第23話 やられ役の牢番、反省はする
いよいよ決戦の日。
正規軍の兵士たちは整然と並び、攻撃開始の合図を待っていた。
一方俺はアンテマテリアルビームライフルを構え、防壁の上にある大型バリスタを徹底的に破壊しまくっていた。
面白いように当たるので楽しくなってしまう。
全ての大型バリスタを破壊した後、カティアナが攻撃開始の合図をする――
前にエレットが律儀に手を上げて意見した。
「私がパパッと行って王都を更地にしよう。それで解決ではないかね?」
何やらエレットが恐ろしいことを仰り始めた。
これにはカティアナも慌てた様子でエレットを制止する。
「ま、待っていただきたい、エレット殿!! 更地にされては困ります!! 王都には父上が囚われていますし、何より反乱に加担していない民もいるのです!!」
「そうは言うがね、カティなんとかちゃん。反乱というのは厄介だよ。その意志が感化された誰かに受け継がれてしまうからね」
「そ、それは……」
「疫病と一緒だよ。感染者と感染者の身近な人間は隔離する。逆らう意志を持つ者は、その声を聞いた者は容赦なく殲滅すべきだよ」
……エレットの言うことにも一理あるっちゃあるな。
カティアナも理解できるところがあるのか、その顔色はよくない。
「しかし、虐殺はやはりダメです。あくまでも反乱軍だけが我々の敵。罪のない民を巻き込むことはできません」
「……ふむ。まあ、君がそこまで言うならそうしよう。時間を取らせたね、謝罪するよ」
「いえ、ご理解感謝します」
そして、不意にエレットが俺を手招きした。
「ではるがすっす君。君も乗りたまえ」
「む? な、なぜルガス殿まで?」
「彼の膝の上は私専用だ。彼がいないと最強ゴーレム君の操縦に集中できないのだよ」
「え、まじで乗るんです?」
「ほら早く。早くしたまえ」
俺はエレットに促されてコックピットに乗り込み、その膝の上にエレットが座る。
うっ、やっぱりお尻の感触が伝わってくる……。
とか色々考えていたその時、何故か王都を囲む壁の大門が開かれた。
「おや、敵が出てきたね」
エレットの言う通り、わらわらと門から武装した反乱軍が飛び出してきた。
作戦もなにもない、まるで特攻だ。
「ふむ。緊張が爆発して堪らず飛び出してきたようだね」
「えっと、どうするんです?」
「わざわざ軍が正面から迎え撃って被害を出す必要もないよ」
そう言ってエレットはペダルとハンドルを巧みに操作し、最強ゴーレム君が浮遊する。
ブースターが火を吹いて、一気に加速した。
同時にビット兵器を展開し、最強ゴーレム君の大腿部に取り付けられたペンシルミサイルポッドが開く。
ドドドドドド!!!!
地鳴りのような発射音が響き渡り、無数の爆弾が反乱軍に襲いかかった。
阿鼻叫喚、屍山血河の地獄絵図である。
「ひぃっ、な、なんだあれは!?」
「に、逃げろ!! あんなの勝てるわけがない!!」
「こんなの聞いてないぞ!!」
「待て!! 逃げるな!!」
「た、戦え!! 矢で打ち落とせ!!」
反乱軍は懸命に弓矢で応戦するが、当然ながら最強ゴーレム君の装甲はその程度で貫けるほどヤワではない。
エレットがニヤリと笑う。
「ははは!! 反乱軍はその程度かね? まだまだ私の最強ゴーレム君は本気ではないのだよ!!」
続いてビット兵器が反乱軍を蒸発させる。
それだけで終わらず、エレットは背部の翼のように折り畳まれていた砲身を展開させた。
凄まじい魔力が砲身に集束する。
「ファイヤー!!」
エレットが嬉々としてトリガーを引き、八門の砲身から極太のレーザーが撃ち放たれる。
それは反乱軍の一部を蒸発させた。
大地が抉れ、大気は熱を伝播し、反乱軍を恐怖させる。
う、うわー。
「エ、エレットさん、これはさすがにやり過ぎなのでは……」
「何を言っているのだね!! まだまだ試したいものが沢山あるのだよ!!」
「あ、はい」
ダメだ。
エレットは戦争を完全に作った兵器を実験する場としか思っていないようだ。
「さあ、次は――」
と、その時だった。
王都の防壁の上で何かが光り、真っ直ぐ最強ゴーレム君を目掛けて飛来した。
反乱軍の中に高位の魔法使いがいたのだろう。
矢は無傷で耐えられる装甲だが、魔法となるとどれ程のダメージを受けるか分からない。
しかし、魔法の速度はかなり早く、緊急回避は間に合いそうになかった。
被弾する――
「A◯フィールド、展開」
ことはなかった。
魔法攻撃を阻むように最強ゴーレム君の前に透明な障壁が発生。
魔法を容易く防いでしまった。
「ははは!! その程度では私とるがすっす君の合作である最強ゴーレム君は倒せないよ!!」
「いや、俺は何も作ってないですけど……」
「さて、続きを――おや。いつの間にか反乱軍が減っているね。逃げたのかな?」
「九割以上消滅したんですよ、最強ゴーレム君の攻撃で」
凄まじい数だった反乱軍はもう数百人しか生き残っていない。
生き残っているその数百人も手足が失くなっていたり、理不尽な死への恐怖で身体を震わせて怯えている。
どうしてこうなった。
いや、原因は分かっている。話しちゃいけない奴に俺が色々話しちゃった結果である。
すまぬ、反乱軍。
いくらカティアナが酷い目に遭わないようにするためとはいえ、君たちを酷い目に遭わせてしまった。
後悔はしないが、反省はしておこう。
「ふむ、まだ試していない機能があるのだが」
「まだ……? 他にはどんな機能が?」
「無論、色々あるよ。他のゴーレムとの近接戦闘を想定して――ん?」
不意に地響きがした。
地震かと思ったが、その地響きは一定のリズムで響いている。
まるで巨大な何かが歩いているような……。
と、そこで俺は思い出してしまう。カティアナが反乱軍に敗北した、最大の理由。
それは反乱軍の数が多かったからではない。
「おや、あれは……竜かね?」
王都の壁の上からひょっこりと顔を見せたのは、巨大な竜だった。
道中で撃墜したようなドラゴンよりも遥かに大きな、数百メートルはあろうかという竜である。
守護竜バウルノウト。
反乱軍の幹部に起こされた、カティアナの国を守る竜である。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「オーバーキル」
ル「俺は悪くない」
「反乱軍がかわいそうすぎる」「エレット楽しそうで笑った」「ガチでオーバーキルやん」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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