第16話 ギャンブルの国で大儲け 2

「フランちゃん?なんでこんな時間に?」


トーマはあえて平静を装ったが、心臓はどんどん高なっていく。

普通に考えると夜這いだ。借金返済のお礼だろう。


しかし下心があって助けた訳でもないし、助けると言ったのはポメヤだ。

するとフランちゃんが口を開いた。


「あの、私、お伝えしたい事がありまして…」

フランちゃんは下を向いてモジモジしていた。


「いや、大丈夫、そんなつもりで助けたわけじゃない、せっかく助かったんだから自分を大切にして欲しいな。


「え…?」


「え?」


「いや、あの、違うんです!そういうのじゃ無くて…」


えぇ…違うの?すごい恥ずかしいんだけど…自分を大切にして欲しいとか言っちゃったよ、だっさぁ…


「私!ギャンブルの必勝法を思いついたんです!」

うわっ、これ聞かなくても良いヤツだ!


そもそも必勝法なんて無い、それは確かだ。

僕とポメヤが大勝ちしてるのを横で興奮して見ていて気分が高ぶってるのだろう。


内容はひどいものだった。

コロシアムでは右の魔物が勝った後に左の魔物が勝つ可能性が高い、とか

ルーレットで同じところに賭け続ければ絶対に勝てる、とか

競犬は手前から3番目が1番勝ちやすい、とか


「フランちゃん…ちょっと無理があるよ…今でも十分勝ってるしこのままで良いじゃないか。」


「私ならもっと増やせます!やらせて下さい、恩返しがしたいんです!」


「ちなみにフランちゃん、聞いてなかったけどお父さんってなんで借金なんかしたの?」


「お父さんの借金の原因はギャンブルです!!」

僕は朝方までフランちゃんを説得し、少しだけやっても良いけど遊びくらいで宜しくと伝えた。


翌朝


「今日で決めますぞー!待ってろ世界!」

ポメヤはやる気満々だ。


「私も頑張ります!待ってろ世界!」

フランちゃん、ほどほどにね。


結局フランちゃんには100万ベルを渡した。お小遣いみたいなものだ、なんせずっと娯楽も無く生きてきたんだ、少しくらい良いだろう。


「絶対増やしてきますね!」

そう言うとフランちゃんはルーレットに走って行った。

まあ増えたら儲けもんだな…。


ポメヤはコロシアムに行くと言っていたので1000万ベルを渡し、今日も頼むぞと送り出した。せっかくなので僕も100万ベルを持ち、遊びに出かけたのだ。


しかしどうしたものか、別にポメヤに任せておけば減る事はないだろうし、もう明日には出発できるんじゃいか?


僕の手の中には100万ベル、1万ベルしかなかったのに、もうこの大金が小銭に見える。


6桁の数字を選んで抽選のクジはキャリーオーバー中らしく、20億ベルを超えている。

これでいいか、僕はせかせかと50万ベル分の数字を書き、抽選の時をのんびり待っていた。


昨日の夜更かしが効いてうたた寝をしていたら抽選は終わっており、販売所で当選番号を確認すると…


「当たるもんだなぁ…」


僕は奥の小部屋に通され、20億ベルの入ったカードを手に入れたのだ。

現実味は沸かないが確かに大金を手に入れた。

もう残りの50万ベルなんて募金しても良いくらい。


お金って…持ちすぎると興味が沸かなくなっていくんだな…僕はホテルに帰り最高級のコーヒーを飲みながらそう思った。


数時間しても戻ってこない2人を心配に思い、探しに出かけた。

もうディナーの時間だ、最高級のディナーを予約しておいたのに…どこ言ったんだ。


コロシアムでポメヤは死んだような顔をして魔獣同士の戦いを見ていた。

やっちゃったのか?ポメヤ君やっちゃったのか?


「ポメヤーもうディナーの時間だぞ、その顔は流石に負けたか?」


「いや昨日と同じで勝ってますぞ…なんか最初は興奮して応援してたんですぞ…ただもう勝ちすぎて作業のように…」


「お前今いくら持ってるんだ?」


「もう分からないですぞ、興味もない、カードの残高見てきていいですぞ、ほら、コレね、この試合見たら帰りますか、もう良いですぞ…飽き飽き」


ポメヤがここまで元気ないの珍しいな。

ちなみにこのカードは1億ベル以上の貯金があると発行され、どの国でも基本的に使える魔法のカードだ。


「あ、ホラ勝ったですぞ、虚しい」


「いくら賭けてたんだ?」


「ん?30億ベルですぞ」

放送で倍率は5倍と聞こえてきた…お前、本当にいくら持ってるんだ?


カードの残高確認をして言葉を失った。


【カード残高 1500億ベル】


お前、僕のクジが紙屑に見えるじゃないか…。

嬉しいけどなんか虚しい…

あとはフランちゃんか…ルーレットに行くと言っていたな、お、いたいた。


なんかさっきのポメヤと同じ目をしているんだが?

「フランちゃーん、もうすぐディナーだから帰ろうよ」


「あ、トーマさん、お金って虚しいですね、私が長年働いて返した300万ベルが今は…」


「フランちゃん、カード持ってる?」


「これですか?ありますよ」


「いくらになったの?」


「この勝負が終わったら見に行きましょう、あ、また勝った、虚しい。」


この流れはもう…


【カード残高 2億2000万ベル】


やった!普通だ!普通!フランちゃんは普通だ!

僕は何か嬉しくなって大騒ぎしてしまった。もうおかしくなってる。


「ちょっと皆さん?いくら持ってるんですか?」


「20億」

「1500億ですぞ」


ホテルに帰り、僕らは疲れた顔をしながら最高級ディナーを食べる。


「トーマ、これいくらですぞ?」


「30万ベル…」


「美味しいですぞ…」


「みんなを喜ばせたくてな…フランちゃんはどう…?」


「こんな美味しいモノ初めて食べました…すごく美味しいです…」


そうか…食ったら寝るか…。

翌朝、町を出ると爽やかな風が吹き抜けた。

僕たちはもうお金の事を考えないでただ旅ができる。

ポジティブに行こう。


「フランちゃんはどうするの?」


「私は村に帰ります!このお金でお店なんか出来たらいいなって!」


「何の店か決めてるの?行く時あったら寄らせてもらうよ。」


「まだ決めてないです、まあゆっくり考える時間もあるし、私の狐族の村が少しでも豊かになったら良いなって」

フランちゃんも十分大金を持っているが、村起こしとなると結構なお金がかかるだろう。

昨日は死んだ目をしていたが、今は希望に満ち溢れている。


「さて、行くですぞ!いざ、世界へ!」


少し元気になったな…まあ、行くか。

好きに旅をしよう、金の心配もないしな!

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