第26話 天使の国にご招待!
「トーマー、空から何か降ってきてますぞー、そして連れて行かれる僕の様子ー」
何言ってんだお前と振り返るとそこに短足の魔物の姿は無く…
辺りを見回していると身体が宙に浮いたのだった。
「なんか洒落になってないですぞ、死んじゃうんじゃないの?生きてていいの?」
生きててはいいよ、どうなるかは分からないけども…
数分の空中散歩の末に天空都市に到着した。
やっぱり天使族か…
「おめでとうございます!貴方たちは9980人目の来訪者です!!」
僕を抱えて拉致してきた女の子はお祝いムードだ。
金髪碧眼、これでもかというくらいの白いミニドレス、髪の毛はウェーブがかかっている。
天使族
昔から噂のある神出鬼没な種族。
天空に国を作っており、気まぐれで地上の人間を招待(拉致)し、盛大にもてなす。
特に滞在期間などは定められておらず、気が済むまでもてなした後、地上に返される。
つまり暇つぶしである。
「天国に一番近い場所ですぞ、トーマは逆方向に来てしまったね」
何?俺も天国行くけど?お前と違って
「私天使族のミカエルと言います、特別幸運なお二人の名前はなんでしょう?」
「トーマです」
「ポメヤですぞ、よしなに」
それでは歓迎のパーティーがありますのでこちらにと案内され、ペガサスが引く馬車に乗せられたのだ。
こっちを置いていくスピード感、天使族の特徴らしい。
国民全員は歓迎ムード、花が舞い散りパレードが始まった。
ポメヤは上機嫌に手を振っているが僕も軽く手を振り、パレードは進んでいく。
そのまま王城に入って行き、王と謁見。
「良く来てくれた地上の民よ、心ゆくまで我が国を楽しんでいってくれたまえ。」
「はいですぞーせっかくだし天国を覗くのも悪くないですぞ」
瀕死になるって話?面倒だからやめてよ
「楽しませて頂きます、数日間宜しくお願いします」
「数日と言わずにもっといても良いんじゃよ?」
いや、僕は知ってるんだよ、貴方たち天使族は長寿故に時間感覚がバグってる。
拉致された旅人がこの国で死ぬまでもてなされ続けるという話を聞いた事があるんだ。
絶対に帰る!ある程度もてなされた後にね!
それまでは楽しもう。
宿屋というには豪華すぎる部屋に通され、僕たちを拉致してきたミカエルが案内役で付くらしい。
「今日はお夕飯までのんびりしてて下さいね!明日からが本番なのでゆっくり休んで下さい!何かあったらこのベルを鳴らして下さいね!私が待機してますので!でもエッチな事はダメですから!なーんて♪じゃあ明日お迎えに上がりますー!」
早口で説明した後ベルを置いてバタンと部屋を出て行った。
「お夕飯とかいうくせに扉は力一杯閉める、なんかモヤモヤですぞ」
「生き急いでるよな、半永久的に生きるのに…なんか怒涛のスピードで疲れたな…」
「寝るですぞ、天国のそばで」
「お夕飯が先らしい、それまで休もう」
お夕飯は豪華なディナーだった、広い部屋に通されご馳走が次々と出てくる、天使族が数人壁際に待機しており、目を光らせている。
部屋で食べたい…落ち着かない…
食べ終わり部屋に戻された。
「なんか疲労がピークですぞ、脳みそが振り落とされそう。」
そうだな…明日も凄そうだ。
僕達はベットに倒れ込み、朝までぐっすり眠ったのだった。
翌朝、ミカエルによってバタンとドアが開け放たれた。
「パンパカパーン!朝ですよ!お朝食を食べて街を案内します!行きましょう!着替えは手伝いますか?朝のシャワーは?じゃあ行きましょう!」
「いやいやいや、早い早い、あと5分待ってくれ」
僕は寝起きの頭で必死に情報を整理する。
眠すぎてパンパカパーンの記憶しかない。
「トーマ、行くですぞ!ハリーハリー」
お前まだ起きてもねぇじゃん…
身支度を整えて扉を出るとミカエルが待ち構えていた。
「早かったですね、じゃあ行きましょう!」
お朝食とやらも豪華な食事だったが、寝起きで食欲も無いのでパンとスープのみ、ポメヤはお菓子をバクバク食べていた。
「さあ行きましょう!今日は我が国でショッピングを楽しんで頂きます!色々ありますよ!エッチなのはあんまりないですけど、なーんて♪行きましょう!」
「なんか無邪気な分突っ込めないけど若干疲れるテンションですぞ、エッチなのネタも死ぬほどスベってるし」
お前本人に絶対言うなよそれ
ショッピングに来たがこれはすごい、素晴らしい完成度のグラス、絵画、小物、化粧品
どれもクオリティが段違いの逸品だ。
「でもまぁ、僕たちには不要なものばかりですぞ」
「ふふふ、この街の商品は地上に持って行って売れば大金を得ることが出来るんです!すごいでしょう!でも良いんです!買って行って売っても!咎めません!お金は地上で必要でしょう!貴方達はハッピーになるんです」
ミカエルが自慢げにえっへんと胸を叩く。
怪しげな宗教みたいだなぁ…
「僕たちそこそこお金あるんで大丈夫ですぞ、普通に重そうだし、結構ですぞ結構ですぞ。」
「え?ここで30万ベルの物が地上では倍で売れるんですよ?来た人は持ってるお金全部使って買い漁るのに!」
「トーマ君、金額照会の機械をここに」
「はいよ、どうぞポメヤ君」
ピッ
【残高2000億ベル】
なんで毎回ちょっと増えてんの?
