第3話 金持ちのボンボンがオモチャを見せびらかしに来ました
「こんなの発明していたなんて!」
今、彼女たちが乗っているのは、古いお城の麓。そこには小さい入り江があった。水深が浅いため、大型船が停泊できず、まともに港として開発されていなかったところに、カッターボートが接岸されて、ナナ姫たちを乗せて沖合に向かっていく。
ナナ姫は舳先に仁王立ちをしているが、
「いったい、どんな魔法を使っているのですか!?」
その脇でコナンは怯えていた。
振りかえってみると、カッターボートの真ん中には、煙を上げている大きな薪ストーブがドンと置かれている。そこからポンポンと定期的な音を上げながら、大きな車輪が回っていた。「魔法ではありませんよ。蒸気機関というものです」
そのカッターボートを操作している少年が説明した。
巨大な車輪からはアームが伸びており、歯車をかえして船尾のシャフトを回し、水中のプロペラでカッターボートは進んでいる。
「蒸気機関?」
不思議そうな顔をしているコナンに、
「あなた、知らないの? 隣国で発明された蒸気機関を!」
ナナ姫が得意げな顔をしている(君が発明したんじゃないよね?)。
蒸気機関の原理は……まあ、ここで説明することではない。ともかく……迎えに来たのは、タルーンという少年だ。ナナ姫が、勇者と共に世界を救ったとき、その仲間にいた商人ポポロンの息子だ。彼女の記憶では、商人ポポロンは、隣国の王都でかなりの財を成した人物。外見がヒョロッとした長身だったこと以外は、切れ者だった。勇者が世界を救った後も、手広く商売を広げ、隣国の政商にまでなっている。その資金は恐らく、小さな国ぐらい買えるのではないかと思えるぐらいだ。
「あれです。父のイソルデ二世号は――」
タルーンが指さすほうに、大型船が停泊していた。新市街地から――新しいお城の建築地――は岬を回り込んだ場所。巨大なマストが見えてきた。
「二世って事は、私がお世話になった船とは違うものね」
ナナ姫が世界中を旅したとき、商人ポポロンの所有していた『イソルデ号』で何度も海を渡り、大陸を移動した。しかし、そこに錨を降ろしている船は、名前こそ引き継いでいるが、外見上、見慣れないものが付いている。
2本の巨大なマスト。それだけでも、前の『イソルデ号』の倍ある。中央に巨大な水車が付いているのがイヤでも視界に入ってきた。それに2本あるマストの間、ほぼ船体の中央から太い円筒形のものが付きだしていた。そこから煙が上がっていなければ、煙突と認識できないだろう。
「あれも蒸気機関なんですか!?」
「そうよ、コナン。ウワサでは聞いていたけど、ここまで来てくれるとは思わなかったわ」
そして、ナナ姫とコナン書記官は、線上に上がった。
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