第28話 ダークエルフの村の狩りツアー
「帝国滅んだらしいですぞ?」
小さな魔物のポメヤは背伸びをしながらそう言った。
「もう考えても仕方ないから気にしない事にしたよ、現実逃避だ。」
「まあ起こってしまった事はしょうがないですぞ、確かに気にしても仕方ない。救った命も多いですぞ」
流石にポメヤもいつもの軽口は叩かない。
気を取り直していこう、僕達はやりたい事をするんだ、旅を続けよう。
もう少し進むとダークエルフの村が見えてくるはずだ。こっちの大陸はダークエルフ、この前までいた大陸はエルフ、祖先は同じだが独自に進化したらしい。
昔エルフの町に行った事があるが、色々あって帝国の奴隷狩りに捕まったのだ。
帝国が滅んだ今、生きていれば解放されているだろう。
「あれですぞー、うおー健康なエルフがいっぱいですぞー」
褐色だな、それ以外は向こうのエルフと変わらないけど
「すいませーん観光に来たんですけどー」
とりあえず村の入り口にいたダークエルフに声をかけた。
「こんにちは!どうぞお好きに見て回って下さい!ダークエルフの村へようこそ!」
そう言うとダークエルフはスタスタと走って行ってしまった。
「なんかこれまで以上にザルですぞ、大丈夫なんかこの村」
「まあ悪さしてたのは帝国の人間ばっかりだしな、ある程度オープンにしても問題無くなったんだろう。」
僕達は村に入り、宿に荷物を置いて観光する事にした。
外に出るとどうやら狩りに出る所らしく、ダークエルフ達は広場に集まっていた。
「僕狩り見てみたいですぞ、なんか見るものないし、物見遊山」
「確かに気になる…でもそんな簡単に見せてくれるもんかね…」
数分後、僕達はダークエルフの後をついて狩りの見物をしていた。
村の新しい事業として狩り見学ツアーなるものをしようとしているらしく、しっかりお金は取られたが見学を許された。
まあお金払えば客みたいなもんだし気が楽だな。
一応ガイドに最初村で会ったダークエルフが付いてくれて何をしているか説明してくれる。ありがたい。
「獣道なので気をつけて歩いて下さいね。」
そう言ったのはガイドのメージュさん。
褐色の肌で茶色の髪、スカートの戦闘服、スカートは動きやすいので女性はみんなこの格好らしい。
「なんか本当にツアーって感じですぞ、これは流行る予感、到来」
「獲物がいました、豚の魔獣です!動かないで下さい」
メージュさんは声を小さくしてその場で止まるように指示する。
「狩りが始まりますよ!」
「待ってたですぞ!血湧き肉も踊れぇ!」
数分後…
うーん、なんかすごいコレじゃない感が…
「なんかちょっとこんな感じ?って感じでしたぞ。」
ダークエルフの狩りは期待していた狩りとは別物だった。
豚の魔獣の周りをみんなで囲んで、一斉に飛びかかり袋叩き、残ったのは惨殺された豚。
「なんかこう、もっとスマートだと思ってたんですけど…」
「私達の狩りはいつもこんな感じですよ、実際獲物取れてますし。」
「でも大勢で動くから獲物も逃げる事あるんじゃないですか?」
「まぁ、私達これしか出来ないですし、弓とか打てないし。」
え、弓使えないの?
聞く所によればダークエルフは剣が得意で弓はさっぱりらしい、しかし剣で狩りをするには1人ではきついので、結局大勢で囲んでザックザクが良いんだそうな。
「罠とか使わないんですか?この方法だと獲物の数も限られてくると思いますけど…。」
「罠ですか?難しそうだしやらないですね、最近魔物が私達の狩り方に恐怖を覚えて森から去っていってるのも事実です、だからツアーで小銭稼ぎを…」
「今まで触れてなかったけどこのツアーで50万ベルってやべぇ感性ですぞ、僕たちはお金あるから良いけどこんなイジメみたいな狩り見せられて大金まで取られて、客の方が狩られてますぞ」
確かにこれで50万ベル、2人で100万だもんなぁ…
「まあ高いのは認めますが…そういえば罠とか作り方知ってます?少しお金返すので教えて下さい。」
すごい話題転換が下手な人だなぁ…罠なんて簡単なのしか知らないけどまあ罠くらい良いだろう、スライムの件はあったがこれは大丈夫な気がする。
「本当簡単なのですよ?」
「それはこちらが決めますので宜しくお願いします。」
メージュさんなんかポメヤみたいな事言うなぁ…
とりあえず簡単なものか…
良くしなる木の先端にヒモを結ぶ、ヒモの先は輪っかにしておいて…
そして限界まで木を曲げた後に輪っかと地面にを固定、固定する物は地面にがっちり固定した木の棒とかでいいんじゃないかな?
そして獲物が好きそうなエサを食べようとして、餌を取るとそのまま輪っかが閉まってしなった木の力で宙吊りになる。
僕の説明もなかなか分かりにくいので一回作ってみよう。
「案外できるもんだな…」
「まあ原始的ですが馬鹿な魔獣なら引っかかるかも」
そんな事を言っていると…
「キャーッ」
お約束とばかりにメージュさんが宙吊りになっていた、必死でスカートを押さえているが色々手遅れ感がある。
「急に何してるんですぞ、まだ作って1分も経ってないというのに、説明もまだだというのに」
「とりあえず降ろして下さい!訳はその後で!」
ポメヤと協力してメージュを降ろす、どうやら仕組みが理解出来なかったらしく、とりあえずどうなるか試したらしい。
「即死系のとかだったら僕達どんな顔すれば良かったんだろうな」
「多分作ってる最中に怪我とかして完成しないから大丈夫ですぞ。」
お前怒らせたら囲まれて滅多刺しにされるよ?
うーん、もしかしてダークエルフってそんなに利口じゃないのか?普通は罠なんか自分たちで考えそうなもんだし。
「実は私達はそんなに賢い種族ではないんです…見た目も良いし頭良さそうなんですけど…、ひどいのは結構ひどいです。」
そのひどいのには会いたくないな…。
「ちなみにどんな狩りツアーなら50万ベルの価値があると思いますか?」
「いやいや、そのとりあえず50万っていうのは無理ですよ、最初ギャグかと思いましたもん、払いましたけど」
「良いとこ5000ベルですぞ、あんなイジメ狩りじゃなくてもっとちゃんとしたヤツでも。」
ポメヤよ、一応一族伝統の狩りをイジメ狩りとか言うなよ…メージュさん優しいから怒らないけど
「一応アイディアもあるんですけどねぇ、」
「なんですか!教えて下さい!判断は私に任せて!」
ポメヤかと思った、ですぞまで付けられたら分からなかったかも。
「まあアレですぞ…」
ポメヤも多分同じ事を思ってる。
ヤラセしかない。
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