ミカエルは残高を見て目を丸くしている。
「何に使うんですかそれ…ここがメインだから貧乏そうな人連れてきたのに…」
失礼な事言うなぁこの人…
「じゃあ何をすればハッピーになりますか?逆に!もうこの際エッチなのでもいいです!」
ダメだろそれは、しっかりしろ天使
「普通に観光できたらそれで良いよ、いやホント」
「そうですなぁ、もう天使の国に来れただけで満足ですぞ、なんか白見すぎてピンクに見えてきたですぞ」
雪目になってんじゃんお前
「そうですね!それではこの国の隅々まで見て行って下さい!教会もいっぱいあるし!あとは…綺麗な場所もいっぱいあるし!ぶっちゃけ言います!エッチな店もあります!」
必死じゃん…とりあえず案内は任せよう
そこから教会を回っていき、四個目の教会で
「ぶっちゃけ大差ないですぞ」
ポメヤのこの一言で教会巡りは中止。
綺麗な丘や花畑を回り、
「ぶっちゃけ地上にもありますぞ」
この一言で中止
最後に天使族の色町を見に行く事に。
「こ、ここはすごいですよ!旅行者の皆さんは夜に宿を抜け出してここに来てるんです!知ってるんだから!そしてお酒を飲んで…イチャイチャするんです!手を握ったり腰に手を回してお酒飲んだり!もう私の口からはこれ以上は!行けば良いでしょう!勝手に!」
何キレてんの?
「あのさ、一応聞くんだけどさ…その、一緒にお酒飲んで少し身体が触れ合うだけ?」
「なななななにを言うんですか!破廉恥です!そんな恥ずかしい事良くできますね!?」
まだ何もしてないんだけど…
「ミカエルちゃん、人間の国の色町は子作りの一歩手前というか、もう最後までやるんですぞ?」
言うじゃん、ポメヤこういう時バシっと決めるな
「えぇええ!?そんな事まで!?信じられません!でも言われて見れば…今までの人達も少し残念そうに帰っていったような…」
ミカエルは何か焦ってるように見える。
「なぁミカエルってさ、何をそんなに焦ってるの?」
「確かに、異様ですぞ、スピード感がマッハ」
僕たちの言葉でミカエルが真相を喋り出す。
「私達って完璧じゃないですか?ぶっちゃけ空から攻撃なんかしたら地上も滅ぼすの簡単だし、見た目も良いし、文明レベルもすごいし…」
はぁ…そうっすね
「言ってしまえば暇だし自慢したいんです、だって池上に国ごと降りるのも危ないし、かといって滅ぼすのも違うし、なんというか、高貴な感じでいたいんです」
驚くほど面倒ですぞ…
「なのでたまに地上の人連れてきて自慢するのがみんな楽しみなんです…」
確かに今まで行った場所はみんな自慢げな顔してたな、僕たちが驚かないから帰りにあんな寂しそうな顔してたのか…めんどくさぁ…
「そして今回は私が誰か連れてくる役になったのでワクワクしてたんです、何を自慢しようかなーって」
急に残念な種族感が…
「そしたらトーマさん達どこ行ってもなんか微妙だし!もうぶっちゃけ脱ぎますか?私やるったらやりますよ!」
ミカエルは上着を脱ごうとする。
「いやいやいや、良いってホント、なんか僕達が悪い事してる気がするよ、拉致されてきただけなのに!」
「もういっそ他の人連れてきた方がいいですぞ!困ってそうな人」
「もう十分だから帰るよ!いや本当なんかごめんね」
「分かりました…助けを求めてる人連れてきます、一応最初にいた場所に送るか好きな場所に送るか選べますけど…」
「え?本当?もしかしてドラゴン族の町の向こう側の大陸とか行けちゃう?」
「行けますよ、じゃあそちらにお送りいたします…国王には私から言っておきますので…本当にごめんなさい…お詫びに私に交信できる石を渡しておきますのでもしもう一回来たくなったら呼んでください…。」
「本当?天使の国に来て良かった!いやほんと助かるー」
「最高ですぞミカエルちゃん!ここは最高の国ですぞ!ヒュー」
「え?本当ですか!?いやーそうですよね!私可愛いし!この国最高ですよね!じゃあ行きましょう!すぐ私に会いたくて石使っちゃうと思いますけどね!!」
そうしてドラゴン族の戦争が終わるのを待たずに新しい大陸に降り立った。
「バイバイですぞー」
「本当にありがとなー」
ミカエルはニコニコしながら国に帰って行った。
「終わりよければってヤツですぞ」
「そうだな、これでまた色々な町に行けるな」
なんかすごいスピードで全てが解決したな…
さて、次の町を目指すか。
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