第10話
城を後にし、広大な森へと足を踏み入れた。
森の中は静寂に包まれ、緊張感が漂っていた。
自然の美しさが、私たちを一瞬和ませる。しかし、すぐに再び心を引き締めた。
「ユカリさん、どんな人なのかしら……」
リンが不安そうに呟く。
「強力な力を持った勇者だと言っていたから、きっとすごい人だと思う。私たちの力になるに違いない」
私が言うと、リンは安心したように微笑んだ。
森を進むにつれて、薄暗い光が差し込み、緑の木々が生い茂っていた。
しばらく進むと、そこにひときわ大きな木が立っていた。
その周りには、小さな小屋がひっそりと佇んでいる。
「ここがユカリの家のはず……」
私たちは、緊張感を抱えながら小屋の前に立った。私は深呼吸をして、ドアを叩いた。
「ユカリさん!私たちは、あなたに会いに来ました!」
声を張り上げたが、返事はなかった。
「もしかして、ユカリさんいないのかな……」
レンが心配そうに言った。私たちは、もう一度ドアを叩いた。
「ユカリさん、お願いです!少しお話が……」
その瞬間、ドアが静かに開いた。
目の前には、長く藤色の髪を持った女性が立っていた。彼女の目は少し疲れているように見えた。
「何か用かしら?」
ユカリは冷静に問いかけてきた。
「私たちは、魔王を倒すために修行をお願いしたいのです!」
私が必死に訴えかけると、ユカリは一瞬驚いた表情を見せた。
「魔王……あなたたちが?」
彼女の目が鋭くなる。私たちの目の前で、彼女は静かにため息をついた。
「私もかつて魔王に挑んだ。しかし、あの時は力及ばず……」
その言葉には、深い悲しみが滲んでいた。
「あなたたちも、私のように失敗するかもしれない。しかし、もしそれでも良ければ、修行を受けてみる?」
私たちは互いに顔を見合わせ、決意を新たにした。
「ぜひ、お願いします!」
全員が声を揃えた。ユカリは静かに頷いた。
「それでは、明日から修行を始めましょう。私の元で、力を高めましょう。」
私たちは心の中で歓喜の声を上げた。
翌日から、ユカリとの厳しい修行が始まった。
彼女は私たちに多くのことを教えてくれた。
術や魔法の使い方、そして戦術についても深く掘り下げてくれた。
「力だけでは勝てない。敵の心を読むこと、仲間との連携、全てが勝利への道よ。」
彼女の言葉は、私たちに深い教訓を与えた。
特に私にとって、ユカリとの修行は新たな成長の機会だった。
彼女は私のドリルを活かした技を教えてくれ、
さらにその技を磨く方法を伝授してくれた。
「ドリルの力は、力強さだけではない。豪快さや速度、時には狡猾さも必要よ。」
ユカリの指導の下で、私は新たな技を編み出すことができた。
どんどん成長していく自分に、自信を持てるようになった。
リンとレンもそれぞれの特性を活かし、着実に力を高めていった。
リンは魔法の腕を磨き、レンは剣の腕を鍛えていた。
私たち三人は、互いに切磋琢磨しながら、絆を深めていった。
日が経つにつれて、私たちの心は次第に一つになっていく。
ユカリから学んだことは、私たちの力となり、
魔王に立ち向かうための準備が整い始めていた。
私たちは、まだユカリに特訓してもらうために、
彼女の小屋の裏手にある広場に集まった。周囲は木々に囲まれ、静かな場所だ。
草地の上に立つと、私たちは彼女の指示を待った。
「まずは、各自の得意な技を見せてみなさい。今日はそこから始めましょう。」
ユカリは腕を組んで、私たちを見つめる。私は思わず緊張したが、すぐに心を落ち着けた。
「私から行きます!」
私が叫ぶと、ユカリは頷いた。私は手に持ったドリルを高く掲げ、技を繰り出した。
「ドリルファイアー!」
炎を纏ったドリルを前方に突き出すと、周囲の空気が揺れた。
ドリルが燃え盛る火花を散らしながら進み、
地面に激しく当たると同時に大きな爆発音が響いた。
周りの木々が揺れ、私は少し動揺したが、
ユカリの目には驚きとともに興味が宿っていた。
「素晴らしい技だ。ただし、その力を無駄にしないように、もっと精密に操れるようにしなさい」
ユカリの言葉に、私は頷いた。
「次は私がやるわ」
リンが前に出て、両手を広げた。彼女の周囲に小さな光の粒子が集まり、次第に大きくなっていく。
「これが、私の魔法……『ホーリー・アロー』!」
彼女が叫ぶと、光の矢が空を飛び出し、的に向かって一直線に飛んでいった。
的に命中すると、閃光が周囲を包み込んだ。
「美しい魔法だわ、リン。だが、もっと力強さを増す方法がある。魔法の精度だけでなく、威力も増やす訓練をしよう」
ユカリが微笑む。リンはその言葉に自信を持ち、さらに魔法の練習を続けた。
次はレンが前に出た。彼は剣を構え、力強く声を張り上げた。
「俺の技を見てくれ!」
レンは素早く剣を振るい、鋭い一撃を放った。彼の剣が空を切り裂く音が響き渡り、威風堂々とした姿にユカリの目が輝いた。
「素晴らしい。もっと相手の動きを読んで、連携を意識した技を練習するべきだ」
彼女のアドバイスに、レンは頷き、さらなる技の向上を目指すことを決意した。
ユカリは、私たちの技を見て回りながら、各自に対するアドバイスを続けた。私たちが新たな技を磨く中、彼女は私たちの戦い方を観察し、それに応じた特訓を組み立てていく。
「さて、次は連携を意識した特訓を行います。テト、リン、レンの三人で、一つのチームとして技を使ってみて」
ユカリの指示で、私たちは組み合い、連携を意識した技を試みた。
「私がドリルで敵の注意を引くから、その隙にリンの魔法でサポートして、レンが攻撃するという流れで行こう!」
私が提案すると、仲間たちもそれに賛同した。
「私の魔法で敵の視界を遮るわ!」
リンが魔法の準備を始める。
「俺が行く、任せろ!」
レンが前に出て、私たちの動きを見守る。
「行くぞ!」
私が叫ぶと、ドリルを振りかざして前進した。
敵の注意を引くため、ドリルを大きく振り回すと、
周囲の風が強くなり、周りの木々が揺れた。
「今だ、リン!」
私が叫ぶと、リンはその瞬間を逃さず、魔法を発動させた。
光の矢が敵に向かって飛び、その隙にレンが駆け出し、を振り下ろした。
「よし、連携が取れた!」
私たちの技が見事に決まり、ユカリは満足そうに頷いた。
「いい感じね。この調子でさらに磨いていきましょう」
ユカリの言葉に、私たちは力を込めて頷く。
数日間の特訓を経て、私たちは驚くべき成長を遂げた。
ユカリの指導により、私たちの技や連携が洗練され、
魔王に挑む準備が整いつつあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます