第25話 やられ役の牢番、辛辣なことを言う
守護竜バウルノウトを討伐後、反乱軍はすぐに投降して正規軍は王都を取り戻した。
それから一ヶ月後。
本当ならすぐ魔王城へ帰ろうと思っていたのだが、救出したカティアナの父、王様からお礼をしたいと言われて王都に留まっていたのだが……。
反乱軍を鎮圧し、俺やラーシア、エレットはパーティーに招かれていた。
魔王軍との戦争中かつ反乱を鎮圧したばかりでパーティーとか大丈夫なのだろうか。
いや、「反乱とかあったけど何ともありませんが?」みたいなアピールには必要かもしれないけどさ。
こういうことやってるから民衆に反乱されたんじゃない?
実際、カティアナや救出した王様はパーティーの開催に反対していたらしいが、貴族たちがやろうと言い始めて押し切られてしまったそうだ。
これから先、また反乱が起こったらどうするのだろうか。
それはそれとして、別の問題も発生している。
「素晴らしいご活躍だったそうですね、ルガス様!!」
「あ、ど、どーも」
「是非詳しいお話を聞かせてもらえませんか?」
「ま、まあ、時間ができたら」
「あの、もしよかったら、あっちで二人で飲みませんか……?」
そう、どういうわけかパーティーの参加者が俺に人が寄ってくるのだ。
モテ期ではない。
何としても俺を取り込もうという考えが透けて見えている。
いやまあ、原因は分かっているのだ。
エレットが俺のことをとにかく凄いと吹聴し、それを援護する形でラーシアが俺をヨイショしたのである。
俺なんてちょっと手先が器用で料理ができるだけなやられ役の牢番なのに……。
「ルガス殿」
と、ちょうど俺が困っているタイミングでカティアナがやってきた。
騎士の格好ではなく、お姫様らしいドレスを身にまとっている。
さすがはヒロイン。とんでもなく綺麗だ。
俺に集まっていたパーティーの参加者たちもカティアナに気付いて散った。
「すまないな、このようなパーティーに付き合わせてしまって」
「いや、気にしなくていいですよ。ちょっと呑気すぎる気もしますけど」
「まったくだ。ああ、ところでルガス殿。貴殿に礼がしたいのだが、何かほしいものはないだろうか?」
「特にないっすね。友だち助けに来ただけなんで」
「……貴殿は、その、なんだ。辛辣だな」
「え?」
な、何か酷いこと言ったかな?
一応、友だちなんだから気を遣わなくていいよってつもりで言ったんだが……。
「ところで、エレット殿の姿が見えないが?」
「ああ、エレットさんならラーシアを連れてどこか行きましたよ。俺には内緒って教えてもらえませんでしたけど」
「……ふむ? 一体どこに行ってしまったんだ?」
と、その時だった。
「た、大変です!!」
「何事だ!?」
何やらお城の兵士たちが慌てた様子でパーティー会場に駆け込んできた。
カティアナが声を張り上げる。
まさかとは思うが、反乱軍の残党が暴れでもしているのだろうか。
しかし、俺の予想は裏切られてしまう。
「し、死亡したはずの守護竜バウルノウトが動き始めました!!」
「「「「「!?」」」」」
守護竜バウルノウトがまた動き始めた!?
何事かと思って外に出ると、ちょうどパーティーを開いていたお城の前にバウルノウトが歩いてきた。
エレットもいない現状、最強ゴーレム君は動かせない。
ブレスを吐かれたら終わりだ。
そう思って緊張していたのだが、要らぬ心配だったらしい。
『やあ、るがすっす君』
不意にバウルノウトからエレットの声がした。
ちょっと脳の処理が追いつかないでいると、バウルノウトの頭がカシュン!! と音を立てて開いた。
うわ、怖!?
開いたバウルノウトの頭の中は、最強ゴーレム君のコックピットのようになっていた。
え? え?
「エレットさん? これは?」
「最初に見た時から気になっていてね。調べてみたらバウルノウトの体組織のうち、内臓以外はオリハルコンやミスリルを含有した金属組織と分かったのだよ」
「え? あ、そうですか。……つまり?」
「君も言っていたじゃないか。生物を模した巨大メカはロマンだと。――やってみたよ」
やってみたよ!?
「内臓は全て取り除いて居住区にしてみた。背部に大型キャノン、翼部に小型ミサイルポッド、その他の各部位を武装している」
「お、おお……」
言われてみれば、バウルノウトの身体の至るところがメカ化していた。
たしかにこれはカッコイイ。
しかし、さすがに一国の守護竜の亡骸を魔改造してしまうのはどうなのだろうか。
「エ、エレット殿!! 一応、その竜は我が国を守っていた竜なのだが……!!」
「何を言うのだね? この竜は正規軍を襲ってきたんだよ? つまり、この竜は反乱軍の一味だ。ならば死体を改造するくらい大丈夫だよ」
あ、やばいわ。倫理観ないわ、この子。
ゲームのエレットはもう少し分別のあるヒロインだった気がするのだが……。
誰のせいだよ。
……いや、確実に俺だよな。俺が色々教えたからだよな。
「さあ、るがすっす君。そろそろ帰ろうか」
「あ、はい」
こうして俺はカティアナの危機を救い(?)、魔王城へと帰還するのであった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「作者は小学生の頃、メカドラゴンの絵が書かれた絵の具セットをカッコイイと思って使っていた。ぶっちゃけ今もカッコイイと思ってる」
ル「感覚が小学生……」
「カティアナ、どんまい」「エレットやばくて草」「なんでやメカドラ絵の具カッコイイやろ」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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