第7話「それが追放された理由」
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冒険者パーティー"
「マーシウ、いい席取ったねぇ」
「レティがこういう場所は初めてだろうからなるべく端が良いと思ってな。まあ、俺も騒がしいのは苦手だしな」
マーシウ様とアン様は先ほどから上機嫌でお料理とお酒を沢山召し上がられます。両手でお料理を掴んで口いっぱいに頬張っています……やはり前衛として戦う方たちはそれだけ栄養補給が必要なのでしょうか。
「あの二人を見てたらそれだけでお腹一杯になってしまうわ、レティも遠慮なく食べてね。この払いはこの前鑑定してもらった物を換金したお金よ。あなたの鑑定のお陰で交渉もスムーズに行っていい値段になったから、あなたへの分け前でもあるから」
「え、そう……なのですか?」
「そうよ、だから遠慮なくどうぞ?」
シオリ様はそう言って微笑むと果実酒をひと口呑んで幸せそうな表情をしていました。わたくしも遠慮なくお料理をいただきます。
「この飲み物も美味しいですね、果実水ですか?」
先ほどからファナ様が飲んでおられる果実水と同じものをわたくしも飲んでいるのですが、甘酸っぱいのに口当たりがすっきりしていてどんどん飲めてしまいます。お料理の味付けが濃いので丁度良いです。
「ファナ、その果実水ってほんの少しだけど一応お酒も入ってるからあんまり飲みすぎちゃだめよ?」
「シオりん大丈夫だって、ここの果実水ちょっとケチって薄めてあるもん」
「そうなの? 安いとおもったわ」
(え……これお酒が入ってましたの? まあ薄めてあるみたいですし……ファナさんでも平気そうですので……どんどん……飲め……ます……)
「料理追加頼むけどレティは何を食べ……」
(シオリ様が何か仰ってますけど……何か……こう……気分が……なんだか……なんか腹が立ってきました)
「あの、レティ?」
「そうです、わたくしがなにをしたっていうんですか!」
「びっくりした!? レティ? 何いきなり……」
「シオリ様聞いてください! わたくしはネレスティ・ラルケイギア、しがない貴族の四女……末娘でした。上の姉たちはみんな器量が良くて上級貴族へさっさと嫁いで行きました。家督は下の弟が継ぎますのでわたくしは趣味の世界に没頭できました。だってお父様もお母様もわたくしの事は変わり者として居ない者扱いしてきましたもの……ええ!」
「おいシオリ、レティはどうしたんだ?」
「マーシウ……わ、わからないわ。急にこうなって……」
「趣味というのは、大好きな勉学……何の? と申しますと、わたくしは幼い頃から色んな品物について造詣を深めるのが大好きでした。古今東西の銘品、珍品、まあ美術品などですわね。そこからどんどん興味が広がって、周辺関連知識もどんどん知りたくなって古代魔法帝国やその遺品、伝説なども勉強しました。お陰で様々な品物の価値を鑑定できるようになったのです……」
「身の上話か……面白いじゃないシオリ?」
「アン姐! ちょっと、レティひょっとして酔ってる?」
「ある日お父様からいきなりお茶会に出ろと言われて……そうしたらそれは
「酔うって……シオりん、レティも私と同じ果実水しか飲んでないよ?」
「ファナは何ともないよね? ほんの少ししかお酒入っていないのに……しかも薄めてあるみたいだし。ひょっとしてレティはお酒に凄く弱いのかしら?」
「お父様も思えば出世の為にわたくしを利用していたのですが、姉上たちも政略結婚ですので貴族の娘はそういうものなのです。見知らぬ殿方との結婚よりも自分の趣味である鑑定が役に立っていて良かったと思っていました」
「そっかー、貴族令嬢ってのも大変なんだねぇ……」
ファナ様は腕組みしながら「うんうん」と頷いて聞いてくれているので、もっとお話ししなければと気分がどんどん高揚していきます。
「わたくしの目利きが評価されて、どんどん大きな場に呼ばれるようになって父も出世してゆきました。わたくしの鑑定ということで信頼もある程度得られるようになり、いよいよ侯爵や伯爵のような大貴族が揃う品評会に呼ばれた時はわたくしもお父様も相当舞い上がっていました……でも」
「あの……レティ? もうその辺で……」
「シオリ、これからいいとこじゃん?」
アン様が目を輝かせてわたくしの話を聞いているのでどこか使命感のようなものが沸き、是非とも聞いて貰いたいという感情が溢れます。
「ある侯爵がお持ちになったご自慢の壺がわたくしにはどう見ても、何度鑑定しても贋作に見えまして……わたくしとしましては侯爵様の名誉にかかわることですし、その場におられた方々にも"これは精巧に作られた贋作です侯爵様は謀られておいでですこの品の出所は何処でしょう?"と伺いました……ですが、侯爵様はわたくしに対して無礼者だと大変激怒されました。周りの方々は青い顔で贋作なはずがないとその品についての知る限りの情報を挙げられましたがわたくしを納得させられるものはございませんでしたので、ひとつひとつ理論的かつ客観的に否定させて頂きました……のですけど」
「レティ、酔ってるのよね? もうやめた方が……」
「シオリさまっ!」
「は、はい?!」
「それなのにますます侯爵様は激怒されました……とても怖かったのですが、わたくしは侯爵様に訳をお教え頂くよう願いました。すると、侯爵様はこの壺はギシュプロイ大公殿下より下賜された品だと仰いました……それでわたくしは不敬罪にて捕らえられてしまいました」
「ねえねえマーシウ、ギシュプロイ大公殿下って?」
「……皇帝陛下の従兄だよ、ファナ」
「げ、マジ?!」
「わたくしは不敬罪で捕えられましたが、何故かわたくしが今まで鑑定したものは全て贋作とされて、わたくしは貴族の方々を謀っていたことになっていました……」
「ひどいなぁ、なんでそうなるのマーシウ?」
「まさか大公殿下よりの下賜品に贋作があったなんて分かったら、殿下も侯爵も面子丸つぶれだろ? それにその品物を入手するのに関わった人間が何人処罰されるか想像もできない。だからレティに全部被せて贋作では無かったことにした……ということじゃないか?」
「ええ……レティ可哀そう」
「……わたくしが何を言っても弁解させていただけず、結局"
「それであの
「でもさマーシウ、
「アン、聞いた話では
「絶対にあり得ない事じゃないけど可能性は無いに等しい……か」
「わたくし、処刑の時に初めて実物の
「でもさあマーシウ、
「アン、それはな……
「本当に何処にとばされるかわからないの?」
「そうだな、海の底かもしれんし、空高くかもしれん……今回のレティは辺境の
「えー! そんなの死ぬじゃん?」
「だから死刑と同等なんだよ。死刑にするには肩書が重すぎる貴族とか情状酌量の余地はあるが居てもらっては困る者とかを処分する手段として利用されてるんだ」
「じゃあレティもファナ達と出逢わなければ死んでたかもしれないね……ゴーレムとか、他にもいっぱい強い
「そうです……正直申しましてあの時は死を覚悟しておりました。暗闇に突然放り出されましたので……ですから、皆様には本当に感謝しております……うわぁぁぁん」
「ああもう、レティこんな所で泣かないの……よしよし」
「シオリ様……わたくし……わたくし……うぉぇぇぇ~」
「げ、レティ吐いた……」
「きゃああっ!
「マーシウ殿」
「ディロン?」
「レティ嬢は帝国の法律上は
「……ああ、そうだな。ギルドのあるイェンキャストへは帝都を大きく迂回していこう」
――そして猛烈な眠気に襲われてわたくしの意識はなくなりました。
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