第24話 ドリアードの街の大きな穴

「遠すぎですぞ!歩ける距離と歩けない距離は僕にも分からない!」

小さな魔物のポメヤは不機嫌そうに口を開いた。


疲れすぎてキレがないぞ。


「しかし本当に遠かったなぁ…」

歩きっぱなしで数週間の道のりだった、途中馬車でも通れば良かったのだが運悪くそれもなかったのだ。


「しかし隅々まで調べるもんですなぁ」


僕達は今ドリアードの町の入り口の前で持ち物検査をされている。

この町は火気厳禁、身体が植物で出来ているドリアードは火を極端に恐れるらしい。


「それではこのマッチだけは持ち込めないのでこちらで預かります、帰りの際に返しますので御安心下さい。ようこそ!ドリアードの町へ!」


やっと入れる…まず宿を取って休もう、足が棒のようだ。

「宿屋に行くですぞ!もうこの際良いよもう!」


何を諦めたんだお前


町を観光するのは明日にして、2人とも泥のように眠って1日目は終了したのだった。


目を覚ましたのは次の日の昼前、ポメヤを叩き起こして宿屋で朝食を食べてから観光しようと言う事になった…のだが


「まあ分かってたけどね」


「でもこれじゃ…余りにも…草ですぞ」


草は言い過ぎだがやはり火を使わないので生野菜だけだった。まあ分かってはいたが空腹には堪えるものがある。


「あの…肉とかパンとかは…?」

料理と言えるかも怪しいものを運んできた女の子にダメ元で聞いてみる。


「ないんだなぁコレが、火の使えないじゃん?だから草しか出せないワケ、まあ黙って草食ったら良いんじゃね?私達は水と光あればいいからよく分からないんだよ。」


あ、自分でも草って言っちゃうんだ。

答えてくれたのはドリアードの女の子で緑色の髪の毛に黄色の目をした女の子。

葉っぱでできた服を着ていてなんというか、エキゾチックだ。

なんか若干口調が荒いけど。


「でもこの草、案外美味しいですぞ…ってそんな事あるかーい!」


珍しいな、ノリツッコミなんてやるキャラじゃないだろ、無理すんなよ。


「この町の観光名所みたいな場所はあるの?」

ついでに聞いてみる。


「あるよ!連れてってやろうか?なんなら3万でどうよ?サービスするけど?」


なんというか元気な子だな…普通なら3万も出すなら自分で回ると言うけど僕たち引くくらいお金あるしな…


「じゃあお願いしようかな」


「え?本当に?吹っ掛けたつもりだったっんだけどな、じゃあ案内は任せてくれ!ちょっと待ってて!」

少女はドタドタと階段を上がって行った。


・・・・


「遅いですぞ…かれこれ20分くらいは…」


「まあ急に決まった事だしな…準備もあるんだろう。」


そこからしばらく待つと女の子は服を着替えて帽子を被り階段を降りてきた。

なるほど、女の子だもんな、オシャレもしたいよね。


「お待たせ!私はミリィ!どうだい?似合うだろう?服なんて久しぶりに着たから時間かかっちゃったよ」


「え?さっきまで服を着ていなかったんですぞ?てっきりそういう感じのアレかと思ったですぞ。」


どういう感じのアレなの?今日調子悪いね君


「私たちは体のツタを自由に動かせるから全裸でも隠したい所は隠せるわけよ、今日は案内役としてオシャレに決めてきたって感じ!全裸の時は頑張れば見えるから別に見ても良いよ!」


なにかこだわりがあるのだろうか、後半はなんとなく金取られそうな気がする。


「良く似合ってるよ、それじゃあ頼むよ、ミリィ」


任せろと意気込んでミリィは歩き出す、その後ろを付いて宿屋を出たのだが…


「なんか目に優しい町ですぞ、ブルーベリー食べたら逆に失明するんじゃね?」


しないよ、滅多な事言うな。


目の前には緑が広がっていた。中心にはとても大きな木があし、それを囲むようにして住居がある。

森の中に町をそのまま持ってきたような、所々に日光が差し込む場所があり、住人はそこで日光浴をしてた。


「なんかのどかな町だなぁ」


「なんかお店も無いですぞ、緑ばっか、何もないがある町」


「おいおい、あるよ、今に見てろよ」

ミリィは自信満々で付いてこいと手で合図をする。


「ここは1番人気の日光浴スポットだ、気持ちいいんだよここ、あっちは湧き水が沸いてる泉だ、他では飲めないほど澄んだ水なんだ!」


なんか無理してないか?オシャレまでして出てきた割りに…言っちゃ悪いが何もない。

住人もなにかボケーっとしてるし本当に静かだ。


「あれが村の中心の大樹、でっかいだろ?すごいんだよ、ずーっと前からここにあるんだ。」


「これは壮大、唯一見れる感じのスポットですぞ。でもまあ、普通」


失礼すぎるだろ…しかしポメヤが言う事も分からなくもない、遠い道のりを歩いてきた割りには大きな木だけ、食事も葉野菜、テンションは上がるはずもなく…


「そしてここは裏の世界に繋がる穴!」


ん?なんか流れ変わったぞ。

目の前には直径2メートルくらいの穴が空いていた、深すぎて底が全く見えない。


「なんですぞ?そのとんでも設定ホールは」


「確かに急に出たな、裏の世界って何?この世界はそんなもんあるの?」


「あるよ!日光浴してる時に聞いたんだ!この穴は裏の世界に繋がっていて、裏の世界はとっても素晴らしい所なんだって!私もお金貯まったら行くんだ!」


興奮しながらミリィは説明してくれた。


「具体的にどんな所なの?僕達も行ける事なら行ってみたいんだけど」


「行ってみてからのお楽しみさ!帰って来た人はいないんだ!きっと帰って来たくないくらい素晴らしいところなんだよ、服を着る練習をしてるのも裏の世界でみんな服を着てたら恥ずかしいからだよ!」


「それって誰から聞いたんですぞ?」


「隣の家の奥さんだよ!奥さんも家族が居なかったら行きたいって言ってた!」


うーん…なんかスッキリしない感じだなぁ。

その後は日光浴スポットを次々と案内されて宿に戻った。


「今日はありがとう、これ、今日のお礼ね」

3万ベルを受け取り、ミリィは上機嫌で仕事に戻ったのだった。


部屋に戻り、ポメヤと少し話す。

「どう思う?」


「なんとも言えないですぞ、ただ裏の世界なんて聞いた事ないですぞ。」


「あれ魔物が通った穴とかじゃないか?モグラとか」


「まあその可能性もありますな、どこかには繋がってるかも知れないですぞ。」


「少し隣の奥さんとやらに聞いてみよう、ミリィも隣の奥さんに聞いたって言ってたし。誰も帰ってきてないって言うのも少し気になる」


僕たちは好奇心のままに穴の真相を調べる事にした。



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