁ~あ眠いね!」
え~と、これはどう言う事だ?
昨日、俺はメルさんと一緒に寝た筈だが……
俺の横で寝ているのは……どう見ても若い。
背は低く、水色の髪。
ここまではメルさんと同じ。
だが、凄く若く15歳位の少女に見える。
シャギーのボブカットに大きな白いリボン。
大きく澄んだ目。
ミニスカートのピンクのワンピース裾には可愛らしいフリルがついている。
羽織っている白いローブには胸元に赤いリボン。
「え~と君だれっ?」
「ケインくん、何を言っているのかな、私よ私っ!」
「まさか、メルさん」
「そうよ、メルよ? 他の誰に見るのかな?」
「え~と」
「まぁ、色々あってね、少し老けた姿をしていたのよ! 尤も本当の年齢は400歳を超えているからお婆ちゃんなのは本当なのよ」
「どう見ても10代にしか見えないんだけど」
「まぁちょっとした理由で、歳を取らなくなくなったの……それはおいておいて、ケインくんも自分の姿見て」
俺の姿?
ガラス扉に顔を映してみた。
嘘だろう……俺も若返っている。
何故、こんな事が起きているんだ。
「これは……」
「どうかな? これなら、今からでも、なりたかった冒険者を目指せるよね?」
「たしかにそうだけど、何故俺は若返っているのかな?」
「それは私がちょちょいのパッパと魔法を掛けて若返らせたからね……それじゃケインくん。今日から修行つけてあげるから頑張ろうね」
うん、自分に何が起きたのかさっぱりわからない。
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