第24話 やられ役の牢番、テンション上がる
守護竜バウルノウト。
カティアナの国を守る竜だが、とある理由で反乱軍の味方をするのだ。
『エレット殿!!』
馬に跨がったカティアナが最強ゴーレム君に近づいてきて叫ぶ。
その表情は焦っているようだった。
『あれはバウルノウト!! 我が国に伝わる守護竜だ!!』
「ほう、それは面白そうだ。反乱軍だけでは物足りなかったところだよ」
『駄目だ!! 奴は強い!! エレット殿のゴーレムでも勝てるかどうか――』
カティアナが言い終わる前にエレットがフットペダルで最強ゴーレム君を加速させた。
それと同時に王都を囲む防壁上に乗り出したバウルノウトの首が、ゆっくりと最強ゴーレム君の方を向く。
その口に膨大な熱を集束させており、明らかに攻撃の予備動作に入っている。
「全武装展開」
最強ゴーレム君の背部に搭載した八門の砲身が火を吹き、ビット兵器が展開、ミサイルポッドも開いて全弾発射した。
バウルノウトへと襲いかかる。
見事に全てが着弾し、バウルノウトは爆発と黒煙に包まれた。
俺は思わず「やったか!?」と言いたくなるが、全く効いていないフラグになりそうなのでやめておく。
『やったか!?』
「ちょ、カティアナ嬢!? フラグ立てないでくださいよ!!」
と思ったら一連の攻撃を見ていたカティアナがフラグを立てる声をコックピットのマイクが拾いやがった。
煙が晴れると、そこにはバウルノウトが健在。
口に集束させていたエネルギーは熱を帯びて白く染まり、えぐい攻撃が来るであろうことは予測できた。
最強ゴーレム君が回避行動を取ろうとした、まさにその時。
カッ!!!!
目を焼くような光線がバウルノウトの口から放たれた。
最強ゴーレム君は『AT◯ィールド』もどきを展開して防御を試みるが、それは一瞬で破られてしまう。
辛うじて直撃は回避したが、光線は左半身に掠めてブースターや武装がやられてしまった。
これでは機動力も攻撃力も大きく落ちる。
「くっ、やるね!!」
コックピットの中で赤色灯が光る中、エレットは不敵に笑った。
逆に俺はパニックだ。
「ちょ、これどうするんです!? さすがに無理じゃないですか!?」
「たしかにあれは今までの武装では太刀打ちできないようだね。そう、今までの武装では、ね」
「え?」
不意にエレットが懐から何かを取り出した。
それは何かのスイッチのようで『本気』と書いてある。
「エレットさん? それは?」
「最強ゴーレム君『本気モード』の起動スイッチだよ」
「その、なんていうか、スイッチのデザインどうにかならなかったんです?」
「可愛いだろう?」
どこか自信満々のどや顔で言うエレット。
いやまあ、うん。可愛いっちゃ可愛いと、言えなくもないかな?
エレットは名前と可愛いものに対するセンスが凄いな。
最強ゴーレム君とか見た目は普通にカッコいいのに……。
とか考えているうちにエレットはスイッチを「ポチっとな」と言って押した。
その次の瞬間、最強ゴーレム君の武装が全てパージする。
否、武装どころか両腕両足が最強ゴーレム君から切り離された。
そして、最強ゴーレム君の背後に魔法陣が展開する。
「召喚魔法の応用でね。異空間に格納しておいた武装を召喚、その場で合体する」
「うわ、この人もう何でもありだな!!」
パージした後に合体とか、男心を分かっている。
俺が感心していると、魔法陣から一回り大きな腕と足が姿を現した。
最初の最強ゴーレム君がスピードを重視した軽量機体だとしたら、今度の最強ゴーレム君はパワーを重視した重量機体だろう。
同じく出現したバックパックが最強ゴーレム君の胴体とドッキングして両肩に大型キャノンが追加。
更に魔法陣からたった一つ、武装が姿を現す。
それは手足を換装した最強ゴーレム君の身の丈よりも大きな杭打ち機――パイルバンカーだった。
「こ、これは……!?」
「遠距離攻撃では効果が薄いようだからね。これでぶち抜く」
「おおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」
これにはちょっとテンションが上がる。
最強ゴーレム君がパイルバンカーを担ぎ、脚部のクローラーが猛回転。
ブースターも火を吹く。
一気に加速して地を駆ける最強ゴーレム君を改めて敵と認識し、バウルノウトがブレスを放ってきた。
「重量機体だから当たると思ったかね? 残念、避けられるよ」
肩部、腰部、脚部のブースターが一瞬だけ火を吹いて、ブレスの射線上からから外れる。
い、今の動きはアー◯ード・コアのクイ◯クブースト!?
最強ゴーレム君は右へ左へ不規則な軌道を描きながらバウルノウトへ接近。
王都の防壁に近づいた、その瞬間だった。
今度は最強ゴーレム君がア◯ルトブーストで防壁の上にいるバウルノウトへ肉薄する。
バウルノウトも凄まじい速度で迫ってくる最強ゴーレム君に焦りを覚えたのだろう。
慌てて飛翔しようとするが、その隙をエレットは逃がさなかった。
「胴体ががら空きだよ」
エレットが容赦なくバウルノウトの胴体に巨大パイルバンカーを打ち込んだ。
相手は死ぬ!!
実際にバウルノウトは致命傷を負い、地面へと落下していくのであった……。
その後、反乱軍は正規軍に投降した。
カティアナが酷い目に遭うことはなく、無事にイベントをクリアしたのだが……。
ちょっとした問題が生じるのであった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「パージ&ドッキングはロマン」
ル「分かる」
「本気スイッチで笑った」「バウルノウトさん秒殺やん笑」「パイルバンカーもロマン」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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