第9話
私はリンとレンを休ませ、1人で城の広間に向かうと、偽勇者はすでに待っていた。
彼は自信満々な表情を浮かべ、周囲の兵士たちを見下している。
彼の姿は明らかに本物の勇者とは異なり、どこか軽薄さが感じられた。
「おお、この俺を倒そうとする人間が現れたようだな!」
偽勇者は挑発的に笑い、私たちに向かって手を広げた。
「私こそが、この王国の運命を変える勇者だ。お前たちのような雑魚に用はない!」
彼の言葉に、私の心は怒りで燃え上がった。
「私たちは、あなたの力を必要としているわけではない。魔王を倒すために、本物の勇者の力が必要だ!」
私の叫びに偽勇者は笑った。
「お前の力では魔王は倒せない。必要なのはこの俺の力だ!」
彼は一歩前に出て、自信満々の笑みを浮かべている。
「お前がどんなに力を使って、俺には敵わない。魔王を討つことができるのはこの俺、勇者カイトだ!」
彼の言葉に、私たちの間に緊張が走った。
「お前……」
私が小声で呟いた。その言葉には、彼に対する不信感が滲んでいた。
「カイト、お前は本物の勇者ではない! それでも名乗るつもりか?」
私が声を荒げると、カイトは嘲笑を浮かべた。
「俺が偽勇者だと?それはお前たちの勝手な考えだ。俺には力がある。この城も、王国も、すべて俺の手中にある!」
その言葉はまるで、彼自身が現実を見失っているかのようだった。
「ならば、その力を見せてもらおう!」
私が叫ぶと、周囲の緊張が一層高まった。私は彼に攻撃を仕掛ける準備を整えた。
「カイト!そこで待ってな!」
私は攻撃を仕掛けた。カイトは軽やかにそれをかわし、反撃を試みる。
「無駄だ!俺にはお前たちの攻撃が通用しない!」
彼の言葉に怒りを感じながらも、私たちは冷静に彼の動きを見極めた。
「行くぞ!そりゃあ!」
私が声を上げると、休んでいたはずのリンとレンが一致団結して魔法攻撃を放った。
その瞬間、カイトは私たちの攻撃に気を取られ、私はまさにその隙をついた。
「これが本物の勇者の力だ!」
私の声が響き渡り、カイトの体は吹き飛ばされ、彼は地面に倒れ込んだ。
私たちは勝利を確信し、歓声を上げた。
「やった、倒したぞ!」
仲間たちも私と同じく歓喜の声を上げ、私たちの団結の力を確かめ合った。
カイトが敗北すると、女王ルカが私たちに近づいてきた。
「素晴らしい戦いだった。これで、あなた方のもとに仲間が集まるはずだ」
女王の言葉に、私たちは再び力を感じた。
カイトを倒した後、私たちの気持ちは高揚していた。
しかし、女王ルカの期待とは裏腹に、仲間は集まらなかった。
城の周囲に配置された兵士たちは私たちの勝利を讃えたが、
実際に戦力が増えるわけではない。私たちは、次なる一手を打たねばならなかった。
「どうすれば、魔王を討伐できるのだろう……」
私が呟くと、女王は私たちに目を向けた。
「魔王を倒すためには、強い力が必要だ。過去に魔王と戦った者がいる。彼女の経験を借りるのが一番だと思う」
「勇者がいるのですか?」
私は興味を持った。
「そう、過去に魔王に挑んで、ギリギリのところで負けた者だ。彼女の名前は『ユカリ』。彼女は未だにこの王国の近くに住んでいる。強力な力を持った者だが、彼女は魔王との戦いがトラウマになり、現在は隠居している」
女王の言葉に、私の心が揺れた。
「ユカリ…彼女に修行を受けることができれば、私たちも強くなれるかもしれません」
レンが真剣な表情で言った。
「そうだ、彼女の力を借りよう。私たちが協力すれば、受け入れてくれるはずだ」
リンも頷いた。
私たちは、ユカリの居場所を教えてもらい、すぐに出発することにした。王女リンとレン、そして私、テトの三人は、希望を胸にユカリの元へ向かった。
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