第16話 やられ役の牢番、密着する
ようやくマリセラから解放された俺は、すぐ地下牢へと向かった。
「エレット!! 大至急で作ってもらいたいものがあって――」
「ああ、もうできているよ」
「え?」
エレットは牢屋越しに革袋を渡してきた。
その中にはハイになるポーションを含め、様々な道具が入っている。
「ど、どうして……」
「君が彼女を助けに行こうと言い出すのは分かっていたからね。私の想定よりも幾日か早かったが」
「うわ、すっげー」
「ふふふ、そうだよ。私は天才だからね。凄いのだよ」
得意気に胸を張るエレット。
「俺がその気にならなかったら完全に無駄になったんじゃないですか?」
「だろうね。しかし、君は遅かれ早かれ、その選択をしていたと思うよ。だから準備しておいたのさ。さあ、共に友人を助けに行こうじゃないか」
「エレットさん……」
そう言って牢屋の鍵を自分で開けて出てくるエレット。
その姿を見て、俺は一言。
「いつの間に合鍵なんて作ったんです? 取り敢えず没収しときますね」
「わー」
「というか、一緒に行くんですか!?」
「当たり前じゃないか。というか君、人間の領土に土地勘などないだろう?」
「うっ」
たしかに『プリヒロ』では細かい国の位置などは登場しなかった。
あくまでも設定だけは存在している感じだな。
だから俺がいきなり人間の領域に立ち入っても迷子になるのは目に見えている。
「私ならば君を案内できる。というわけで、私を捕まえた際に押収されてしまったものを返してもらいたくてね」
「え、えぇ? う、うーん、まあ、バレなきゃいいかな?」
というわけで俺はエレットを伴い、魔王城の倉庫へと向かった。
魔王城の倉庫には色々なものがある。
敵を殺して奪った武器や防具が雑に放り込まれているのだ。
ルシフェールのような珍しい武器や防具を集める趣味があるなら別だが、大半の魔族にとって奪ったものはその程度の価値しかない。
エレットが襲撃してきた際に押収した品もきっとそこにあるはず。
……後で怒られるかな。怒られるだろうなあ。
「おお、あったよ。私の『試作型アルティメット無敵ゴーレム君58号スーパー』が」
「……その名前もうちょっとどうにかならなかったんですかね?」
「おや、不満かね? 私としては気に入っているのだが」
倉庫の中心に異様な存在感を放つ巨大物体が鎮座していた。
高さ十メートルはあろうかという人型兵器。
ゲームにも登場していたが、こうして実物を見ると迫力が段違いだ。
エレットはゴーレムと呼称しているものの、その姿は完全にSFに登場するような巨大人型ロボットである。
「毎晩コツコツ修理した甲斐があったね。今すぐにでも動かせそうだ」
「……もう何もツッコミませんよ?」
発言から察するにエレットは夜中にこっそり牢屋を抜け出して、このゴーレムを修理していたらしい。
よく今までバレなかったな……。
エレットの脱獄スキルが高いのか、それとも俺や先輩に牢番の適性がないのか。
「何をボーッとしているんだい? 君も乗りたまえ」
「え? い、いいんすか?」
「いいも何も、これに乗って移動した方が遥かに早いだろう?」
「あ、じゃ、じゃあお邪魔します」
俺はエレットに促されて『試作型アルティメット無敵ゴーレム君58号スーパー』に乗り込む。
口では色々言ったが、やっぱりでっかい人型兵器とか全国の男の子が憧れるようなロマンの塊だしな。
俺は少しワクワクしていた。
ただ、このゴーレムはエレットが自分用にチューニングしているもの。
二人で乗るにはかなり狭いように思えた。
「ちょ、ちょっと狭いっすね」
「私の身体のサイズに合わせているからね。まあ、君の膝の上に座ればギリギリ乗れるはずだよ」
「え? あ、ちょ――」
コックピットに座る俺の膝の上に座るエレット。
小ぶりではあるが、たしかな弾力と柔らかさのあるお尻が俺の敏感で大事な部分にぐいぐいと押し当てられる。
暗くて狭い空間でジト目の美少女と、ゼロ距離で密着しているのだ。
思わずドキッとしてしまう。
「む、困ったね。二人ではシートベルトが付けられないな。るがすっす君。すまないが、私の身体を腕で固定してくれないかい?」
「え?」
俺は一瞬何を言っているのか分からなかった。
「う、腕で、ですか?」
「ああ、後ろから抱き締めるような形でね。早くしたまえ」
「う、うっす」
俺はエレットの細い腰に腕を回す。
華奢で小柄で、思いっきり抱きしめたら折れてしまいそうな身体だった。
……ごくり。
冷静に考えたら凄い状況に陥っているような気がしてきた。
余計なことを考えたせいだろうか、相棒がどんどん硬くなってしまう。
エレット、頼むから気付かれないでくれ!!
という俺の願いも空しく、エレットには秒で気付かれてしまった。
「おや? ……るがすっす君」
「す、すみません。まじすみません」
俺は何度も謝罪した。
「いや、気にすることはないよ。君が私のような貧相な身体にも興奮することには驚いたがね」
「ひ、貧相なんて、そんなことは……小さくて、可愛いと思います」
「……ふふ、そうか。私は可愛いか。嬉しいことを言ってくれるね」
俺の言葉に頬を微かに弛めるエレット。
これはヤバイ。絶対にヤバイ。このままじゃ心臓のドキドキで俺は死ぬ。
「君になら、私は抱かれてもいいよ」
「え? は!?」
「前々から魔族と人間で交配は可能なのか気になっていたしね」
「ちょ、そ、そういうのは、もっと自分の身体を大事にしてくださいよ!!」
「む。それは心外だな。私は君だからいいと言ったのだよ。誰にでも股を開くような女とは思わないでくれたまえ」
え、ええ!? それどういう意味だ!?
「それにしても、君のものは大きいな。前に見たゴブリンのものより数倍はあるじゃないか」
「あ、ちょ、触るのは!?」
「……ふむ。こうすると私が男になったみたいだね」
エレットがお尻を動かして、俺の相棒を太ももで挟み、触ってくる。
そして、頂きへと至ろうとした直前。
「おっと。こうしてる場合じゃなかったね、早くカティ何とかちゃんを助けに行こうか」
「え? あ、う、うっす」
「どうしたのかね? まるで物欲しそうな顔をして」
エレットがからかうように言う。
間違いなく、エレットは分かった上で言っているのだろう。
くっ、めちゃくちゃかわいい。
それにしてもマリセラといいエレットといい、急にエロい気分にさせてくるな……。
これ、もしかしてモテ期なのでは!?
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「こういうシチュが一番効く」
ル「心臓に悪いよ……」
「ルガス、そこ代われ」「エレットがエロすぎる」「作者に同意する」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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