第44話 目覚め(1)

《ピシ!》


《パシン!》


 うぅ、ううう……。な、なんか痛い……。痛いよ……。だ、誰? 誰だろうか? 僕の頬を叩いている? い、いるのかな……? でも僕の頭……後ろ、後頭部が何だか柔らかい気がするけれど……? 


 まあ、こんな感じだよ。僕は誰だか分からないけれど。自分の頬を誰か叩いているみたいだから? 僕の大きな顔のほっぺたが更に大きくなったらいけないので。頼むから僕の頬をペチペチではなく、ナデナデしてよ、と思えば。


「あなた~!」

「仲穎ー!」

「仲穎君~!」

「上田君~?」

「早く起きろ! デブ!」

「上田先輩、早く起きてよね~?」


「「「仲穎!」」」


 僕の名前を沢山の人達が呼びながら結構強く頬をバチンバチンと叩くから。僕の安眠は妨害されている最中……。


 そう、今の今まで僕はぐっすりと睡眠をしていたのに、また虐めで強引に起こされた。


 だから僕は致し方がなく徐々に目を開けていくのだった。



 ◇◇◇



 ……ん? あれ?


 僕のぼんやりとした視界の中に──。僕を覗き込むように見詰める沢山の人影が見えた。


 だから僕は一体誰? 誰なのだろう? と思う。


 そして何故だか分からないけれど、僕の身体に妙な倦怠感……。


 そう疲れ目、疲れ肩の疲労感と、何故か僕の身体中が痛くて仕方がない。


 だから僕は何故? 何故だろう? と思いつつ目を開ける。まあ、開けてみた。


「あっ、弁姫さま……」


 僕の瞳に最初に映った人は、毎夜僕を尋ねてきては𠮟咤激励してくれた異世界からの訪問者らしいエルフの女神さまだった。








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