第11話「大海蛇の襲撃」
船着き場跡の水の中から現れたのは、体長が一〇メートル以上もあり人間の胴より太い身体を持つ銀色の鱗で覆われた怪物でした。確か、以前図鑑で読んだことが……。
「あれは
わたくしは皆様に向かって声を上げました。
「
マーシウ様は盾を構えながら
「……
「……
マーシウ様とアン様が
「あの、ファナ様……」
「どしたのレティ?」
「ご存じかもしれませんが、
わたくしがそうお伝えするとファナ様の瞳が輝いたように見えました。
「やっぱそう?! 多分そんな気してたんだよね!」
「ファナ嬢、いつでも
「ディロン撃っていいんだね? わかった!」
ファナ様はローブの袖をめくり
「レティ嬢、徐々に向こう側の通路へ移動を」
「ディロン様?」
「
「分かりました……」
――わたくしは様子を見ながら通路に向かいつつ戦士の方々に目を向けます。皆様苦戦されているご様子……マーシウ様は
(戦いになるとわたくし本当に無力です……)
その時、アン様の放った矢が
(あ……これは……当たるのでしょうか?)
凄い速さで跳ねてくるはずのガレキの動きがゆっくりに見えました。そして自分に当たるのだろうなと冷静に考える自分と恐怖で動けない自分が居ました。
「……
わたくしの目の前にシオリ様が走り込んで来て、ガレキに向かって魔法を唱えました。わたくしとシオリ様は淡い光の球体に包まれ、飛び跳ねてくるガレキや破片は光の球体に当たると砕け散りました。
「レティ大丈夫?!」
シオリ様は防御魔法でわたくしを護って下さったようです。
「は、はい……」
わたくしは返事をするのが精一杯でした。
「ごめん、マズった!」
アン様がこちらを心配そうに見ています。シオリ様は「大丈夫」と手を挙げて合図しています。
「好機だ……ファナ!」
マーシウ様は合図すると
「
ファナ様のローブがふわっと膨らんだ次の瞬間、両手に持った
「ファナ、これ効きすぎじゃないの?!」
「そんなの分かんないよアン姐!」
「こいつデカいな……全部で二〇メートルはありそうだ」
のたうちながら壁や石畳、天井にぶつかった為にあたりは崩れ落ちてきます。シオリ様が防御魔法で護って下さいますが、これは危ないです……そしてファナ様が
「もういっちょ行くよ……
「ファナま……」
再び稲妻が
「待てって言おうとしたんだが……」
「でもやっつけたよ?」
マーシウ様は苦笑いしていました。アン様が倒れた
「大丈夫、殺ったみたいだ」
「はぁ……まあ、なんとかなって良かったけどな……」
マーシウ様はホッとして溜め息をついています。
「まさか弱点らしい
ディロン様がそう仰るとファナ様は「えっへん!」と両手を腰にあてて胸を張っています。
「ねえ、みんな? よろしくない報告なんだけど……」
周囲を調べていたアン様が暗い声で仰いました。
「さっき色々崩れたせいで、私らが入ってきた通路が崩れて塞がってるよ……」
――わたくし達は慌ててアン様の元に駆け寄りました。仰る通り壁や天井が崩れて通路が埋まっていました。
「だめだ、これだけ崩れてたらちょっとやそっとじゃ取り除けないし、下手に動かしてさらに崩れてきたらヤバいぞ……」
マーシウ様は深刻な顔で崩れた通路を見つめておられます。
「他に道が無いか調べるよ、通気口とかあればいいけどね……」
皆様手分けして辺りを調べます。わたくしも何か方法が無いか考えなければ……。
(ここは船着き場なので海に繋がっている可能性が高いのですよね……塞がっていなければ。でもどうやって……あ)
わたくしは水際にある壊れた船のようなものを調べます。大きさは全長が七メートル、幅が二メートルほどです。真ん中あたりに屋根や壁が壊れた船室のような部分があり、台座が置かれ舵のような輪が据え付けてあって輪の真ん中に何かをはめ込むくぼみがありました。
(所々壊れていますが浮いているということは船として機能しているということですよね? そしてこのくぼみは……)
わたくしはくぼみに魔術結晶を取り付けてみました。すると台座から「ぽうん」という音がしました。そして船自体が振動し「フオンフオンフオン」という音が鳴り始めました。その音で皆様がわたくしの方へ集まってこられました。
「ちょっと、レティこれは?」
「アン様、この船が使えるか調べてみまして……魔術結晶を取り付ける部分があったので置いてみたらこうなりました」
皆さん一斉に顔を見合わせてからわたくしの方を向いて「マジ?!」と仰って船に乗ってこられました。
「レティ動かし方分かるか?」
マーシウ様が真剣な表情でわたくしを見つめておられます。
「ちょっとやってみますね……」
台座には例の鏡の様な金属板が付いていて光る古代文字や記号が浮かんでいます。
(恐らくこの輪は舵ですよね。金属板の文字は……古代数字が〇から五まであります。とりあえず一を選びましょうか?)
わたくしは光る文字の「一」の部分に指で触れました。すると「フオンフオンフオン」と鳴り続けていた音が少し大きくなり、船がゆっくり動き始めました。皆様「動いた?!」などと驚かれています。次にわたくしが「二」に触れると少し音が大きくなり、船が速くなった気がしました。
(なるほど、これは速さを操作するという事ですね)
そして輪を左右に回すと右に左に船が動きます。しばらく動かしてみましたがとりあえず問題なさそうです。
「なんとか動かせそうです!」
わたくしのその言葉に皆様は喜びの声を上げられました。ディロン様が
ディロン様が再び
――しばらく船を進めて行くと、水面の波のうねりが大きくなってきました。波音も洞窟に反響して徐々に大きくなってきましたので、やはり海に繋がっているのでしょうか。
「ねえねえレティこの船結構ゆっくりだね、速さはもっと出ないの?」
「ファナ様、多分出ると思いますが暗い洞窟ですので……波も強くなってきましたし安全に行きましょう」
こうしてわたくし達の乗る古代の船(?)は海に繋がると思われる洞窟の暗闇を進んでいきます……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます