第17話 やられ役の牢番、まずい状況に陥る
『試作型アルティメット無敵ゴーレム君58号スーパー』が起動し、立ち上がった。
どういう原理なのか、コックピットは視界が180度確保されている。
エレットはレバーやフットペダルを器用に操りながらゴーレムを動かし始めた。
倉庫を出ると、兵士たちが慌てた様子でやってきてゴーレムを取り囲むが、上級魔族は見当たらない。
これなら魔王城を出るのは容易いだろう。
「ふふふ、楽しませてもらうよ」
エレットが不敵に笑う。
ゴーレムが兵士たちを蹴散らしながら、出口に向かって走り出した。
あっという間に魔王城を脱出してしまう。
エレットは一度ゴーレムを魔王城付近にある森で停止させた。
「そこそこブランクがあると思ったけれど、意外と動かせるものだね。おや? どうしたんだい、るがすっす君?」
「い、いや、その、もう、ヤバイっす」
何がヤバイって、このゴーレムは結構激しく揺れるのだ。
それでいて俺の相棒はずっとエレットの太ももに挟まれたままだった。
もう本当に、ヤバイ。
いくらズボン越しとは言え、美少女の太ももに何十分と挟まれて我慢できるはずがない。
むしろよくここまで頑張ったと自分で思う。
というかエレットだって、俺になら抱かれてもいいと言っていた。
これはもう我慢せず、エレットを襲っちゃってもいいのでは?
このままゴーレムの狭いコックピットの中でおっ始めてもいいのでは?
駄目だ、理性が働かなくなってきている。
そう思ってエレットに手を出そうとした矢先、彼女は急にコックピットの外に出た。
「え? あ、え?」
「ああ、すまないね。少し装甲に傷が付いてしまったようだ。私は様子を見てくるよ」
「あ、う、うっす」
あともう少しだった。
もう少し早く行動に移していたらエレットを襲えたのに。いや、待て待て。
本格的に知能が低下してるぞ、俺!!
しかし、このままエレットと狭いコックピットで密着していたら、いつか必ず間違いを犯してしまう。
それを防ぐためには……。
エレットがいない今この瞬間に賢者の時間へ至るしかない。
「うおおおおおおあおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!」
俺は早急に頂きへと至り、猛る相棒を鎮めることができた。
それからしばらくしてエレットが戻ってくる。
「装甲は思ったよりも損傷かなかったよ。この調子なら人類領域圏までノンストップで行けるだろうね」
「あ、はい」
「……ところでるがすっす君。私は鼻がよくてね」
「え?」
「コックピットに戻ってきた時、とても濃密な男の匂いがしたよ。一体、私が装甲を確認してる間にナニをしていたのかね?」
そう言ってまた俺に身体を密着させ、相棒を太ももで挟むエレット。
こ、こいつ、まさか!!
「さ、最初から分かってて……ッ!!」
「ふふ、どうだろうね? ただ君の悶々とした表情はそそるものがある。あと何回、装甲の確認をしに行かないといけないかな?」
「うっ」
きっと装甲の確認というのは建前なのだろう。
理性崩壊寸前の俺をコックピットに残して相棒共々落ち着かせる時間を敢えて作り、俺の反応を楽しんでいる。
知らなかった。
エレットが人の理性と本能の間で苦しむ様を見てほくそ笑む性悪だったなんて!!
くっ、悪い女なのに、惚れそうな俺がいる!!
発散させた直後にも関わらず、相棒がエネルギーを充填した、まさにその時。
コックピット内にサイレンが響いた。
「わっ、な、なんだ!?」
「……何かが高速で接近しているね」
「え? ま、まさか、魔王城から追っ手が!?」
「そうだろうね。ああ、でも心配は要らないようだ。君の奴隷みたいだからね」
「え?」
コックピットに映し出された映像を見ると、ゴーレムに接近しているのはメイド服をまとったラーシアだった。
ゴーレムは音声を拾う機能もあるためか、ラーシアの独り言も聞こえてきた。
『ここで脱走した捕虜を捕らえたら、きっとルシフェール様も褒めてくださりますわ!!』
俺はラーシアに何も言っていない。
だから俺がゴーレムに乗っていることにも気付いていないはずだ。
いくらエレットのゴーレムでも、ラーシアとガチの殺し合いになったらどう転ぶか分かったもんじゃない。
かなりのスピードで迫っているし、逃げ切ることも不可能だろう。
「ど、どうするんだ、エレットさん!?」
「ふむ。少々気乗りしないが、策はあるよ」
「お、おお!?」
まさかエレットに策あり。
どうやって魔王軍の幹部を迎え撃つのか、俺は期待した。
しばらくしてラーシアが目前に迫ってきた。
ラーシアも獲物が突っ立ったまま動かないのをいいことに大鎌を振り上げている。
その次の瞬間、エレットは――
「ポチッとな」
なぜかコックピットを開いた。
当然、ゴーレムの目の前まで迫っていたラーシアとバッチリ目が合う。
「え、ご主人様!? 何故そこにいますの!?」
「いや、ちょ、一旦止まっ――」
「む、無理ですわー!!」
エレットが器用に大鎌だけを弾き、ラーシア本人はその勢いのままコックピットに入ってきてしまった。
凄まじい衝撃がゴーレムを襲う。
しかし、その割に俺はあまりダメージを食らわなかった。
柔らかいクッションのようなものが俺の頭を包み込んだのだ。
むにゅ。もにゅむにゅ。
「ひゃんっ♡ ど、どこを触っていますの、ご主人様!!」
「え? あっ」
どうやら俺はラーシアのおっぱいを揉みしだいていたようだ。
こ、これ、おっぱいの感触!?
まじか。初めて鷲掴みにしちまった。めちゃくちゃ柔らかい。
「……かなり狭いがまあ、操縦に問題はないね。このまま行こうか」
「え!? ちょ、ラーシアも連れて行くんすか!?」
「彼女は魔王軍の幹部。助っ人として頼もしいじゃないか」
「でもラーシアは魔王軍幹部として顔が割れてますし……」
「あんっ♡ ご、ご主人様、変なところに息が当たっておりますわ!!」
「わっ、す、すまん!!」
非常にまずい状況に陥ってしまった。
エレット一人でも理性が崩壊しかけていたのに、ラーシアまで追加だ。
それに最近のラーシアは俺に従順というか、素直に言うことを聞いてくれるし、何より顔と身体がいい。
美少女二人と狭い空間で密着しているのだ。
地獄のような天国で、天国のような地獄の始まりである。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「ルガスは偉いよ。作者ならヤってる」
ル「えぇ」
「エレット最高かよ……」「ラーシアも一緒に行くのかw」「作者正直でよろしい」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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