第5話 1年目

 そして1ヶ月が経とうとしていた時だった。成長したのはぼちぼちという感じだ。周囲に存在していたスライムは狩り尽くされ、次の狩り場が森の中に移ろうとしていた。


 ほとんどの街の全てが木の家になっている。このタイミングで神からのイベント情報が送られた。その内容は、モンスターのスタンピードだ。イベントの名前はスライムの逆襲と書かれている。


 発生期間は1週間後だ。それまでに装備や壁の強化を行えよとのことだ。最悪食糧が尽きて全員餓死するという可能性もある。


「テステスー。聞こえてる?まあ、聞こえているよね。知らせを見たかな?スライムが襲いかかってくるから頑張ってねー」


 とその通信が切れる。


「後の仕事は、」


 死者の復活ボタンを押した。やってきてから1ヶ月が経とうとしていた。最初に死んだ人が復活するタイミングにもなる。そのボタンを押した瞬間、死んでいた場所にその死んでいた人が復活する。


 丘もない平らなところだ。目の前に見えるのは、土の壁で覆われた町だ。そこに行こうと判断し、近づいた時だった。そう、近づいてしまった。本来であれば死んだとみなされた人が復活し、近寄ってきた。


 ならどう判断するだろう。


「ひっ死体!」


 アンデットとして現れる可能性を考慮されてか、その人の特徴も伝えられていた。そのため、その姿を見た人はアンデットと判断し、殺した。だが、一向に死体がドロップに変わることはない。


 スライムであれば、寒天のような食糧や魔石がドロップする。だが、この人間からは何もドロップは起きない。それよりもレベルアップをしてしまったくらいだ。


 本当の人間を殺してしまったのではないか?そう考えてしまった。何も報告をせずに堀の中に投げ捨てる。ここを覗き込む人は滅多におらず、覗き込む理由もない。バレにくい場所となってしまった。


 これがどんな結末になるのかは今は誰も知らない。


「あちゃー、殺しちゃったねー」


 モニターを見ながら、そう神がつぶやく。扉が開く音が立つ。


「そっちのイベントの準備はどんな感じ?」


 後ろを振り向かず、その侵入者に問いかける


「ばっちりよ」

「強さの調節はしっかりとしといてよ」


「スライム以上、ゴブリン未満って感じでしょ?余裕余裕。あとは強いのを1体程度入れておけば満足かな?」


「そっちで面白そうなの見つけたら教えてー」

「その資料置いておくね。監視がんばれ」


 そう言いながら入ってきた神が出ていった。魔物の資料を片手に再び椅子に座る。通常のスライムで数を多くしたものや、魔法を使うもの、魔法に耐性があるものといったものがある。


 ボス扱いになっているのは、このビッグスライムだろう。体が膨張し膨れ上がったスライムだ。核となっている部分の大きさは変わっておらず、弱点を補強している。さらに中心部分の近くにあるため、体を削ってから攻撃を仕掛けないといけない。これが欠点だろう。


「これならバランスはいいかなー」


 イベントを告知後の行動は、全員が行動をするといった感じだ。森の中の魔物を駆除したり、堀を増やしたりと耐えるための工夫をしているようだ。だが、そんな工夫を消し去るように、このビッグスライムが立ちはだかるだろう。どんなことが起きるのかワクワクしている。


「あのシリアルキラーは何をしているのかな?」


 お気に入り登録をしているところから、その名前を開く。彼女はどうやら短剣を使いシーフの役職についたと誤魔化しているようだ。


 本来の役職は、ネクロマンサーだ。死体を操り、操作や命令をするという役割だ。死体となったステータスは、その死体になった時のステータスや職業が反映されている。もちろん成長はするため、勝負は五分五分になるだろう。どのタイミングで攻撃に出るのかが勝負の分かれ目になるはずだ。


 と、ここまではよかった。高見を作ることで、どの方向から敵が来ているのかを見ることはできるようにしていた。ところが、作戦がひどい。作戦の内容は、魔法ブッパだ。しかも全てのグループがだ。


「魔法耐性あるけど・・・」


 今の練度の低さだと、魔法防御がついたスライムを突破できる訳が無い。そのため、魔法防御のスライムを消すように言うために手に持っていた連絡手段のものを持ち上げ、机に戻す。


「この機会に生き返ることを知らしめるか?」


 ありだな。死んだ奴らは1ヶ月間復活することはない。監視する労力も減るだろう。そうするか。

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異世界デスゲーム ひまなひと @haruki0320

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