第18話 ネズミの町の去勢された少女
「そんなのあんまりですぞ!」
珍しくポメヤが声を荒げる。
「しょうがなかったの、その時は好きで好きでたまらなかったの…」
「その時?まるで今はそうじゃないっていう風に聞こえるけど。」
その後に聞いた話は他人の僕達でも怒りの感情が湧くほどに胸糞悪い話だった。
法律のせいでネズミ族全員が異性との恋愛を諦めかけていた。
しかしこの子は当時付き合っている彼氏がいて、結婚を申し込まれたそうだ。
どちらかが去勢する、しかし去勢すれば彼と一緒に人生を歩んでいける。
少女は悩んだが自分が去勢するので二人で人生を歩んでいこうと結婚した。
毎晩毎晩身体を求められたが、悪い気はしなかった。
夫婦として幸せだったから。
一年もそんな生活が続いただろうか、彼はたまに夜中どこかへ行くようになった。
最初は散歩にでも行ってるのかと思っていたが朝帰りが多くなり、夜中に彼を尾行した。
彼はスラム街に入る抜け道を通ってスラム街で女を抱いていた。
次の日問い詰めるとこう言われたそうだ。
「流石に飽きた」
彼はそう言うと家を出て行った。
世界が暗くなった、絶望感で吐き気がした。しかし死ぬ事は出来なかった、勇気が無かった。
「その男!許せないですぞ!今からでもぶん殴りに!」
「もういないわ…スラム街で流行った性病で死んでしまった。」
「いい気味ですぞ!馬鹿ぽんちきめ!」
「ちなみに町の外で暮らすっていうのは考えなかったの?町の人数が増えなければ良いなら移住すれば…」
「それも考えたわ、でも彼は反対した、この町は人数が減ってから補助金が増えたの、今思えば彼は丁度良く性欲を処理できる女が欲しかったのよ。」
彼女曰く、法律に反対して町を出て行ったネズミ族は多いらしい、しかし出て行った先で人数が増えすぎてしまい、結局生活ができなくなったそうだ。
多種族と交わっても5人以上の子供が産まれてしまうらしく、他の町や村でも良い顔はされないらしい。
「なあ、さっき仕事が休みって言ってたけどその仕事って…」
「そうよ、このエリアは結婚した物好きのエリア、私は奥さんに飽きた男の性処理の仕事をしているわ、奥さんには了解を貰ってね。」
「そんなの…ないですぞ…」
「私みたいに捨てられる女性は見たくないの、奥さんもたまの息抜きにって許してるし。」
しかしやはり良い顔はされないらしく、孤立しているらしい、繁盛したピザ屋で彼女の席だけ空いていたのはそういう事だった。
「だからね、今日はお兄さん達が一緒にご飯食べてくれてすごく楽しかった!久しぶりに人とご飯食べた!」
「辛くないんですぞ?子供だって…」
「辛いし子供だって産んでみたかった、抱いてみたかった、でももう無理なの、私が馬鹿だった…。」
可哀想だ、あまりにも…しかしどうする事も…
あっ
「ポメヤ、お前最近フェアリーミルク飲みたいって言ってたよな。」
「なるほど、飲みに行くですぞ」
「そう言えば君、名前は?」
「そういえば言ってなかったわね、ミリーよ。」
「僕たちはトーマとぽめや、一緒に旅にでないか?少しの間だけだけど。」
「急に言われても…どこへ行くの?」
「ミリーの身体が元通りになる水筒がある国、フェアリーの国にだよ」
水筒と聞いて困惑しているミリーだったが、効果を説明したところ驚きを隠せないでいる。
普段ならこんな事はしないが、ドラゴンの町を通れないと他の国や町に行けないのだ。
それなら少女1人救っても良いだろう。
ミリーは少し考えた後に連れて行って下さいと頭を下げた。
数ヶ月ぶりのフェアリーの国だ、ブローチは常に胸に光っている。
きっと歓迎してくれるぞ、初めての二人と一匹の旅だ、準備をしてすぐに出かけよう!
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