第20話 やられ役の牢番、あっさり再会する




 キュイイイイイイイイイイインッ!!!!


 ゴーレムの脚部と背部に二基ずつ取り付けられた計四つのブースターが火を吹く。


 『試作型アルティメット無敵ゴーレム君58号スーパー』は新たな姿に生まれ変わり、大空を飛翔していた。


 一見するとスリムな印象を受けるだろう。


 腰部が異様にキュッと細く締まっている二足歩行型の巨大ロボットだ。


 背部に取り付けられた左右四門、計八門の砲身が折り畳まれており、遠目から見れば翼のように見えなくもない。


 大量の金貨を鋳溶かして作ったせいもあり、全身が黄金の装甲に覆われているのだ。


 その名も『最強ゴーレム君』である。


 エレットのネーミングセンスには少し問題があると思うが、それを差し引いてもやはり彼女は天才だろう。



「すっげー、まじすっげー」


「フフフ。この程度で驚かれては困るよ、るがすっす君。おや、ちょうどいいところに野生のドラゴンがいるようだ」



 どうやら俺たちは知らず知らずのうちにドラゴンの縄張りに侵入してしまったのだろう。


 怒り狂ったドラゴンが向かってきた。


 普通なら絶望し、あわてふためいて逃げることしかできないドラゴンを相手に――



「全ビット展開」



 『最強ゴーレム君』の両肩部に取り付けられた格納庫から無数の球体が飛び出す。


 その数は百機。


 尋常ならざる量の球体がドラゴンを取り囲むように高速で接近した。


 そして、その刹那。


 ドラゴンのあらゆる魔法を弾く頑強な鱗を容赦なく高温のビームが貫いた。 


 ドラゴンは絶命し、そのまま地上に落ちていく。



「ご、ごめん、ドラゴンさん。縄張りに侵入したのは俺たちなのに……」


「ははは!! 素晴らしい、素晴らしいよるがすっす君!!」


「いや、あの、俺は何もしてないんですけど」


「謙遜はやめたまえ!! 私はもう君がいないとダメだ!! そうだ、るがすっす君。もういっそ私と結婚しよう。君との間にできた子供ならきっと可愛いだろうね」



 なんかエレットがとんでもないこと言い始めた。



「そ、そんなのダメですわ!! ご主人様は魔族ですのよ!!」


「おや、メイドちゃん。君もるがすっす君の妻になりたいなら私は歓迎するよ?」


「だ、誰がご主人様の妻なんかに!! い、今のワタクシは奴隷!! ご主人様の忠実なペットですわ!!」



 え? なんでラーシアは自分からペット宣言してるんだろうか。


 というか……。



「あの、コックピットの狭さはどうにかならなかったんですかね?」



 コックピットは相変わらず狭かった。


 前よりも広いが、前から順にエレット、俺、ラーシアが密着状態である。


 ラーシアの胸が俺の頭の上に乗ってるし、エレットのお尻は相変わらず俺の大事なところを圧迫していた。



「おや、何か問題かね?」


「いやまあ、その、色々と……」


「ふふふ、そうだね。ずっと硬いものが私のお尻に当たっているくらいだ。君にとっては大きな問題なのだろうね」



 どうやらエレットは分かっていて俺にお尻をぐいぐい押し当てているらしい。


 ゲームとは全然違う積極的なエレット。


 その発情しきった顔を俺しか知らないと思うと、無性に興奮する。


 しかし、ここで理性を失ったら駄目だ。



「そ、そういう話はカティアナ嬢を助けてからにしましょうよ」


「ふふ、そうだね」



 エレットが妖艶に微笑み、俺たちはカティアナが向かったであろう王国に急行する。


 半日足らずで辿り着いたそこには――



「うわ、なんか王都が囲まれてる!?」



 ようやく辿り着いたカティアナの祖国、その王都は数千の兵士に囲まれていた。


 てっきり反乱を起こした奴らかと思ったが……。



「逆だよ、るがすっす君。王都を囲んでいるのはカティ何とかちゃん率いる正規軍のようだ」



 よく見ると、王都を包囲する数千の兵士たちは王国の旗を掲げていた。


 反対に王都の方は旗が折られ、燃やされている。


 あ、そう言えばカティアナが父親が幽閉されたとか言ってたな。


 カティアナは姫騎士。その父は国王だ。


 つまり、カティアナは幽閉されてしまった父を救うために王都を包囲しているのか。



「しかし、数的に不利だろうね」



 カティアナが率いるのはたった数千人の兵士だ。


 逆に王都に籠城している反乱軍は数万にも及ぶ大軍だとエレットは言う。



「よくそこまで正確に分かりますね?」


「君が教えてくれたレーダーで敵意や闘志を持っている連中を察知できるようになったからね」


「あ、そっすか」



 もう何でもありだよ、ゴーレム君。


 俺たちはそのまま王都を包囲する正規軍の司令部に向かった。


 当然、何事かと兵士たちがわらわら出てくる。


 しかし、エレットは特に気にした様子もなくコックピットを開いてひょっこり顔を出した。



「やあ、お邪魔するよ。カティなんとかちゃんはいるかね?」


「な、なんだ貴様らは!!」


「人に名前を訊ねる際はまず自分から名乗りたまえ。基本的なマナーだよ、君」



 如何にも軍の偉そうな人に向かって偉そうな態度を取るエレット。


 わ、わーお。本当に凄い度胸してるなあ。


 普通なら斬り捨て御免されてもおかしくないが、背後に控える最強ゴーレム君にビビっているのか、兵士たちは動けずにいる。


 と、その時だった。



「な、何故貴女がここに!?」


「おや、カティなんとかちゃん。数日ぶりだね。元気にしてたかい?」


「げ、元気ではありますが……」



 カティアナが司令部のテントから出てきた。


 どうやら王都に立て籠る反乱軍へ総攻撃を仕掛ける前だったらしく、あっさり再会できた。








 一方その頃。



「うわあああんっ、あの人たち一生恨みますぅ~!!」



 エレットによって身ぐるみ剥がされたも同然のネアは泣き叫ぶのであった。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「こういうノリと勢いで結婚しようって言ってくるキャラが癖」


ル「え? あー、うん? まあ、普通か?」



「盛り過ぎで草」「まだまだ足りん!!」「ネアが気の毒すぎる」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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