私の恋は四次元を越えて。

葉式徹

プロローグ

香苗かなえ、好きだ。俺と……付き合ってくれ」


1990年9月21日。高校一年生のとき。私は幼馴染のまことから告白された。

翌日に迫る文化祭の準備で遅くまで学校に残っていて、装飾作りで出たごみを二人で捨てに行く時だった。

焼却炉の前と言うだけあってムードは最悪だったけど、そんなことどうでもいいくらい嬉しかった。


「嬉しい。私も、ずっと好きだったよ。よろしくお願いします」


そう答えた時から高校卒業に至るまで、私とまことは交際を続けた。大学生になってからも、ずっと一緒に居ようと約束して。


その数日後。私は交通事故でした。




「気が付きましたか。では、落ち着いて聞いてください」

目を覚ました時、視界には白い天井と白衣を着た男の人が映った。ここが病院であることに気付く。


「あなたは交通事故に遭い、ここに運び込まれました」


状況を理解しきれない私を他所よそに、男の人は説明する。段々と記憶が戻ってきた。

そうだ。私は春休みに家族でお婆ちゃんの家にいこうとして、それで……。


車ごと、崖に落ちた?


光景がフラッシュバックする。日の落ちた山道。読めない文庫本。

けたたましいエンジン音と、視界を包むヘッドライトの光。幻惑げんわくして何も見えない。それに続く、ものすごい衝撃。

「そうだ!パパとママ……私の両親はどうなったんですか!?」


完全に記憶を取り戻して、私は聞く。すると彼は言いにくそうにして答えた。

「残念ですが……。お亡くなりになられました」


身体の内側が冷たくなった。恐怖にも似た悲しみがこみあげてきて、涙があふれそうになる。

でもそんな気持ちはすぐに、さらなる疑問と不安で打ち消される。


「あなたと一緒に」


なぜなら、彼がそんな言葉を続けたから。意味がわからなかった。

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2024年11月29日 23:00
2024年11月30日 10:00
2024年11月30日 15:00

私の恋は四次元を越えて。 葉式徹 @cordite

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